スペッツァティーノとミザリーとサイコパス
居酒屋さんです。私はお酒が好きなので週に2回ぐらい、奥さんと居酒屋さんに行きます。
たまに奥さんに用事がある時は、1人で居酒屋へ。
3年ほど前、日本酒にこだわりのある、うどんとおでんの居酒屋さんに行きました。
『本日の日本酒』と一本一本、産地、銘柄、飲み方が黒板に書かれているような本格的なお店です。
最初はビールを頂き、そろそろ日本酒にチェンジしようと店主にすいません、と声をかけ、
御主人が『日本酒何に致しましょうか』と私に聞いてきたので
私は『なんでもいいです〜』
御主人、少し怒りを押さえながら、この日本酒はどこの産地、酒蔵、つくり手の杜氏さんはと、鬼の首を取ったように私に説明します。
日本酒にただならぬ思いがあるんですね、うっかり適当に答えたら殺されるかと思いました。
1年後、忘れた頃に再訪しました。
ビールを飲み干し、ずらりと並んでいる純米酒、吟醸、大吟醸、のメニューを見て御主人にすいません〜
御主人『日本酒はどの銘柄にしましょうか』
私は『何でもいいです〜』
『な、なんでも?』ピシピシ怒りが感じられます、親の敵のように、端から銘柄を説明されます。
はっ デジャブだと感じ、襟を正さねばと思いました。
それから月日は立ち。
先週、まだまださむいなーと思い、あの、日本酒にこだわりのある、おでんとうどんの居酒屋さんに入ります。
忘れていました、しっかりお怒りなのが伝わってきます、シャワーの様に箸から説明を浴びます。
これはどちらがわるいのでしょうか。ナニハラになるのでしょう。
さっスペッツァティーノです
牛ほほ肉 1キログラム
ローリエ 適量
玉ねぎ 1〜2個
白ワイン 1本
① 牛ほほ肉を切ります
焼きめをつけ
② 玉ねぎを切ります
軽く炒めて
③ すべての材料をいれ、アルコールをとばし煮込みます
完成です。
イタリアでのお話です。私は当時フィレンツェに住んでいました。
働いていた職場はエンポリ、という場所でしたので毎日バイパスをバイク通勤しておりました。
仕事が終わりバイクで帰っている途中、ちょっと無茶をしてしまい、警察の方に補導されました。
長いお説教をくらった後、罰金あるからなと言い渡され、そのまま帰宅。しょぼーん
次の日の朝、バイクで職場に向かい仕事をしていましたら、私のシェフがずーっと私を観察しています。
多分野生の勘でしょうね、こいつ〜昨日何かあったなと直感で気づいています。
広いキッチンなのに私を舐めるように観察しています。
(このシェフは私が人生で、出会った中で一番クレイジーで天才肌、常にぶっ飛んでいる、サイコパスな方です)
私は逃げる様に動き回っていましたが、はっ
と気付いたら私の真正面にいます。
『ウソをつくなよ〜、ウソついてもわかるからな・・・全部吐けよ・・』
同僚は助けてくれません、口々に『マンマミーア』とつぶやいてるのが聞こえます。
英語のオーマイガーです。
私は彼の怖さを身にしみて知っています。
満面の笑みで丸太を私に投げつけたり、クルマで私を轢いたり、彼から逃げようと2階から飛び降りた瞬間、私を逃げないようにからめ捕えて・・・・外傷の記憶は消えません。
私を舐め回すように見ながら、彼は『さっ昨日何があったか、は・な・せ』
私はうなだれながら昨日の出来事を話しました。
彼は全部私の話を聞いた後『今日からオマエは彼女に1週間会うな、寮に住め』
その当時付き合っていた彼女、そう、今の私の奥さんに、1週間会うなと命令がきました。
私は『神に誓って約束を守るよ』シェフはうん・うん・うん、約束だからな、とうなずきながら、私をヘビの様に観察しています。
その日は生きた心地がしないまま、仕事にはげみます。
真夜中になり仕事を終えた我々は、『グラッツェ、シェフ』と解散。
ホーホーホーホー
電灯の無い真っ暗な暗闇の草の茂みに私は隠れていました。
ホーホーホーホー
私の職場は田舎だったので、フクロウの様な鳥が鳴いています。
車の音が聞こえ、シェフが帰っていきます。私は草の茂みに隠れ、フクロウたちとともに見届けました。
寮に住んでいる仲間に手を回して、前もってビールを渡しています。完璧。
皆さんシェフの性格をよく知っているので、『神のご加護を』と祈ってくれます。
彼が去って行くのを遠めに見て確認したあと、私はマジェスティに乗り、フィレンツェで待つ彼女のもとへ向かいます。
嘘の様な本当の話です。
バイパスに乗り120キロの速度で帰っていると、私のバイクの後にピタッと車がついてくる気配がしました。
私は直感ですぐに彼だ、悪魔だと分かりました。すぐさま悪魔は私のバイクの横に車をスライドさせ、ニヤニヤしながらそこで降りろと指を指します。
120〜130キロでのSPEEDの中でのやりとりです。
窮鼠猫を噛む。
人間という生物は追い込まれると自分とは違う行動をします。
ヴァッファンクーロ、イタリア語の汚い言葉を罵って私は逃げました。
120キロのスピードでカーチェイスです。
どんなに逃げてもピタリと私のバイクにくっついて来ます。不敵な笑みを浮かべた悪魔が。
人生何回か死にかけましたが、その中でもヤバいやつです。
駄目だ 悪魔だ 奴は
私は観念して次の降インターで降ります。
バイクを止め、悪魔は車を降り、ニコニコしながら私の頭をヘルメットごと殴りつけます。
それ以上は何もしてこず『チ ヴェデイアーモ ドマーニ』と言い去っていきます。
日本語で『明日会おう』です。
次の日は何事も無いようにニヤニヤしながら私を見ています。多分サイコパスな方なのでしょうね。
その日も、彼は面白いおもちゃを見つけたネコの様に私をじーっと見ていました。
ボナペティート♪
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