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1年後の退職を今、思いきって上司に伝えてみた話。


会社を辞めるのは、2~3ヶ月前に伝えるのが普通。転職が決まってから伝えるのが普通。私もその予定だった。


でも、自分にとっては違うなって思った。「次の道が決まってから」という考えは、長々と先延ばししてしまう気がした。自分はいつもそれに甘えてきた。


人に宣言したり、環境が変わったりしないと、私は動かない人だから。先に期間を決めて、先に上司に宣言することにした。


会社を辞めようかと悩んでいる人のために、勇気が出なくて言い出せない人のために、過去に言い出せなかった自分のために、ここに綴っていきます。


編集者を3年で辞めよう、と思った


新卒で出版社に入社し、月刊誌の編集部に配属となり、もうすぐ2年。

編集者は好奇心旺盛な自分に向いている気がしていたし、周りからも合っているね!と言われた。


そんな念願の仕事ではあったものの、働く上で、自分には決定的に向いていないところがあった。


編集者は1つの物事を深く突き詰めていく仕事。専門誌だったからこそ、より1つの知識に浸かり、土日も費やすこともしばしば。


どちらかといえば、私は奥深く突き詰めるよりも、つまみ食いが好きなタイプ。思ったことはすぐ行動し、別の興味があればまた場所を変えてうつっていく。誰かのアイディアに乗っかって面白いものをちょこっと作る。そんな生き方が、きっと私に合っている。


編集スキルを極めるにも最低5年はかかると言われている。1つのことを突き詰める編集人たちの中で、どこか自分は周りとは違う存在な気がした。多くの人が憧れる職業であっても、人によって合う合わないはあるみたい。


とはいえ、この仕事を辞めたとして、私は何がしたいんだろうか。気まぐれな自分のことは、自分でもよくわからなかったが、このままではいたくないと思った。


「やりたいこと」より「ありたい姿」でいるために


モヤモヤを抱えていたのは入社1年目から。次第に外の世界で行動にうつすようになっていった。

行動した中で一番に影響を与えられたなと思うのが、SHElikes、朝渋といったコミュニティ。たくさんの人に出会い、たくさんのエネルギーをもらった。

猫のように気ままにつまみ食いをして、旅人のように自分の心に従って生きていく。そんな願望を実際に叶えている人もいて、私の非現実に思えた夢も現実にできることに気づいた。自分が好き、得意と思える仕事で「自分らしさ」を発揮したい。早くあちら側に行きたい。


編集の仕事は「やりたいこと」の1つだった。自分の企画が、本という形に残って世の中に出る。本の奥付に自分の名前が載った時、本の帯案が採用されてSNSでも好評になった時、すごく嬉しかった。

でも、「ありたい姿」ではなかった。ありたい姿からかけ離れていると、やりたいことだったとしても、満足いかないのかも。

上司にもそう伝えたけど、おそらくあまり伝わっていない。うまく言葉がのらなくて悔しいけど、ありたい姿を叶えたいと強く思っている。


自分で選択する人生を歩みたかった


恥ずかしながら、私は自分で心から納得がいく選択をしたことがない。

就職活動も、親や周りの友達に合わせて、企業に就職することしか考えていなかったので、今の選択も周りのレールに従った状態。フリーランス、留学、インターンと他の選択肢があるのは知っていたけど、周りの目を気にして行動できなかった。

世間の常識から外れたとしても、自分で道を選んで生きていきたい。心からやりたいことに向き合える人生にしたい。

何でもできるとしたら、何をしたいだろう。旅の経験を書く仕事もしたいし、ブランディングも気になるし、演劇もしたいし、イベントやコミュニティをつくるのにも興味がある。


(以前書いたエッセイ記事)


ぶっちゃけ「今やりたいこと」も本気でやりたいか、まで言われるとわからない。熱しやすく冷めやすい私は、やりたいと思ったその瞬間に楽しみたい。冷めたらまた別の場所で次に思ったことをする。やっぱり、猫のように気ままに行動し、自分で行き先を決めていく旅人のように、生きていきたい。


1年前に宣言を決意した理由


きっかけは2月末。新社長、新編集長となり、社内の体制が変わる発表があった日。また、新人の私がいち早くひとり立ちをして、誰もが1人で本を出せるようになる体制にしたいとの話も出ていた。3年目の終わりで辞めようと思っていた私はドキッとした。


この1年で独り立ちの期待を背負われながら、過ごす毎日。やっとひとり立ちができた頃に、「次の仕事が決まったので辞めます」と伝える。想像するだけでも不安になる。


もはやあの場で、「ごめんなさい!実は辞めます!」と言いたいぐらいだったけど、さすがにそんな勇気はない。


振り返るとこの1年も、部署の中で度重なる急な異動や退職により、人員不足で1人欠けたら廃刊になる状態にまで陥ったこともある。「いつ何が起きるかわからない」と身を持って実感した1年だった。


