見出し画像

新しいものを産み出すときに今求められるリーダーシップ

武蔵野美術大学クリエイティブリーダーシップコース1発目の授業で驚いたことがある。

プロトタイピングを行う中で、自分たちでキャッチコピー/ボディーコピーまで考えたことだ。サービスがこんなものと示すものを作ることだけをするのだろうと甘く考えていた。
結果的に、驚きつつ唸りながらなけなしの語彙からひねり出したものは「悪くないが、プロ多分こういうコピーにしない」というFBだった。(しばらく考えてもよくわからず、後日教授にメッセージを送って理由を聞いてなるほどとなった)

それ以来しばしばコピーというものに悩まされるようになる。
言葉を沢山自分の中へ取入れ、そして自分が目指すものを伝えるのに相応しく、かつ、口に出したときに引っかからないような文節や文章を作ることはとても難しく、しかし面白い。
この営みを繰り返すたびに「コピーライター凄いなぁ」という感想を抱いた。

そんなコピーライターとしてビジョン策定やコピーライティングに多く携わった後、ロンドンビジネススクールへ留学した後、博報堂の新規事業開発部門であるミライの事業室室長へとキャリアを歩まれている吉澤さんにお話を伺った。

**********
武蔵野美術大学大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダーシップコース「クリエイティブリーダーシップ特論」の講義レポートです。
第13回 博報堂/吉澤 到 さん(2021.09.26)
**********

コピーライターとは

コピーライターとは、キャッチコピーだけでなく、ありとあらゆる言葉周りを扱う職業だと言う。広告会社においては、それが関係するありとあらゆる言葉まわりに責任を持つ。
具体的には新聞コピーのボディコピー、企業ビジョンやスローガン、それを伝えるステートメント書き、ナレーション、スピーチ原稿、商品やサービスのネーミング、PR原稿などを行う。

吉澤さん曰く、コピーとは経営そのものである。
経営者の思いを伝えることもあれば、企業の存在に意味を与える(パーパス)ことも、経営に一貫性を与えることもある。また、進むべき方向を示したり、感情に訴え人を行動させたり、現場の創意工夫を引き出すきっかけとなる。

私達が直接的に意思疎通を使う手段の大部分を言葉が占めている。ジェスチャーで通じることもあるが、本質的には自分の意思が正しく伝わるように思考と言葉を尽くして伝えなければ相手へ伝わらないシチュエーションの方が多い。故に、言葉=コピーが重要だと私は理解した。


変わりゆくMBA

吉澤さんはLBS(ロンドンビジネススクール)のスローン修士のコースを受講されている。これはのマネジメント経験者向けMBAプログラムで世界中から様々なキャリアの背景を持つ、平均年齢40歳程のコースだそうだ。

従来MBAと言われると思い浮かぶのが「ケーススタディー」に重点を置いた教育だ。また、ヒエラルキー型組織を前提とし、テイラーイズムに代表されるような、定量的・合理的で効率の良い管理手法が取り扱われるように思われる。

しかしながら、VUCAの時代にそぐわない教育であると批判されてきた。また、ミレニアル世代やZ世代のようにヒエラルキー型を良しとしない世代が世の中へ影響を与える立場になりつつある。
そこで、現代の経営に必要な力を与えるためにMBAもカリキュラムを変えてきている。算数・心理学・哲学、といった部分が重要視されるようになってきたとのことだ。

例えば、LBSでは自分の葬式でどんな弔辞を読まれたいか?という授業があったそうだ。これを通じて自分の価値観を明確にするという目的があるという。

クリエイティブバックグラウンドを持つことの強み

また、吉澤さんはLBS在籍を通じてクリエイティブバックグラウンドを持つことの価値に気づいたという。

例えば、クリエイティブの経験をしてきたからこそ、アイデアは天才の閃きではなく、どれだけ徹底的に考えるか、どんな人にも創造性があるという感覚を持てているとのことだ。

これは博報堂のイノベーション文化も同様で、創造性は誰もがもっており、それを共創によって引き出すことで天才を凌駕する「集合天才」を産み出すことができる、という考えの元に事業が行われているそうだ。

また、答えがないことを考えることへの耐性もついているそうだ。これは答えのない問いに挑戦することが求められる今の時代に必須の能力だろう。

これから求められていくリーダーシップとは

現在の世界は成長の限界が来ており、一定の枠の中で繁栄を目指す時代になっている。そして従来通り「市場の独占」による価値の獲得を行うのか、「協力と相互依存」による価値の創造を目指すのか、シビアに考えなければいけない。
一定の枠の中で繁栄を目指すと考えると後者、つまり共創の枠組みが以前より強く求められている。

とはいえ枠組み(≒社会)を変化させるためには1つの解決策の提示ではなく、複雑なシステム全体を変革できるような活動が求められる。
全体の変革は、人々の意識の変革が行動に表出するように導く必要がある。
ここで、問題に関わる多くの人々に自分ごととして変革に取り組み、協働するように導く「システムリーダー」の存在が必要となるとのことだ。
具体的には、ビジョンを作り、場を作り、問いを投げかけるような人を指している。

システムリーダーには①思考を開く、②心を開く、③意志を開く3つの開放が必要とされる。またこれらの開放にあたっては哲学や価値観といったものを研ぎ澄ます必要がある。

人々=生活者に寄り添うという視点も重要だ。
生活者の成りたい未来から未来をつくる力、前例がないことにチャレンジする力こそがクリエイティブリーダーシップではないかとのことだ。

なお、自分たちがやりたいこと、やれることを持ち寄っても共創にはならないとのことだ。高いレイヤーの共感・共有できる目標を作って、それに自分たちのアセットがどう使えるかを考えることで共創を行うことができる。


この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?