卒業生の会

今日は、私がフランスで所属している大学の自然言語処理コースの卒業生の会であった。7人の先輩方がそれぞれ今何をしているか、について語ってくれ、タダメシが食べられて無料というなんともコスパの良いイベントだった。運営陣は知り合いばかりだったので、最後片付けのお手伝いなどしたのだが、運営陣には本当に感謝でいっぱいである。

私自身、日本の大学で国際学会の運営でケータリングやら登壇者とのメールのやりとりだとかは経験があるので少し懐かしささえ感じた。私の日本の大学の教授は面白い人で、学会は人と話すのが楽しい、などと言ってトークはあんまり真面目に聞かない笑。でも学会自体は好きだから自分でたくさん学会を提案して、悪く言えば生徒をこき使っているけれど、日本のお偉い研究者の方々と顔見知りになれるのは満更でもない。図書館の言語学の棚の前で、あ〜この人こんな研究してるのか〜などと思うのは結構楽しい。色々な経験をすべき、というのは今日のスピーカーの1人も強調していた言葉だ。

7人いれば7人とも違うことをしていて、GAFAにいる人、startupを立ち上げたばかりの人、教授職に自分の役割を見出した人、自由を愛する者、金の亡者、ワークライフバランスに重きを置くひとetc. みんなそれぞれが自分のフィロソフィーを持って邁進している姿が印象的だった。私も、自分の選択に自信を持って生きる、もしくは翻って、自分が自信を持てるような選択をして生きていきたいと強く思った。これは一朝一夕に獲得できるものではなく、常に、今自分は何ができ、何をすべきなのかについて自覚的であることが必要だと思った。

そのことに関連して、今日イベント終了後に私のメンター(と、私は思っている。昔のnoteにも登場したはず)のイギリス人とセーヌ川岸で飲んでいるときに、彼女が語ってくれたのは、より多くの女性が情報科学という学問を選ぶようになる世の中を作りたい、ということだった。女性が情報科学の分野の中にもっと多くのロールモデルを見出せるような社会を。彼女は今の段階では、教育機関などを考えているよう。そのときがきたら私も執行部員になるよ、バイリンガルの学校になるといいね、などと話した。

私にとって、教えるということはものすごくハードルが高くて、というのも、生徒にとって、私が教えたものが全てのように見えてしまいかねないということが恐ろしいからなのである。私が人に何かを教えるときは、なるべく客観的に記述しようと努力はしているが、でもやっぱり私は人間で、バイアスがかかることは避けられない。そして私のバイアスをも、あたかもその学問の本質かのように見せてしまいそうで怖いのである。だから、個人的には、安定しているから、という理由または免許を取りたいという理由で教職を目指す人を無責任であると思ってしまいがちである。もちろん、それもそれで一つの選択であるし、必要な仕事であるのは疑いようはない。一個人の意見だ。

それでも、ある日、自分の知識にある程度の合理性と客観性を見出した日には、人にものを教えることは私にとっての喜びになりうるであろうという感覚はある。ただ、まだその時ではない、ということ。

国内外にこうやって励まし合える仲間がいるというのはなかなか心強い。本当にラッキーなことだ。東大の祝辞にもあったが、これら全てのことは、私1人の力では到底ない。人を見る目を養ってくれた、私にたくさんのインスピレーションを与えてくれた人々との出会いと、それを可能にしてくれた(主に父親の)財力のおかげであり、何らかの方法で、”努力したぶん成功する、ということが保証されていない人々”がそこから抜け出すお手伝いができるようになりたいと思う。

しかし同時に、ここで思うのは、それはあくまでもお手伝いなのだということである。ここで私がでしゃばってしまっては意味がない。重要なのは、自らによる気づきと、そこから変革を所望する、というところまでは自分によって行われるべきだ、と私は考えている。その後、変わりたい、と思った時にすぐさま具体的な方法を提示できること、が理想的なやり方なんじゃないかな、と思う。”大丈夫。何とかなるよ”とか、”社会はこういうものなんだよ”などという言葉でしのごうとするのは偽善者である。たとえそれが優しさから生まれたものであったとしても。構造自体を変化させない限りは、問題は解決されないのである。そのことに気が付いていない偽善者ほどにたちの悪いものはない。”いいことをしている”などと思って自己満足するのは弱者に対する強者の傲慢でしかない。私はボランティアという言葉に甚だ懐疑的である。

ある日、この世から全ての不平等がなくなったら、と考えることがある。人間は完全な平等に耐えうるのだろうか?まあ、子供に対する大人、はいつまでたっても平等にはなり得ないだろうからその心配はする必要はないのかもしれないけれど。

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