フィリピンで拉致られて埋められかけた話

これは僕の慢心が生んだ事件です。

フィリピンを含め、外国はナメたらいけないという事が学べる実体験です。

2020年の3月にそれは起きました。パンデミックでロックダウンになる前日です。

フィリピンに住んで3年、英語はまぁなんとかなるし、タガログも単語単語なら話せるし、スラム行くし、何よりフィリピンが大好きでした。

ということはフィリピンも俺のこと好きだろう、そんな勘違いが悲劇を生みました。

一言でいうと、

銃向けられたことある?僕はある

そんな話です。

マニラの北にクラークという街があります。

クラークは今後首都機能の一部が移転し、今後発展間違い無しのエリア。

仕事も兼ねて日帰りで突撃しました。

色々話が進み、やっぱフィリピン最高だなーとか思いながら韓国焼肉をひとり食ってました。

サンミゲルライト2本くらい飲んで、さーて帰ろうかなと思ったんですが、体調があんまり良くなく、2時間バスに揺られるのがちょっとしんどいなと思い、グラブを呼んで見ることにしました。

グラブが1500-2000ペソという謎表示をかましてきて、まぁいつもどおり交渉すっかなと思ったら、すぐ捕まりました。

ふと財布を見たら1700ペソしかない

この現状話してダメなら辛いけどバス乗るか、そんな感じで運転手を待ちます。

来たなーと思ったら、見たことない青いタクシー。聞くとクラークらへんでしか走れないとか。

おれはマニラ行けねーけど、友達に聞いてみるぜ!

素敵やん。紳助なら素敵やん、映画なら死亡フラグ、そんな状態です。

でも何かあっても俺には1700ペソしかないという自信がありました。

グラブでちょっと走り、彼の友達の車に着きます。

その車ボッロボロ

今考えると死亡フラグビンビンなんですけど、クラークはまだ古い車もあるのかなーとポジティブに解釈し、交渉。

マジでお金持ってないので、1700ペソで帰りたい、無理ならタクシーで帰るわ、と伝えたところ、てやんでえ、乗ってけ!みたいな感じで乗せられました。

フルスモークだったのと、グラブドライバーの紹介で少し安心しており、乗り込んだところ、まさかの男3人乗ってる

こいつらもマニラ行くから後一人待ってたんだ!

と話すドライバー。そんな事もあるんか、と信じるオレ。

書いてて思うんですけど、僕本当にバカなんですかね?死亡フラグしか立ってません。映画でもお前どう考えてもそっち死ぬやつ、なんで行くん?ってキャラいるじゃないですか、まさにあんな感じ。

ただ怪しさは感じていたため、聞かれたことにはすべてウソで返しました。ローカルエリアに韓国人の友達6人と住むタカという謎の青年を演じました。

マニラに向かう高速道路へ向かうと思いきや、脇道の真っ暗な道へイン!これはやべーな、変な道行ったわってとこで、映画みたいに車から飛び出そうとしたらところ、映画みたいに銃が出てきました。そして漫画みたいに身ぐるみ剥がされました。

銃が出てきても、なぜか妙に落ち着いており、この状況の最悪はなにかを考えました。

1.死ぬこと
2.エイナルさんを破壊されること
3.個人情報を抜かれること

よし、まずは1.2を回避しようというわけで、すべてをギブに振り切りました。

おっけーわかった、時計あげる、アイフォンあげる、今ならカバンもつけちゃう。クソきたねーけど、この靴もいる?みたいなところで、それはイランってなりました。

この時点で1.2は回避できそうだと言う見込みが立ちました。ただし、銃出してるやつが暗い社内でも見えるくらいヨダレが出てました。うん、これヤバイやつ。ヤク中のやつ。よく見たら目もちょっとイッてる。

