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「ほうれん草を育てながら哲学してみた」第2話〜両方ともやったらええやん〜

先日から始まったプランター栽培日記。

農業の知識はほとんど皆無なので、農家の人が読んだらツッコミどころ満載すぎて、ヤバい内容になること請け合いである。でも、だからこそ、経験者にとっては当たり前のことに対して、「へー!」と驚き、発見する機会も多いはずである。そこを読者のみなさんと共有できればこれ幸いである。

さて、プランター栽培をするにあたって一番最初に購入したのは「タネ」である。じゃあ何のタネを買うか。つまり何を育てたいか。結果的に僕は「ほうれん草」を選んだのだが、実は最初は「さつまいも」にしようと思っていた。

理由のひとつはもちろん、おいしいから。特に焼きいも。死ぬ前に、最高のサーロインステーキと、最高の焼きいも、どちらかを食べられるとしたら、僕は最高の焼きいもを選んでしまうかもしれない。いや、ここはもはや、味というより親しみの問題かもしれないが(笑)。

理由はそれだけではない。僕の中でさつまいもと言えば、戦時中の主食である。戦時中の庶民の生活を聞いてみると、しょっちゅうさつまいもが登場してくる。「蔓まで食べたんだよ」というような話もよく聞く。みんなが「大変だったんですね……」と涙ながらに聞いている中、僕はひとり、「毎日さつまいもばっかり食べれられて、めっちゃええやん……!!」とうらやましがっていたものである。愚かな小学生時代の僕……と言いたいところだが、今もちょっとうらやましい。

それはさておき、最初はさつまいもを育てたいと思っていたのだが、どうも季節的に「今はさつまいもじゃない」らしい。野菜には植えるべき季節が決まっているそうだ。もちろん同じ野菜でも、種類によって植えてよい季節はさまざまらしい。あまのじゃくな僕も、あえてそこに逆らう気はない。今の季節に植えるべき野菜を育てようではないか。

時は9月下旬。本やネットで調査した結果、どうやら今育てるならほうれん草がよくて、しかも比較的カンタンみたいだ。僕は昔ほうれん草が苦手だったのだが、今はむしろ大好きである。好きになったターニングポイントはよく覚えていないのだが、もしかするとポパイの影響が大きいかもしれない。そう、ほうれん草を食べるとなぜかめちゃくちゃ強くなるあの人である。なぜほうれん草を食べると急激に体が大きくなり筋力もアップするのか全くわからないが、全国の子どもたちに「ほうれん草すげー」と思わせた恐るべきアニメであった。その後たしかファミコンのゲームにもなっていた。

というわけで、さっそく「野口のタネ」のネット通販で「ノーベル法蓮草」というのを購入した。これは春と秋の年2回、種を蒔くことができるそうで、「めっちゃお得やん」という小市民的感性に従ってこれを選んだ。

あと揃えるべきは、プランターと土などの栽培用具。特にプランター選びには苦労した。

本やネットで調べると、ある程度深さのあるプランターのほうが野菜はよく育つという。だから大きいに越したことはないのだろうが、なにぶん屋内では大きさが限られる。できれば小さめのプランターで育てられた方がベストだ。

ホームセンターの従業員さんにも話を聞いてみたが、「浅いものでも、ほうれん草なら大丈夫ですよ」と言う人もいれば、「野菜は土が深い方が育ちやすいんですよ」という人もいる。「えー、どっちにすればいいねん……」とめちゃくちゃ迷ったのだが、そこでふと気付いた。

「両方やったらええやん」

大きめのプランターにするか、小さめのプランターにするかの二者択一で悩んでいたのだが、よく考えてみたら、どちらか一つではなく「両方」という選択肢もあるのである。

もちろんスペースは限られているが、2つくらいなら全然問題ない。しかも深めと浅めの2つのプランターで同時に育てれば、土の深さによる影響を検証することもできる。

この「両方ともやったらええやん」というのは、人生においてもけっこう使える考え方だと思う。

僕らはどうも、イチローのように「ひとつの道を選択し、それを極める」という生き方に憧れる傾向がある。僕もそうだ。それはもしかすると学校の影響もあるかもしれない。算数のテストが象徴的だが、そこでの答えは基本的にひとつである。他は間違い。この思考パターンが、実際の人生においても採用されてしまっているのである。

だから、複数の選択肢があった場合、「どれかひとつを選ばなければならない」と勝手に思い込んでしまう。でも、別に両方やったっていいのだ。そんなカンタンなことに、僕らは意外なほど気付くことができなかったりする。

どちらかひとつを選べないんだったら、とりあえず両方やってみる。いずれはどちらかを選ばなければならないにしても、もし両方を試すことができるのなら、無理にいま選ぶ必要はない。というわけで僕は結局、小さめのプランター、ふつうのプランター、かなり深めのプランターの3種類を購入することになった。

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