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最近の読んだ

大佛次郎の『地霊/詩人』を読んだ。勃興するテロ組織と帝政ロシア、渾沌に必然の如く生まれた怪物はアゼフ。恐らくノンフィクションなのであろう。その文献を小出しにする細やかさは、エンターテインメントとしての品質を担保する。格調ある言葉の連なりがテロリズムの血腥さを覆う。直接的に描かれない陰鬱な空気は文面に漂う。面白かったけれど少し疲れたな。

前に読んだのが井上靖の『闘牛/漆胡樽』であるのだが、そのうちの後者に関しても似たようなものを感じた。年代物、それも古代の代物が放つ妖しさ、その質量以上の重みがこれでもかと伝わる。それは作品の物語性にも依るものでもあるのだが。漆胡樽のことが大いに気になって、読後に〈原色日本の美術〉シリーズの〈正倉院〉を開いてみたが、特に取り上げられてはいなかった。

ちょっと何かと重たいのが続いたから、次いでは読感が軽めのものを開きたい。

手提げには質量が軽いもの。

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