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ユニバーサルミュージックがTikTokとの契約を解消について

欧州議会ではいわゆるバリューギャップの問題を是正するべく音楽ストリーミングの公平性や持続可能性の確保等を目的したEU規則案が先日採択されました。国内でもバリューギャップの問題を是正するべきという意見が従来から継続してなされており、2024年1月23日に開催された文化審議会著作権分科会政策小委員会でもレコード会社や実演家の業界団体からこの点についてヒアリングを実施しています。DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策の実現は、知的財産推進計画にも繰り返し記載されるなど我が国の知財戦略において重要な課題となっています。

ところで、動画投稿サイトに他人の著作物である楽曲を投稿する場合、原則として著作権者などから許諾が必要ということはイメージできると思います。

ここで許諾が必要な権利は、楽曲(作詞+作曲)の著作権、レコード製作者の権利(レコード音源等について発生する権利)、実演家の権利(歌唱などの実演について発生する権利)があり、このうち、レコード製作者の権利と実演家の権利はいわゆる原盤権としてレコード会社が管理保有しているケースが多くあります。

JASRACやNexToneなどの著作権等管理事業者は、楽曲の著作権について作詞家や作曲家(及び所属するプロダクション)から管理を任されている場合、JASRAC等が楽曲を利用したい利用者に対して許諾を与えることになりますが、JASRAC等は多くの動画投稿サイトとの間で包括的に利用許諾契約を結んでいます。そのため、個々の投稿者が楽曲の著作権の権利処理をする必要はありません。
いわゆる、歌ってみた、演奏してみたというジャンルの動画が自由に作成投稿できるのは、当該投稿サイトとJASRACなどが契約を締結しているからです。

他方、動画投稿サイトにおいて、レコード音源をそのまま利用したい場合、著作権の許諾のみならず、上記、原盤権の許諾をレコード会社などから得る必要があります。

この点、TikTokでは投稿動画の多くはレコード音源を投稿者のダンス等に合わせて利用しているため、当該レコード音源について権利を保有しているレコード会社がTikTokと包括的な利用許諾契約を締結していない限り、投稿者がレコード会社等に無断で動画を投稿することは原盤権の侵害になってしまいます。

今般のニュースでは、ユニバーサルミュージックグループが保有する原盤権等の包括的な利用許諾を含む契約が2024年1月31日をもって終了したため、TikTokは同社が原盤権を保有する楽曲を利用できなくなったと考えられます。なお、TikTokにおいて同社の楽曲に関し、レコード音源を利用しない、歌唱動画や演奏動画まで禁止されているのかは、別途、著作権の利用許諾状況をJASRAC等のホームページなどで確認する必要があります。

弁護士 梅澤隼(松田綜合法律事務所)
2016年12月弁護士登録。2021年から2023年まで経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課にて任期付職員として勤務。著作権関連法務、個人情報プライバシー関連法務等に注力している。

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