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8.情報戦略

・ようやくつかんだカナダの状況

4月9日AM5:35 東京事務局へ送ったFAX

――日記とメッセージーー

夕べ、カメラマンの鈴木君が到着。初めての海外ということを聞いたので、テリーさんに頼み、空港まで迎えに出た。同じ便で北磁極をめざす9人のグループがレゾリュート入り。テリーさんの所は満員で大忙しだ。私も昨日で3日目。こちらの皆と顔なじみになり、どんどん新しい情報が入ってきて、いろんな事が分かってきた。

1 大場さんがカナダ側の補給体制について十分につかんでいないのではないか。
2 補給機が北極点まで行くためには、早くても48時間はみておいたほうがいい。
3 無線機は3.5kg.前後の重さのものがあり、ブラッドレー社(チャーター便の会社)と話せるチャンネルを持つ。ただし交信時、簡単なポールを立て、アンテナをはる必要がある。
4 アルゴス発信機については、他の隊が使っているのは発信情報を16種類選べるようになっており、大場さんのものより小型だそうだ。河野さんチームの真木さんの話では、他のチームはフランスアルゴス社のレンタル品を使っている。このタイプのアルゴスは、泉雅子の「笑ってよ北極点」(文芸春秋社)にも出てきており、1989年に既に使われている。事務局でも買って1度読んでみて下さい。
5 間中さんがブラッドレー社から言われた事は、ツインオッター機が氷上に降りるためには、少なくとも以下の情報がないと難しい。
  ・ 着陸地点の天候、視界、氷の状態、滑走路の長さ

このような情報を確実につかめない場合は、パイロットはほとんど着陸しない。このために情報の流れるアルゴス発信機と無線機は必需品だそうだ。これがレゾリュートをベースに北磁極、北極点をめざす人の基本になっている。特にイーパブ(救難信号)を発信すると、軍が動き、カナダ政府が全ての冒険チームにストップをかける場合があるそうだ。

以上のことを考えると、今回ピーターさんの判断により、大場さんのイーパブ発信が、小アルゴス発信後40時間以上補給機が来ないための追加信号の可能性があるとの見方で3週間分(北極点までの続行可能な食料、燃料)を梱包してもらえたのは大変ありがたかった。

村田君から聞いた10日分の燃料・食料の手配だけだった場合を考えるとゾットする。今回の反省点として私が思うことは、短時間のうちに、補給か、ピックアップかを決定しなければならない場合でも、もう少し総合的な判断が必要だったのではないかということだ。そのためには信頼できる情報を持っている人を見極め、速やかに意見を聞く体制にしなければならない。

【情報】本がたくさんでている。これを読む。ピーターさん、ブラッドレー社のパイロットの話を聞く。
【間中さん】わからない事をすみやかに聞く語学力を持っている。手伝ってもらう。

特に今回の補給チームは、大場さんの出発間際になって、急遽できた組織なので大変なのだが、いろいろ起こりうるであろう問題を想定し、事前にできるだけ積極的に必要情報を把握する必要があることを痛感した。大場さんの長年の夢と熱意を補給体制のまずさで失敗させる事があってはならないのを再認識した。


ー事務局へのお願いー

アルゴスデータの見方はだいたい分かったので、次のことが見てすぐに分かるようにFAXしてもらえればありがたい。

1. 大場さんの北極点までの距離
2. レゾリュート時間で何日何時のデータか
3. 今後の補給に使える運用資金の状態で可能は補給回数を計算してください。


* デジタルハウス斉藤さんへ
テリーさんへ前渡した大場資金は、私が3週間滞在する費用に無線機のレンタル資金を加え、残りがカナダ3000$位あるので、送金は現在不要です。
4. 現在送ってもらっているアルゴスデータは、これからは補給日の予測と準備のため、テリーさん、ブラッドレー社、間中さん、古川君へも送って下さい。

*古川君へ
北極点で補給後、大場さんより必ずカナダ側でも補給要請がでると予測されます。現在手元には、何も補給物資がありません。前回準備した食料関係のスポンサーへ再度打信をしてください。挨拶、依頼文を代理人志賀名でワープロで作成し、こちらへ流してください。私が確認した後で先方へFAXしてください。

皆様のご協力をお願いします。  志賀

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資金残と見積りの依頼  4月9日PM6:00 東京事務局へ送ったFAX

大場さんから要請のあった物(無線機を除いて)は既に今日梱包も終わり、北極点にて補給機が着陸できない時の手順も万全です。レンタル無線機は14日か19日着との話だったので、ピーターさんに早く手に入る手立てがないかを聞いたところ、空港に修理すれば使えるようになるかもしれない無線機があるそうで、4月10日(明日)みてくれるそうです。1日遅れが後で大変になることが多いのです。ついては北極点以後の補給について、飛行機代を早めに確認したいです。

1. 前回(1回目)の補給時にかかった費用
2. 北極点での補給にかかる費用
3. それ以後の金額

横断成功のカギは、補給回数にあるようです。特に今年はカナダ側の氷の状態が悪く、重い荷を引っ張って歩く事は相当難しいようです。大場さんもロシア側で荷物が重すぎて、日記から拾い出すと以下の物を捨てています。

3月5日 そりが重い 内ぞり(8K) カロリーメイト50ヶ おろす
3月8日 熊と出合いとうがらしスプレー1本で足りず、2本使用
3月14日 ストーブ1台、GPS1台、手袋、不要装備品 おろす
3月23日 フライシート、燃料2リットル おろす

このように氷の状態が悪ければ、後で大変なのが予測されても、荷を減らしてその場を乗り切らなければならないようです。河野さんの補給で、氷の状態を見てきた人の話では、1日に4kmから5km進むのがやっとで、河野さんは、北緯86度(4月6日)を越えたばかりです。例年だと北緯84度以北は歩くのが楽になっているそうですが、今年は氷の状態が思った以上に悪いそうです。

北極点以降、最低2回の補給ができる予算が組めると横断の可能性はあると思いますが、重い荷物を最初から無理して積んで、後で捨てるのは、後半体力的に無理がくるのではと思います。凍傷の件もありますが、現在残っている予算を有効に使うには、北極点での大場さんとの打ち合わせと、無線機の有効利用がカギになると思います。私がレゾリュートに滞在できるのは、5月初めまでが限界ですので、それまでに食料その他を日本から持ってきてもらい、その人に引継ぎができれば良いと思っています。

レゾリュートで次にサポートをしてもらう人の条件(心あたりを探してください。)

数日に1回の無線交信と補給機に乗り、大場さんへ荷を届けるのが仕事です。最終的決断は、北極点で大場さんに確認します。

1. ある程度英語の話せる人
2. 施設宿泊費以外、ボランティアで引き受けてくれる人
3. 5月初旬から5月末まで期間のとれる人

北極点以降の食料・燃料の補給物資補充について

できれば無料協賛をお願いする予定です。そのためには、北極点で大場さんに協賛依頼のメッセージにサインをもらってくる予定です。ロシア側から単独で北極点まで到達するというのも大変なことです。その勢いでカナダ側最低2回の補給費用をなんとかできないかを皆様で検討してみて下さい。斎藤さんから早めの現在の資金繰り情報が欲しいです。資金が無い場合、サポートする人を置かずにピーターさんに荷物をブラットレーに運んでもらう方法もあります。早めの資金残、見積をおねがいします。

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