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ままならぬ日々1

ずずずーっと冷やし中華をかけこんだ。
夏はたいてい食欲不振で麺物が多くなる。
人様にはお見せできないような格好で、
これまたお行儀が悪いけど、右手に箸、左手に本を持ちながらの昼食。
11時過ぎに娘は深い眠りについた。
わたしはやっと一人になって、安堵する。
ストッキングを脱いだ時のような、そんな類の。
ふわっと皮膚がとろけるような、しばしの開放感。
ひとりになるというのはなんと心地いいのだろう。
ひとりだったころは、そんなふうに感じたんだろうか。

昨日、母親がネットショップで買ってくれたサンダルが届いた。
素直に、ありがとうと言えた。
親から何かしてもらうのが申し訳なくて、いつも無愛想を決め込む。
それがここ数年の母に対する態度だったのだけれど、自分が子供を産んで、私も子供に戻った。なんだか妙な話だけれど。
親に何かしてもらうのが当たり前だったのはいつ頃だったんだろう。

せっかくサンダルを履くのだからと、押入れの奥からマニュキアを引っ張り出してきた。
窓を全開にして、お気に入りの色を爪に塗る。
乾いた爪のマニュキアと自分の足のちぐはぐが気になった。
ペタペタと音を鳴らしてフローリングの上を何度も歩いた。自分の足じゃないみたい。
お気に入りの色と思っていたのは、ずいぶん前のことだった。

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