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38.最大の難所に臨む

・到着予定を6月23日に変更

6月21日

アルゴスデータで大場さんの歩いた跡を見ると、今最大の難関に当たっているのがわかる。6月20日午前中までは、ワードハント島に向け一目散というような感じであり、心配していた乱氷もなく、スムーズに距離を稼いでいた。

ところが、6月20日午前10時50分からのアルゴスデータから、ほとんど南へ進まず、一時間ごとに見るデータの数字を図表にすると、西へ西へと動いている。10時間かかってようやく5km南下している。夜9時の無線交信で氷の状態を大場さんに聞くと次のような返事が返ってきた。

「午前中はよかったが、午後になったらリード(開表面)がメチャクチャ出てきて、右へ行っても左へ行っても廻りこめない。」

これを聞くと本当に大変なリードのようだ。補給の時、飛行機から見た網目のようにできたリードを思い出す。ワードハント島までの距離は40数kmと近づき、ピックアップのスケジュールも6月22日と予約をとっても、大場さんがいる状態は、陸から数百km離れたところにいるのと全く変わりがない。逆に危険は増すと考えたほうがよい。

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■6月21日 午後9時 無線交信

食料、燃料問題なし。風は強く、東よりの風。雲はあるが太陽が見える。
昨夜西へ動いているのは、眠らずに歩いたのか、風に流されたかが気になり、大場さんに尋ねたが、雑音により返事は聞き取れなかった。

6月22日に予約していたピックアップ予定を再度確認すると6月23日に変更してほしいという。氷の状態も昨日と同じでリードがたくさんあり、悪いとの返事だった。

しばらく続いている良い天気が変わらないうちに歩かなければならないが、危険も多い。その判断はすでにワードハント島まで20kmとなった今でも大変難しいのを感じる。私に出来ることは、大場さんが平常心でいられるようにサポートすることしかない。長くよい天気が続いたレゾリュートは夕方から風が強くなり、雪雲に変わってきた。

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                   アルゴスデータ(大場さんの軌跡)


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