ただそんな中でも個人情報は厄介なのでパスポートとIDは返してもらおう、これだけを目標設定しました。

そして真顔で、「おれパスポートないと死ぬんよ」みたいな事言ったら、一人がわかった返そう、と言い、こいつマジ話わかるやん、素敵やんってなりました。

ついでに「ぼくIDないと死ぬんよ」みたいな事言ったら助手席のやつが『黙れ、殺すぞ』とのこと。

あのー、リアルに殺すぞ!って言われたことある人います?僕はあります。次転職することがあるならば履歴書に書きます。

スキあらばID要求してみたんですが、最終的に「お前は命とIDどっちが大事なんだ?」というパワーワードに圧され、負けました

放流される前に持ち物はパスポートのみかぁ〜、どうしよう〜と思っていたら、隣りに座っている目血走りヨダレが急に僕の手を握り、100ペソをくれました。

謎の優しさを感じながらマジで真っ暗な夜道に降ろされました。

胸ぐらを掴まれた関係でビリビリの服、握りつぶされた100ペソ、年季の入ったパスポート、装備はドラクエレベル1の勇者でした。

色んな感情が込み上げましたがこれ以上犯罪に巻き込まれるのはごめんなので、ソッコーで人のいるところを探します。

暗闇の中、ローカルな食堂を見つけて話しかけました。ビリビリの僕の服を見て、マジでこいつどんなファッションなん?みたいな感じで思われていたっぽかったので、事情説明し、バスターミナルの場所を聞き、また真っ暗な道を歩きます。

うわー、こんな暗い道また犯罪に巻き込まれそうだな

と思いながら後ろからチャリンコに乗った人からタガログ語で話しかけられます。うわ、強盗2連コンボかよと思いながら、

ごめん!ホールドアップ済み!

と両手を上げて人生で最も使いたくないワードを伝えたところ、

「違うんだ、これ」

と35ペソ(70円)を手渡されました。

彼の服はお世辞にもキレイとは言えず、乗ってるチャリもボロボロ、多分ローカルの食堂にいた人からお金を集めて渡してくれたんだろうなと言葉が全部通じなくてもわかりました。

最初は固辞したものの、彼の気持ちを考え、最大限の感謝を伝え、本当にありがとう、一緒に写真を撮っていいかい?と聞こうと思ったら、携帯がありませんでした。

それでも彼の照れくさそうな笑顔を僕は一生忘れません。

感動したらどっと疲れて喉が渇きまくったので、とりあえず15ペソの水を買いました。

目血走りヨダレの100ペソとフィリピンで一番いいヤツの少年の35ペソからなんにも考えずに買った水15ペソを引き、120ペソ。

これで家に帰ろうと思ったらバス代は152ペソ。

正直数十ペソとかなんぼのもんじゃないくらいに思ってましたが、お金の重み、フィリピンの方々の生活の大変さを改めて感じました。

その後持ち前の明るさとガッツでバスに断られること3回、4回目のバスで、てやんでい、乗ってけ!みたいな感じで無事帰宅しました。

今回の出来事はたくさんの教訓を僕に与えてくれました。

・外国は慣れた頃が一番危険なこと
・今の居住エリアが異常に安全なこと
・好奇心で突き進みすぎてはいけないこと
・クラークに世界で一番いいヤツがいること
・バス乗る前におしっこをしたら人生の中で一番ちんちんが小さくなっていたこと
・ちんちんが小指の爪くらい小さくなること

こんな出来事があっても僕は不思議とフィリピンが嫌いになったり、犯人を恨んだりとかは全くありません。

彼らには強盗をするという選択肢しか残されてなかったのかもしれません。

人類の歴史は暴力や恐怖で支配されていたことが圧倒的に長く、平和な現在のほうが珍しいんだと思います。

日本の先人たちへの感謝の念と、大好きなフィリピンのために、何が出来るかわかりませんが、とりあえず一生懸命仕事して、フィリピンの経済を回してやろうと思います。

そんな感じでラブ&ピースを誓った三橋でした。

あ、そういえば風邪引きかけてたんですが、強盗に合うとマジでそれどころじゃなさすぎて完治しました!

病は気から、あると思います。

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