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【ソニックブランディング】サウンドスケープ: 標識音


サウンドスケープ

カナダの現代音楽作曲家マリー・シェーファーは、20年前の僕に大きな影響を与えてくれた。
サウンドスケープの提唱者でもある。
「音風景」と言う概念で、日常生活や環境には常に音があり、音を風景として扱うべきであると提唱された。

前回のnoteでも言及したが、音や音楽や音量は、人間の感情を揺さぶる。
都市デザインや、インテリアデザインなど、どれだけ見た目をかっこよくしても、サウンドスケープが悪いと全てを台無しにする。

標識音

サウンドスケープの概念の中で、標識音というのがある。

標識音とは、その共同体の人々によって特に尊重され、注意されるような特質を持った共同体の音響。
その共同体の音響的な生活を特別なものとし、保護されるべき音響。

わかりやすく言うと、「ねぶた祭りの音を聞くと、青森県と連想出来る音」である。

環境省はこれを、残しておきたい日本の音風景100選、として記載している。
https://www.env.go.jp/content/900400154.pdf

特に、オホーツク海の流氷の鳴き声は印象的だ。

福島県からむし織のはた音

ロンドンのビッグベン

ユニークな例で言うと、アイスランドの間欠泉も標識音である。
僕も実際聴きに行ったが、大地のエネルギーを感じた。


僕の子供の頃は、5時のチャイムがあった。これも、今考えれば標識音である。


標識音をデザインする

例えば、現代音楽作曲家ジョン・ケージが作曲した、世界で一番長い曲(演奏時間639年)オルガン2/ASLSP、も一種の標識音である。
3年前に、7年ぶりに和音が変わるということで注目された。

連鎖反応

コロナパンデミック初期、ロンドンは毎週木曜日、NHS(国民保健サービス)で働いている医療従事者方達への感謝を伝えるため、外に向かって拍手をする行為が国中で行われた。

僕はそれを体験して、とても感動した。
一人が拍手することによって、次々と拍手をしてしまう行為には名前がある。

「Chain Reaction」連鎖反応

連鎖反応を利用した、新しい標識音である。
このアプローチは、二重三重の意味を持っており、一時的であるが、非常に素晴らしい標識音であった。

デザインする標識音

標識音は、自然環境音や、文化や地場産業が形成する音であり、デザインされたものではない。また、オルガン2/ASLSPも、結果として標識音になったがデザインはされていない。

ただ、注意すべきことは、無理やり標識音を作った結果、騒音になってしまうことだ。

僕の考える標識音をデザインすることは、「現存する環境音を標識音に変える」である。

環境音に何か枠組みや意味を与えれば、標識音になり、その街や村、もしくは国のシンボルになり得るのだ。

Soundmark for airport

空港について考えてみた。

空港内のサウンドは、屋根が高いので残響音が特別である。このサウンドは、標識音になり得ると考えた。それは、ある種のソニックブランディングとして考えることもできる。

空港の標識音のコンセプトを開放感にして考えてみた。
開放感は、空の旅の演出を強化してくれると考えた。

この残響音のあるサウンドを標識音にするためには、入り口の小さなスペースを静寂にする、というアイディアを思いついた。

空港内の音+静寂=開放感

エントランスに吸音材を使い、一時的に無音の空間を作る。
こうすることで、空港に入った瞬間に環境音が予想以上に大きく聞こえ、開放感の効果が得られる。

これは、昔作った動画である。見てみてくれ。

何も難しいことはしていない。莫大な予算がかかる仕掛けでもない。
吸音材を入れるだけである。
だが、効果は抜群であると予想できる。




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