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外国人から聞いた忘れられない言葉(番外編)

ハワイの空港にて
10年前ホノルル空港から帰国する時のこと
ハワイはとにかく人が多い。
空港というところはとにかく税関、荷物のチェックなどで並ばなければいけないことが多いように思うがホノルル空港は世界屈指のリゾートというだけあって尋常じゃない人だった。

冷房は効いていたように思うが、人混みのせいでどことなくムッとした湿気のようなものに包まれていて、遊び疲れた人たちも多かったせいだろうか何となく空気が重いように感じた。

私もそのどんよりした空気の中でセキュリティーチェックを受けるため当時付き合っていた彼氏と一緒に金属探知機のゲートをくぐる順番を待っていた。係の人に英語で話しかけられるであろう不安を感じながら。

「NEXT!」
彼が先に金属探知機をくぐる
OKだった
「 NEXT!」
自分の番がきた。
おずおずと金属探知機のゲートを潜ろうとすると、何と引っかかってしまった。
横にいた係の女性が、
「靴を脱いで」
と言ってくる
靴ついていた小さな金具が引っかかったようだった。
彼のベルトのバックルは通ったのに何で?と思ったがとりあえずはサンダルを脱がなくては。
こんなときに限って脱ぎづらい靴を履いていた。
早くしなくてはと焦っていると、さっきの係の女性が
「もう一度並んで」
と言ってきた。
ここではみんなが急かせかしているので私が靴を脱ぐのを黙って待っていることをしてくれなかったのだろう。
ふと振り返って列に並んでいる人たちを見てゾッとしてしまった。
人が増えている。
順番待ちの人の列は先ほどよりも長くなっていた。
この最後列に並ぶのか。。

それでも並ぶだけなら別に良かった。
時間に余裕を持たせてあったし、ただ順番を待つのは特に苦痛も感じない。
問題は彼であった。
彼は私が引っかかっていることも知らず、どんどん先に歩いていってしまいとうとうセキュリティーチェックのブースを出ていってしまった。

「待ってて」
と大声で叫べば聞こえる距離では合ったものの、性格的に恥ずかしくてできない。
因みに、後に無事出てきた私に彼は
「何やってたの、遅いな」と言ってきた。

それはともかく仕方がないので脱いだ両方のサンダルを片手にぶら下げて裸足で最後列に目をやりながらトボトボと人々の並ぶ列の横を歩いていく私に、列の中ほどにいた家族連れの白人男性が突然
「Do you want to ・・?」
と話しかけてきた
当時の私のリスニング能力ではそれだけしか聞き取れなかったが、自分の前に並んでいいと言ってくれていることは彼の手振りでわかった。
最後列までは20人以上並んでいたが、彼の前にはあと5人くらいしかいなかったのでかなりのショートカットになる

「Yes,Thank you」
感謝の意は態度で伝わったと思うけど、こんなありきたりな返答しかできなかった。
お礼を言って、列に入らせてもらった。
彼はどうぞというように微笑んでくれた
思いがけない親切に嬉しさとなんだか気恥ずかしいような思いで涙が出そうだった。
困っていた私を躊躇なく助けてくれた男性の顔は今はもう忘れてしまったけど、ハワイでの思い出として一番心に残った出来事だった。

こんな風にして人の心にずっと残るやさしさを誰かに植え付けられたら幸せだと思う。







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