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YMCK 10thアルバム「TEN+TEN」と歴代担当アートワーク振り返り

チップチューン/8bitミュージック界の旗手として2003年の結成以降20年にわたって活動を続ける3人組ユニット・YMCK。そしてこの度、記念すべき10作目となるアルバム「TEN+TEN」がリリース。今回もアートワークを担当いたしました。[9/29(金)配信開始・10/21(土)2枚組CD発売]

YMCK 「TEN+TEN」ジャケット

最初にアルバムのアートワーク担当としてYMCKチームに合流したのは2017年リリースの7thアルバム「FAMILY SWING」でした。以降「FAMILY CIRCUS」「FAMILY INNOVATION」とデビュー以来 "ファミリー〇〇" 縛りのタイトルを掲げコンセプチュアルにアルバムの世界観を構築していたYMCKですが、今作は "脱ファミリー" のタイトル、加えて結成20周年、通算10枚目のアルバムと、いつものアルバムとは違った重要なマイルストーンとなる一枚に。

ということで様々な意見交換を経て、YMCKカラーにメンバーお三方のドット絵アバター、おなじみのアイコンを極限までに抽象化し、10(TEN)のドット(TEN=点)で表現するというシンプル・イズ・ベストなデザインに着地しました。

歴代のアルバムのように明確なコンセプトや拠り所となるレファレンスを必要とする局面を経ずにデザインを構築した本作‥…あ、だけど強いていうならイギリスのグラフィックデザイナーであるピーター・サヴィル(Peter Saville)のことを心の中にうっすらと思い浮かべながら手を動かしていたような気がします。New Order、OMD、YMCK、てな具合で肩を並べても遜色なくクール、だといいな。


以下、アートワークを担当したYMCKの歴代アルバムを振り返り。


FAMILY SWING (2017)

YMCK「FAMILY SWING」ジャケット

《8bitサウンドとジャズの融合》というYMCKのデビュー当初からの大きな持ち味がふんだんに盛り込まれ、怪盗に扮するYMCKによるストーリー仕立てのコンセプトと共に繰り広げられる一大スペクタクルな一作。

ジャズやソウルの名盤だったり、あるいは名作映画のサウンドトラックだったり、ジャケットが特徴的なレガシー的なレコードの数々を参考に、アルバムタイトルのロゴタイプやカラーリングなど構築していきました。

もっとシックで大人な色合いの案も出したような記憶もありますが、本作の舞台となる架空の国家・レトロフエゴ公国の地中海的なカラッとした気候のイメージにも合う快活な暖色系に着地。敵役として登場するスウィンガーズ(2ndアルバム「ファミリーレーシング」でもお馴染み)のダークな雰囲気とも好対照。

YMCK「FAMILY SWING」限定盤 (ボードゲーム付きボックス仕様)

MAGICAL GALAXY TOUR EP (2018)

YMCK「MAGICAL GALAXY TOUR EP」配信用ジャケット

過去に発表した楽曲のセルフリミックスに、様々なアーティストとのコラボレーションによる新曲を加えたEP。"ファミリー〇〇" のタイトルで展開するオリジナルアルバムとは一味違う企画モノでありつつも「宇宙」をテーマにYMCKと一緒に銀河を遊泳するような世界観がパッケージデザインにも反映されました。この時に開催されたレコ発ライブも同様のコンセプトで展開され、恵比寿CreAtoの全面LEDモニターの映像が効果的に活きた素晴らしい内容だったことも記憶に新しいです。

YMCK「MAGICAL GALAXY TOUR EP」限定盤CDパッケージ

7インチのEP盤レコードと同じサイズのスリーブに、CDの盤面を大きな惑星に見立てた特殊仕様のパッケージ。タイトル部分に施してもらったホログラム印刷もギラギラなギャラクシー感に一役買っています。構図や色合いはsynthwave/vaporwave的アプローチで。

FAMILY BOOK (2018)

YMCK「FAMILY BOOK」表紙

YMCK結成15周年を記念して刊行された初のオフィシャルブック。こちらは表紙および特典CD盤面のデザインを担当しました。編集はHONDALADY/ケチャップアーツのダイさん。15周年記念エンブレムは1stアルバム「ファミリーミュージック」のアートワークを手掛けた藤岡"ANI"健太郎さん。

歴代アルバム解説やロングインタビュー、活動年表などなど、ボリューム満点の内容に相応しい重厚さをゴールに、RPGゲームの重要アイテムとして出てきそうな古書の雰囲気を纏わせたファミコンレッドの表紙でラッピング。

FAMILY CIRCUS (2019)

YMCK「FAMILY CIRCUS」ジャケット

「サーカス」がテーマの8作目。メンバーがそれぞれにアクロバティックな演目を披露している様子のジャケット。ナカムラさんの火の輪くぐりは通常パターン(普通にライオンがジャンプして火の輪をくぐっている)のドット絵素材も用意していただいおりましたが、ここはやはり「あんたが飛ぶんかい!」というツッコミを期待しての採用となりました。

デジパック仕様のパッケージを開くとサーカステントの外観が、歌詞カードを開くと中で行われているサーカスの様子が…といった具合に、実際にYMCKのサーカスショーを体験するようなフローでCDも聴いてもらうようなストーリーのデザイン構成になっています。

アルバムリリース後に開催されたアフターパーティーではYMCKおよびリミキサー陣(寺田創一さん、パソコン音楽クラブさん)という錚々たるメンツに混じってライブ出演もさせていただきました。コロナ禍直前の2020年2月の話、会場となった六本木VARIT.も翌2021年3月末に営業終了してしまいました。

FAMILY INNOVATION (2022)

YMCK「FAMILY INNOVATION」ジャケット

コロナ禍を挟み約3年ぶりのリリースとなった通算9作目のアルバムは「イノベーション」がテーマということで、パッケージにもちょっぴりイノベーティブな仕掛けが盛り込まれました。

YMCK「FAMILY INNOVATION」歌詞カード (ポップアップ仕様)

ポップアップ部分は歌詞カードのデザインと連動する形でジャケットのモチーフにもなっているYMCKの人型ビルディングを配し、表と裏で絵柄が若干異なりちょっとした間違い探しができるようになっています。ジャケットのYMCKビルディング内部のドット絵はナカムラさん作。

大阪・梅田のクレープ・ド・ココリコ(crepes de cocorico)との限定コラボメニューも美味しかったな。


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