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花織

読谷の伝統工芸に「花織」という織物があります。

なんでかしらないけどそれを体験することになりました。

縦の糸はあなた、横の糸はわたし、という中島みゆきのあの有名な歌詞の通り、織物とは縦糸のあいだに横糸を往復させながら織り上げていく作業で生まれる工芸品です。

たまたまわたしは数ヶ月前から織物に興味を持って、図書館で本を借りたりして、糸のつむぎかたとか機織り機とかを調べていました。

でも本だけ見ててもよくわからないので、実際に機織り体験してみたいな〜とウスラボンヤリ思っていたらこういうことになるわけですよね、おもしろいね人生って!!

ちなみに機織りの絵が描きたかっただけで機織りそのものがすごくやりたかったわけではないです。

わたし家庭科ができないんです。

料理も裁縫もまったくダメです。

息子の保育園バックも怒りのオール2センチ波縫いで作り上げました。あとから思った、ヨーカドーとかで売ってるやつ買えばよかった。

さあそんなわたくしが、機織り機の前に立つ日がやってくるとは。

機織りについてわたしが知ってることは鶴の恩返しのみです、障子のむこうでトンパタリ、何か音がしてそれらしき影がうごめいてるのがわたしの知る機織りのすべて。

つまり何もわかりません。

「はいじゃあね、ここに立って」

「へえー!!この板を外して、立って、もう一度はめるとそこがイスになると、こういうわけですねー!!」

読谷の花織は伝統工芸なのでマジメなせいか、撮影は一切禁止です。なので本日はセリフと音のみでお楽しみください。マジで鶴の恩返しみたいになってます。

「まず右足を踏み込むと、縦糸が開きます」

「ウッヒャー何これ、機織り機ってすごい複雑な構造!!意味がわかりませんね!!」

「開いたところに横糸を通してね」

「せまっ」

「もっと踏み込んで」

「機織りってけっこう力いるんですね」

「通したらトントン、横糸を手前に押し込んで」

「ウワー!!これが鶴の恩返しのトンパタリの正体ですね!!」

「今度は左足を踏み込んで」

「縦糸が逆に開いた!!マシーナリー!!!!機織り機ってめっちゃメカニカルですね、カッコいいですね、これ昔の人が考えて作ったんですよね、すごくないですか昔の人、天才じゃないですか」

「また横糸を通して」

「カー!!このくり返しで布が織られていくんですね!!先生、わたしには出来る気がしません、もう次にどっちの足をどうしたらいいか忘れました」

「右足ね、今度は、その前にトントンして」

「そうだった、完全に忘れてました、というかここまでの工程自体、自分でもビックリするくらい何も覚えてません」

「はい踏み込んで」

「せまっ」

「もっと踏み込んで」

「さっきと同じくだりじゃないですか、やっぱり何も覚えられない、機織りってものすごい複雑ですね!!」

足で踏み込んで、縦糸を開き、横糸を通してトントン、また踏み込んで縦糸を開き、横糸を通してトントン。

トントンパタリ、くりかえし。

・・・いやいやいや。

いやいやいや!!大変だよ!?!!??機織りって!!!!

知ってたこれ?この大変さ。わたし知らなかった、農業も大変だけど機織りもめっちゃ大変じゃないですか。

昔の人の仕事といえば農業と紡績業ですよね、いやこれは、昔の人すごい、やばい、超大変。

これは近代革命起きますよね、そりゃ起きるよ、自動化機械化されてやっと人類はこの作業から解放されたんでしょう、そりゃもうパーティですよ、だってこんな大変なことを機械がやってくれるなんて!!

しかもわたしがやったのは高織り機といって腰掛けスタイルだからまだいいけど、それよりもさらに昔は腰にひっかけるタイプのやつが主流でした。

足で踏み込むかわりに腰を動かしていたというから、もう想像しただけで腰が破壊されます。

たった10センチ織るのに大騒ぎ。

先生は「上手上手」とほめてくれましたが100%サービス精神だと思います。

というわけで完成品がこちら。

アクセサリ【ジンバナのコースター】:うんのよさ+1

ハッ忘れてました。花織には模様に意味が込められていて、家族繁栄とか健康長寿とか裕福とか、伝統的に3つのデザインがあります。

この3つを組み合わせていくのが花織のルールだそうです。

最初に見学したときは

「なるほど、ドット模様だから幾何学的におもしろい、組み合わせは無限に広がるねえ」

と呑気に思っていましたが、織る大変さを知ってしまったいま、もはや迂闊なことは言えません。

ドットを生かしてドラクエのマップを織り込んだらおもしろそう、とか考えていたけど、織物をやったからこそわかります、そんなの絶対やりたくない。(大変すぎる)

昔々、反物がいくらとか、そういうのがリアルに感じられます、何ヶ月もかけて織ったものを安く売られたりしたらつらい、あるいは豪華絢爛な彩り鮮やかな反物が高いのは当たり前だとか、自分が少しでも体験するとその世界は一気に現実味が増しますね!!

花織は後継者不足だそうで、読谷では絶賛募集中だそうです。未経験者でもイチから育成してくれます。

たったの10センチで心折れたわたしには出来ませんが、都会でやりたくもない会社員やって死にかけてるたくさんの若者のなかには、生まれながらに天性の機織り微生物菌を所有している神の織り手が眠っているかもしれない・・・

文化こそ真の経済発展、読谷をかつて改革した賢人の言葉がよぎります。

都会で絶望してるなら、いろいろ探してみたら自分が輝ける場所に出会えると思います、まだ見ぬ花織の使い手に届けこの想い・・・!!

とりあえず農業レベル2、機織りレベル1はクリアしたので500年前の農村にタイムスリップしてもなんとかやっていけなくはないな、と思っています。

#日記 #エッセイ #花織 #読谷 #機織り #機織り機 #織物

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