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KDPから本を出版するにあたって

現在、発売日10月14日(土)を前に、粛々と行われているのだろう出版サイドの作業終了を待っている。期せずして(これは本当に偶然)土日にはAmazonプライム感謝祭があるらしいから、より多くの人に本のサイトものぞいてほしいなと思う。

とつぜん、本を作ろう! と決めたときは、まだ、それがどんなに大変なことかわかっていなかった。初めての経験に、わくわくしていた。KDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)のホームページ、なかでもヘルプ記事をとにかく読む日々が始まった。あれ? 楽しいはずなのにおかしいな。日を追うごとに、笑顔が薄くなっていく。作業を進めているつもりでも、途中まるで道に迷ったかのように、何をしているのかわからなくなることがたびたびあった。着手して約2週間が過ぎ、どうにかこうにか校正刷りを注文する段階にこぎつけた!

校正刷りを手にしたとき、私に再び笑顔が戻った。文字ポイントは10.5にしたから少し大きめだけれど、目が滑ることなく一文字ずつ大切に読める。装丁の発色など期待以上だし、文庫本より大きいがペーパーバックだから、表紙がやわらかくしなだれて手に馴染む。上出来と言えるほどの本になった。

しかし、本当の葛藤はそれからだった。
読んでみれば、やっぱり一番大切なのはテキストだと気を引き締める。そもそも執筆、推敲、校正、すべてひとりでやってきたから不安で仕方がない。ひとりで本を作ることの限界も感じた。どうしてこんなことできたんだろう? 新人賞を受賞した作家でもないのに、本を出版するなんて! 大胆な行動に出たもんだな……自分で自分がおそろしくなった。やめようか? 出版するなんてやめる? 怖気づいた私自身に比べて、手のひらに包まれた本は堂々としていた。これは私が生み出した本なのに、自身よりも立派な体を成していた。私のためではない。この2つの物語のために、本を送り出そう。そう決意したとき、新潮と群像の通過作品であるという看板は目に入らなかった。

大切なこの本を守るために、私は次の2つを自身に再確認した。
①人と比べないこと
②どんな声も受け入れること

本を作るスキル以上に、意外にも精神的な逞しさが必要だ。大海を夢中になって進んできた舟は、漕いできた者の手をはなれ、静かに波間にゆれている。ああ、どうか転覆だけはしませんように。そして中空を飛ぶ鳥たちや、海に生きる魚たち、海面を滑る大型船から手をふる人人……たくさんのものと出会うことができますように。作者は祈るばかりだ。

万条由衣

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