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生々しく書き上げてく 自分だけの生き方を

あちこちオードリーの星野源さんゲスト回を見た。

以前たしかラジオでも話しているのを聞いた気がする。インストバンド「SAKEROCK」として活動していた源さんが、人前で歌うと決めて初めて作った「ばらばら」という曲の話。失恋をした後の「クソがっ!」という気持ちから作ったけれど、それをそのまま書くとただの自慰行為になってしまうから、上手く普遍化して、みんなに伝わるようにしたのだそうだ。

あちこちオードリー
本音が炸裂!! 超多忙な星野源の暗黒時代とは? 名曲誕生の裏側には壮絶な苦しみが!!
#TVer #あちこちオードリー
https://tver.jp/corner/f0077793

この話を改めて聞いて、だいぶ前に見た一青窈さんのインタビューを思い出した。大ヒットした「ハナミズキ」は本来、9.11への怒りから書いた曲で、当初の歌詞には「テロ」などの直接的な表現も入っていたという。
歌詞を練り直す過程で、直接的ではない言葉を遣う方がより多くの人に届くのではないかと思い、いまの形になった。結婚式でも歌われるような曲になって、正直驚いている、というような内容だった。(記録も残していないし、だいぶ古いインタビューなので、記憶違いあるかもしれません、その場合はご容赦ください)

前回のスペシャルウィークで、Creepy Nutsのオールナイトニッポン0 (6/15深夜放送)にゲストとして登場したFunky Monkey B∧by'sのファンキー加藤さん。加藤さんも、なかなか思うように伝わらない韻を捨てて(否、 Rさん以外は誰も気付かないステルス韻を忍ばせてひとり溜飲を下げながら)、メッセージ性を前面に押し出した曲を作り、お茶の間の人気者となっていった話をしていた。


少し前に佐久間さんがラジオで話していた、闇の出し方の話も思い出す。佐久間さんも「自分の中にあるコンプレックスとか黒いものを面白く出さないと。」と言っていた。

山崎怜奈と佐久間宣行「腹黒さの出し方」を語る https://miyearnzzlabo.com/archives/73632

6/2に放送されたあちこちオードリーの田村淳さんゲスト回。淳さんの番組に出ることを渋っていた演者さんに、淳さんが「番組の最初はふざけます、でもそれは視聴者にきちんと伝えたいと思っているからで、中盤以降にきちんと伝える時間を設けます」という内容の動画を送って口説いたというエピソードにも通じるように思う。

明日のたりないふたりで若林さんが、前半おもしろおかしく漫才をしてから、核心となる武器の話に入っていったのも、きっと同じ骨組みなのだろう。

ジェーン・スーさんのエッセイ「生きるとか死ぬとか父親とか」もそう。スーさん独特のユーモアあふれる筆致は読んでいてとても楽しいし、痛快だ。


より多くの人に届けたいと思うならば、パンチのあるエピソードをよりPOPに、普遍化したり、面白くしたりしないといけないってことなんだな、と今更ながら気づいた。

一流の方々の仕事は、やはりすごい。そのひとことに尽きる。

翻って、私の書くものはどうだろう。
一流の方々の作品と比べること自体、とてつもなくおこがましいことだが、そのことに気づいて以来、ぱたりと書けなくなってしまった。

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しばらく悶々と悩む中で、この記事と出合ってようやく目が覚めた。作家の岸田奈美さんへのインタビュー。


ちなみに岸田さんは、昨年11月に開催されたCreepy Nutsの武道館公演を観た後、素晴らしいレポートを書いてくださった方だ。


「今までは面白い話ばかり書いてきたのに、辛い話をしたら読者が離れてしまわないだろうか?」

1冊目の著書とはテイストの違う、完全に自分のための文章を日記として毎日更新することに決めた岸田さんは、そう不安に思ったという。しかし、その不安は杞憂に終わる。『もうあかんわ日記』と名付けた日記を更新し始めると、noteのフォロワー数は激増したのだそうだ。

私も実際に読んでみた。辛い話にユーモアをたっぷりまぶしてあり、めちゃくちゃおもしろく、ぐいぐい引き込まれる。
一流の作品は、やはり素晴らしい。圧巻だった。

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分かっている。まずもって私には、圧倒的に筆力が足りない。スキル不足。それでしかない。

あとは私の性格に起因する部分だ。変に生真面目すぎる。求められたら、常に自分の持てる能力の100%で応えなければならないと思っている(勝手に)。物事にはいつも真摯に向き合うし、リアルでいることこそが正義だと思ってしまう(勝手に)。愚直すぎて、遊びがなくて、息が詰まるから、相手に重く感じさせてしまう。
分かっているのに、そんな自分をやめられない。

HIPHOPに出合ってからというもの、リアルに生々しく生きていていいのだと、不器用な自分の生き方を丸ごと肯定してもらえたような気がしていた。だからこのnoteはリアルで生々しい独り語りを続けてきたのだ。

そうだった、私が自分でゴリゴリのHIPHOPスタイルで戦おうと決めて、このnoteを始めたのだった。
そう思い出して、ようやく目が覚めた。

いつか私も、POPに擬態できるような、圧倒的な筆力を手に入れられる日が来るだろうか。
それまでは、ひたすら真っ直ぐに、ありのまま、生々しく独り語りのHIPHOPを貫いていこうと思う。

胸を張って、無様に恥を晒して、源さんの言う自慰行為を続けよう。
この自意識過剰なねちっこい逡巡の過程も、ひとつの自慰行為として書き残しておくことにする。

こんな私のどこかが、お読みくださるどなたかのどこかと重なるようなことがあれば、この上なく嬉しい。


※タイトルは敬愛するCreepy Nuts×菅田将暉「サントラ」の歌詞より勝手にお借りしています


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