今年中に辞める、と決めても、会社に引きづられて抜け出せなくなる自分もいるかもしれない。そう思うと、「いつか」で止まる自分になってしまう。行動にうつせるか不安になりながら1年過ごすよりは、先に伝えてしまった方が自分としても上司としても安心して覚悟が決まるのではないか。


タイミング良く、新編集長がみんなと個人面談をしてみたいとのお声がかかった。多分、言うとしたら、ここしかない。


そう決めてから面談まで1週間ぐらい。ずっと気持ちは変わらなかったので言うことにした。


そして、当日。ついに宣言。


お菓子を用意して「今日は気軽にお話しようね〜」と、待っていた笑顔の編集長。よりによって、非常に言いづらい雰囲気の中スタート。開始10分、場が温まってきたところで、切り出すことにした。


「実は今日、私からお伝えしたいことがあって、少しお時間いただいても良いでしょうか?」


「うん、もちろん!」


「実は…21年度中に退職を検討していまして……」


喉から心臓が飛び出そうな感覚で、気づいたらそう発していた。いつも笑顔な上司が急に真顔になったのは、多分この先も忘れない。

会社での私は、愚痴1つ言わずに黙々と仕事をする人と思われていたそう。そんな私からの突然自分を持った発言。驚くのも無理はない。

ああ、ついに言ってしまった、と思ったけど、本音を言えて心が軽くなった。そのあとも、伝えられることは伝えなきゃと思って、頭が真っ白になりながら言葉を重ね連ねた。

早速、次の日には社長と面談になり、何だかおおごとを起こしてしまったような気がしたけど、仕方がない。社長は、爆弾発言をした私の気持ちも察してくれていたからか、話を聞く時もかなり寄り添ってくれるような感覚で涙も出た。


会社を辞めるなんて、周りの目を気にする自分が言える自信がなかったけど、昔から後先考えずに行動する勢いはあったことに気づいた。自分らしさ全開だった小学生の時、「私はこのテストを受けたくありません!」とクラス全員の前で意地になって先生と真っ向対立したのを覚えている。とんでもなくワガママだけど、振り返ると、自分の言葉を正直に伝えられた勇気だけは褒めたい。自分はいざとなると想いを伝えられる人なのかも。しばらく忘れていたあの感情を思い出した。


周りから外れるのを常に恐れていたけど、自分の夢は夢のままで終わってしまうのかもしれないと思ったけど、これは自分の夢に近づいた大きな一歩。何だか心は軽かった。


宣言したことで、本業も将来への準備も本気に


期限を宣言したことで、残す時間で何としてでも仕事で成果を出すぞ!という気持ちになった。面談の日、辞めるまでには自分の力で本を1冊出したいと宣言すると、上司は「それは何としてでもやりきろう!」と言ってくれた。


今まで土日を費やしてまではやろうと思わなかった本業にも、期間が定められているからこそ、全力で取り組みたい。「そろそろ企画書提出しないと、1年後には間に合わないよ!」と上司に急かされながら背中を押されている。


宣言しなかったら、3年目も本を出せずに終わっていたかもしれない。宣言してから1年間、この先気まずくて今後上司と目を合わせられない、と思ったけど、総じて考えると宣言が今で良かったのかも。


そして実を言うと、編集長や社長との面談で、辞めるという選択肢がブレたのも事実。


「次にどんなことがしたいの?」と聞かれた時に、具体的な仕事を提示できなかったので、上司からも「夢がこの会社で叶えられるなら、異動だってできるよ」と提案された。確かに、今いる部署が専門分野に特化した月刊誌ということもあり、別の部署なら幅広くつまみ食いも可能かもしれない。ジャンルも幅広く企画することも可能かもしれない。


あの時点では、会社でも叶えられる夢なのかが言えず、自分の夢はまだまだ漠然としていることに気づき、恥ずかしくなった。けれど何としてでも、この1年間ではっきりさせたいと思った。これも宣言したおかげ。


1年後は辞めるかもしれないし、社内異動を希望するかもしれない。「まだ時間はあるからじっくり考えて、答えが出たらいつでも言ってほしい」とのこと。どちらにしても夢がどうやったら叶えられるか、社内でできることかどうか、はっきりさせたい。


この1年、本業も、将来への準備も全力を出したい。1年後にはもっと具体的な道が見えている状態で、次の道が今の会社でできるかどうかで決めようと思う。


編集者としてどんな本を出したいだろう。
猫のように、旅人のように、生きるためにはまず何をしようか。


多分これからも問い続けながら走り抜ける。本業も、理想の人生への準備も、本気で向き合えるきっかけとなった。


まだ行き先がはっきりしていなくても、強い想いが自分の内にあるのなら、とりあえず誰かに言ってみたり、ちょっぴり勇気のある行動を起こすことで、次に繋がるかもしれない。


理想の将来に向かって、ここ数年で一番の勇気を振り絞った話でした。

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