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学内委員会をどう運営するか: 大学のお仕事②

 教授になって7年ほど経ち、数々の大学運営に関する委員会に所属し、いくつかの長を任されてきた。失敗と成功体験からいくつかのことを学んだので書き残したい。(小野堅太郎)

 兎にも角にも研究中心で仕事を行ってきたので、「大学運営の仕事」といっても全くわからなかった。しかも、誰も教えてくれない。後でそれぞれの組織毎に「規約」なるものがあることがわかり、現状に沿っていないからと規約改正になり、本来の仕事より規約改正がメインの仕事になったものもあった。一委員である場合は、そんな感じでもなんとかやっていけるが、委員長になるとそうはいかない。

 委員長は委員である教員をまとめる他に、事務の方たちに指示を出さないといけない。本学の場合は、一委員会に一名の専属事務職員(兼務)がついてくれる。実際の委員会運営のほとんどは、委員長と事務職員とのマンツーマンである。委員の出番は「案件の議論」だけ。委員は、事前に資料に目を通し、会議て意見し、議決に参加してもらうだけである。大きな会議体であれば、一部の委員だけで構成されるワーキンググループが結成されるが、そこまで大きな会議体の長になった経験はない。

 さて、九歯大は福岡県の公立大学であるので、事務職員の多くは福岡県の職員である。2年毎に配置転換が行われるのだが、配置転換すぐの職員と委員長になってすぐの教員が組んだ場合は最悪である。何もわからない。通常は互いの交代タイミングがズレるので、職員から教員に教えたり、その逆を行うことで継続される。しかし、タイミングが一致してしまうと二人ともキョトンとして「何すればいいんですかね?」とお茶して終わってしまう。第一回の会議を開催して、古参の委員から指摘されて、ようやく仕事が動き出すという感じである。往々にして福岡県職員の方々は優秀なので、前任からの引継ぎにより大きな問題になることはない。

 そんな中で試行錯誤して学んだことは、シンプルな3つのことである。

 一つ目は、「年間スケジュールを出して、事務処理の効率化する」ことであった。「いつ何をする」を全て書き出し、日時と手段を全部決める。これを事務職員と初めにやってしまう。すると「これとこれ、一回の作業(会議)にまとめれますよね?」とか「今までやってないけど、この日にこれしとかないとダメでしょ」とかが見えてくる。歴代の委員長の思いつきイベントが積もり積もって変な事になっている場合があり、ほぐして、要らないものを捨て、まとめてコンパクトにしていく。

 業務フローの効率化により作業が楽になり、各業務が明確化され目的意識が持ちやすくなる。何よりも、出来上がったスケジュールは引き継ぎの資料になるのも大きな利点。ある委員会では、会議数を半分以下、事務作業を5分の1まで減らせた。結果、忙しい委員会のイメージが一気に楽な委員会となった。

 2つ目は、「委員それぞれに問題意識を共有化する」ことである。会議は議論する場であるので、議論のために「委員が課題を知ってる」必要がある。言葉でいっても限界があるので、出来るだけ種々の業務に参加してもらう。これを各委員にローテーションで回していく。体験に基づく問題点が出てくるので、会議で意見をもらい、その都度改善していく。そうするといろんな人の良い意見が重層化して良いシステムができあがってくる。

 委員長としての意向とは異なる変化を遂げることもあるが、所詮、委員長の一意見。組織で運営するので委員それぞれの意向を取り入れて、結果を出すのに「現状の最適解」を取り入れる必要がある。小野が委員であった頃の経験だが、自分の意見が取り入れられて運営が行われると、うれしくてやる気が自然と湧いてきた。

 3つ目は、「小さいけど明確な達成目標を立てる」である。委員会には大きな目的があり、その達成のために活動している。しかし、その目標は往々にして「あいまい」である。そこで、小さいけど明確な達成目標を設定して委員みんなで取り組む必要がある。終わった後にはフィードバックして、評価する。目標が小さいと評価は比較的簡単です。

 以上が、ここ数年間の委員会経験で学んだ「大事な3つ」です。他にも、委員長は長くやるべきでない、委員長はできるだけ仕事をしない方がいい、アンケートと会議は短くする、会議前に資料を渡す、などいろいろやってますが、まだ大事かどうかの評価に迷っています。

 それでは今回はこの辺で。

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