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プルタブを引くまで

今回は共作マガジンを発行しているジョゼニキのあるnoteからインスパイアを受けて、『プルタブを引くまで』と題し、情景描写を意識して私小説を書いてみた。

もし、この企画に感化されてnoteを書かれる人がいらっしゃいましたら、コメントでお知らせください。マンロニキカードを1枚贈呈します。



17:00になり終業の鐘がなる。
一日パソコンに向かう仕事なので、
この時間には一日の脳の疲れがピークを迎え、社内のだれかしらが設定した学校のチャイムのようなアラームが鳴ると、気が抜けてやる気がゼロになる。もう頭が回らないから帰ろうか…


帰り支度をして会社を出たのが17:20ごろ、今日は家にご飯がないので行きつけのラーメン屋に寄る。
世のサラリーマンとしては少し早い時間での入店なので、人気店であっても空いていた。
僕自身が名古屋で一番美味いと推薦する『濃厚○和中華』を、特盛+チャーシュー追加で注文する。
美味しいラーメンには敬意を払って口いっぱいに掻きこむ食べ方をするのだが、今日はいつもより丁寧に咀嚼しスープまで完食した。

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バッチバチに胃が張った状態で店を出た。
この状態でお酒を飲んだならば、胃の容量オーバーで吐いてしまうのではないかと、恐れおののきながら、締めの1杯を求めて駅構内へ向かう。


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名古屋駅の銀時計前では多くの人が待ち合わせのために立っている。今日は金曜日だった。
彼らは人と会ってお酒などを楽しむのだろうが、僕は既に独りでラーメンを食べ、これから駅のホームでお酒を飲もうと考えている。
人と比較して寂しさを感じる暇もなく、人波を掻きわけ歩くのに苦労していた。
途中改札に向かう人の束がゆっくりだったのは、修学旅行で学生の集団がいたからだと分かった。


改札の内側にあるコンビニで『缶チューハイ』を取り上げレジへ。袋に入れるのを断り、いつも丁寧に対応してくださる外国人の店員さんに会釈をした。


来る人行く人の波の中で、飲む所を探す。
人にまじまじと見られない、心地の良い場所ないかと周囲を見渡すが、そんな場所はない。
かと言って、誰も人のことを気にしないのだが。
結局、自販機の横になる。
飲んだらすぐ缶を捨てられるので良い。


ちょうど帰りの電車が到着する時間だったが、お酒をゆっくり飲むために一本遅らせる。
帰宅ラッシュという時間帯でホームに行列をなし、発車寸前の準急列車には走って駆け込む人が多かった。


そんななか、駅のホームでお酒を飲もうとしている人間は独り。

アナーキーでもなんでもない。

いつもの自販機に向かって歩きながら、缶チューハイのプルタブを引いた。

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ギャバドレって綺麗よな? プライベートでも着たらええのに。