小学生の憧れの職業1位が野球選手ではない件
近年、小学生の憧れの職業ランキング1位がYouTuberになったというニュースをよく目にするようになった。
もはや、YouTuberに対して問答無用の嫌悪感を示すような人間はいないが、確かに僕たちの世代では当然の様に野球選手やサッカー選手が上位に陣取っており、その当時は存在しなかった職業が天下を取ったのだから、これは大変に大きな変化だ。
特に興味深いのは、歌手や俳優、お笑い芸人にYouTuberが取って代わったのであればエンタメ界の序列の変化だけで語る事ができるが、スポーツ選手の地位は今も昔も変わっていないにもかかわらずYouTuberが1位になっている点。むしろ大谷翔平や久保建英、八村塁など世界に通用するアスリートは増えているというのに。
その点に関しては、アスリートのメディア露出や、地上波でのスポーツ中継の減少といったテレビメディアの衰退との複合的な要素はあるだろうが、それだけでは僕は腑に落ちない。
これはあくまでも僕の仮説だが、近年はアスリートの華やかさよりも、そのストイックさがフォーカスされる事が多く、成功の為に如何ほどの努力が必要かどうかが、小学生にも周知の事実になっているからでは無いだろうか。
加えて、情報を得る機会の多い現代の子供は、僕達が子供の頃よりも想像力が豊かで、感覚的に努力と成功の確率を天秤にかけた時に、スポーツ選手とは目指すべきものではないという結論をぼんやりと弾き出している可能性がある。「大谷翔平になりたいけど、まずあんな才能がない。つまり、彼を超えるとんでもない努力をしなければいけない。じゃあ無理かも」という思考まで辿り着いてる可能性は0ではない。
つまりはこういう事だ。憧れる職業の条件が20年前だと
・楽しそう。
・有名になれる。
・かっこいい。
だったのが、現在は
・自分でもやれそう。
・そこまでの努力が必要ない。
・かっこいい。
に変貌しているという事。
実際、メディアによっては「会社員」や「公務員」がランクインする事もある。スポーツ選手のスター性は反転し、空想の生き物の様な存在になっているかもしれない。
YouTuberに話を戻す。その点では、YouTuberの「普通感」には手が届きそうで、憧れやすい。
しかし近年ではYouTuberという職業の難しさも各メディアで取り上げられつつある。完全に軌道に乗るまでは、動画毎にアイデアを出し、自ら動画編集を行い、それを毎日更新。しかも、最近は収入も下降しており、なかなかに苛烈な職業だ。その事実に子供達が気付くのも時間の問題だろう。
そうなると20年後には、YouTuberもランキングで順位を下げるのは明白。「かっこいい=血の滲む努力の賜物」という悲しき現実に子供達は気付き始めている。
その結果、憧れの職業の条件も
・血を吐くような努力が必要ない。
・安定している。
・そこそこの社会的地位がある。
といった、就活生の志望動機のようになる可能性も往々にして有り得る。
そうなった時に1位になる職業は何か。投資家?ネットビジネス?それこそ公務員?いや、日本の子供達の進化を舐めてはいけない。20年後の子供はもっと社会が見えているはずだ。僕の小学校の同級生には道で捕まえたイモリを机の中で育てていた奴がいたが、そんな子供は令和には居ないだろう。
もちろんどんな職業にも努力が必要なのは大前提として、20年後は「自動車教習所の教官」とか「地方銀行員」とか「野球場の近くのコンビニオーナー」の様な安定感のある職業がランクインしているだろう。
そんな夢を語る小学生は可愛くないから、アイスとか買ってあげたくないけど。
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