見出し画像

43 ゴールデン街(友達酒場編1)

 日本最大の歓楽街と言えば新宿歌舞伎町だと思うが、その中でもとくにディープなエリアがゴールデン街で、個性的な酒場が数多くひしめいている場所として知られている。
 有名なところでは、かつて内藤陳さんが店主を務めていた「深夜+1(プラスワン)」がある。ミステリやハードボイルドが好きな仲間が集まり、夜な夜な濃い話をしているらしい(ぼくはそこまでマニアではないので行ったことがない)。
 ぼくの周辺にはゴールデン街を根城にしている友人がけっこういるけれど、ぼく自身はそれほど熱心に通ってはいない。行くとしても2~3ヶ月に一度あるかないか。とくに、いまは松戸の自宅で仕事をするようになったので、夜、酒を飲みにわざわざ東京の左半分へ出かけて行くのはとても億劫になってしまった。友人がカウンターに立つ店も多いので、なるべく顔を出してあげたいとは思うのだけど……。

 そんな感じでゴールデン街とは縁が薄いぼくではあるが、最初に足を踏み入れたのは案外と古い。あれはたしかソフトバンクの『The スーパーファミコン』誌で仕事をしていたときだから、1995年のことか。当時の編集長に誘われて、ゴールデン街のドンツキにある「よさこい」という名前の酒場へ行った。名前からわかる通り土佐料理の店で、洋酒をメインに飲ませるカウンターバーが中心のゴールデン街では異質な存在だった。
 当時のぼくはあまり洋酒を飲まなかったし、関東では珍しい土佐料理をつまみに酒が飲めるのが嬉しくて、よさこいには何度か通った。店内に大将が飼ってる猫がいたのもポイントが高かった。
 それともう一軒。当時、メサイヤというファミコンのパブリッシャーとしてはそれほどメジャーではないが、そこの広報マンにやたらと目立っている松田という男がいた。いつも上下黒のスーツに黒のネクタイでロン毛という、早過ぎた飯野賢治みたいな人物なのだが、ぼくはなぜか彼と気が合って、そいつに誘われて「スコッツ」というバーへ行ったことがある。松田との呑みは楽しかったが、店の印象はとくになく、それきり行ったことはない。

 それからしばらくゴールデン街からは足が遠のいてしまうのだが、再び行くようになったのは、トークイベントの仕事で新宿ロフトプラスワンに出るようになってからだ。イベント終わりの打ち上げが、共演者の馴染みのゴールデン街で行われることが多かったからだ。
 俳優の石川雄也さんがマスターの「ダーリン」、その上の「ハニー」。高橋ヨシキさんが映画『サスペリア』風の内装を手掛けた「CAMBIARE」、友人が一日店長をやっていた「シエロ」、ドルショック竹下さんがキャプテン(ママ)を務めるエロ酒場「Sea&Sun」、マンガ大好きなのんちゃんの「図書室」。
 歌謡曲酒場の「bar prastic model」は誰の紹介もなかったけど、いちど行ってみたくて勇気を出して一人で入店したら、たまたま店内で加藤賢崇くんが掟ポルシェさんをインタビューしていたりして、期せずして友人2人と一緒に飲むことになり、ずいぶん救われたりもした。

 ゴールデン街は「深夜+1」を筆頭に出版や映画の業界人が多く集まるところという側面もあるが、ぼくは文壇バー的なものが苦手なところがあって、必要以上に深入りはしていない。それよりも、酒場の女性(ママとかホステスとか)にすぐ惚れちゃう悪い癖があって、ゴールデン街でも一人、ある店のホステスと仲良くなり、のちに恋愛関係になるのだが、その彼女のツテで次は四谷の荒木町に通うようになるのだった。

※写真は、酒場ですぐ寝る「起きてポルシェ!」で有名な、Sea&Sunでの掟ポルシェさん。


気が向いたらサポートをお願いします。あなたのサポートで酎ハイがうまい。