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ACLは新たな価値を生み出すコンテンツへ、サウジvsアジアという新基軸【AFCチャンピオンズリーグ23-24】

Jリーグも佳境を迎える中、9月18日にAFCチャンピオンズリーグが開幕した。

今回から開催日程が秋春制に移行となり、『AFCチャンピオンズリーグ2023-2024』という名称に。
これにより全く同時期にスタートする世界最高峰の舞台・UEFAチャンピオンズリーグの真裏に隠れる形となり、より一層関心が薄れるのではという懸念も生まれそうだが、今年のACLは一味違う。

Jリーグからの参加チームの展望も含めて『AFCチャンピオンズリーグ2023-2024』の注目ポイントをまとめていこう。



AFCチャンピオンズリーグの歴史

AFCチャンピオンズリーグの前身は1967年から4度に渡って行われたアジアクラブ選手権。その名の通りアジアで最も強いクラブチームを決める大会である。

その後、14年の中断を経て1985年に復活。規模を拡大しながら2001‐2002シーズンまでアジアクラブ選手権として開催が続いた。

2002年より現在のAFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)に名前を変え、2005年より本格的にスタートしたクラブワールドカップへの出場権をかけた重要な位置付けの大会として現在まで続いている。

2014年からは、グループリーグ~準決勝までを東アジア・西アジアに分けて戦うレギュレーションになった。この為、日本を含む東アジア・東南アジアのクラブは西アジア(サウジアラビア、UAE、カタール等)のクラブとは決勝まで対戦する事はない。

ACLに名称変更してからの最多優勝クラブは浦和レッズ(日本)3回。
次いで2回アル・イテハド(サウジアラビア)広州恒大(中国)全北現代モータース(韓国)蔚山現代(韓国)アル・ヒラル(サウジアラビア)が続く。

補足情報となるが、1967年の初代チャンピオンはイスラエルのハポエル・テルアビブFC(現在イスラエルはUEFA所属)。
再開後初回の1985年の優勝は韓国の大宇ロイヤルズ(現・釜山アイパーク)


JリーグクラブとACL

もちろんJリーグクラブの活躍がACLの最大の注目ポイントだ。過去の成績を見ると、Jリーグクラブの優勝は過去に5回。

・2007年 浦和レッズ【大会MVP・永井雄一郎】
・2008年 ガンバ大阪【大会MVP・遠藤保仁】
・2017年 浦和レッズ【大会MVP・柏木陽介】
・2018年 鹿島アントラーズ【大会MVP・鈴木優磨】
・2022年 浦和レッズ【大会MVP・酒井宏樹】
(※アジアクラブ選手権時代に古川電工・読売クラブ・ジュビロ磐田が優勝)

浦和の最多優勝は見事だが、ナショナルチームの立ち位置を考えると、20回中5回の優勝というのは少し寂しく感じるかもしれない。事実、国別の優勝回数でいえば韓国の6回に及んでいない。

そんな、韓国に並ぶ日本勢6回目の優勝を目指す今大会を戦うのはこの4クラブ。

横浜F・マリノス
川崎フロンターレ
ヴァンフォーレ甲府
浦和レッズ

ちなみに、2022シーズンJ1リーグ3位のサンフレッチェ広島は出場権を確保していたが、浦和レッズが前年度のACLで優勝した為、浦和に出場権が移る事となった。

4チームが振り分けられた”鬼門”のグループは以下の通りだ。


ACL23-24・Jリーグクラブの予選グループ分け


●グループG
横浜F・マリノス(日本/J1リーグ優勝)
仁川ユナイテッドFC(韓国/Kリーグ1・4位)
山東泰山足球倶楽部(中国/中国FAカップ優勝、超級リーグ2位)
カヤフットボールクラブ・イロイロ(フィリピン/フィリピンリーグ優勝)

山東泰山足球倶楽部には、シャルケ04でもプレーした中国代表・蒿俊閔(こうしゅんびん)、マンチェスター・Uで活躍し2018年ワールドカップで日本代表に悪夢を見せた元ベルギー代表マルアン・フェライニが在籍。仁川ユナイテッドのステファン・ムゴシャ、ジェルソ・フェルナンデスら助っ人FW陣も超強力。横浜FMはリーグ優勝の可能性も大きく残っている為、リーグとのターンオーバーが鍵になるか。

●グループH
ヴァンフォーレ甲府(日本/天皇杯優勝)
メルボルン・シティFC(オーストラリア/Aリーグ優勝)
ブリーラム・ユナイテッドFC(タイ/タイリーグ1優勝)
浙江職業足球俱樂部(中国/超級リーグ3位)

天皇杯優勝によりJ2からのACL参戦となったヴァンフォーレ甲府のグループには、タイ国内最多優勝を誇り2連覇中のブリーラムユナイテッドに、Aリーグレギュラーシーズン3連覇中のメルボルンシティとチャンピオンチームが揃った。対戦相手は格上だが、この夏にJ1クラスの選手をレンタルで複数獲得するなど戦力は整えた。自国代表選手を揃える強豪相手にJ2ドリームを見せてほしい。

●グループI
川崎フロンターレ(日本/J1リーグ2位)
蔚山現代FC(韓国/Kリーグ1優勝)
BGパトゥム・ユナイテッドFC(タイ/タイリーグ1・2位)
ジョホール・ダルル・タクジムFC(マレーシア/スーパーリーグ優勝)

Kリーグの盟主・蔚山現代に、国内リーグ脅威の9連覇を果たしたジョホール、成長著しいタイの強豪パトゥム・ユナイテッドが同居する死のグループ。近年のJリーグを引っ張り続けた川崎だがACLでは最高成績は8強。ACL仕様のセンターフォワード・元フランス代表のファビアン・ゴミスを獲得するなど今年はタイトル獲得に本気か。リーグ優勝の可能性が低い今年こそ、全力でACLに臨んで初の戴冠を。

●グループJ
浦和レッズ(日本/ACL2022優勝)
浦項スティーラース(韓国/Kリーグ1・3位)
武漢三鎮足球倶楽部(中国/超級リーグ優勝)
ハノイFC(ベトナム/Vリーグ優勝)

他に比べると楽なグループに入った印象。浦和もリーグの上位争いに絡んでいるが、夏の戦力補強も十分なのでターンオーバーを上手く使いながら連覇へ向かって弾みを付けて欲しい。昨年も見せた堅守はアウェイの戦いでは今年も有効。ちなみに武漢の監督は川崎フロンターレでも監督を務めた高畠勉氏。


豪華絢爛な西アジア地区

さて。ここまで日本クラブと東アジアのライバルについて触れてきたが、今回のACLの主役は残念ながら西アジアだ。否、サウジアラビアだ、と言った方が正しい。

サウジアラビアでは7年前に経済・文化の両面で多様化を目指すという国家プロジェクト『VISION 2023』が発表された。概要は以下の通り。

サウジアラビアオイルへの依存度を減らし、多様化するための戦略的フレームワークである。経済、健康、教育、インフラストラクチャレクリエーション、観光などの公共サービス部門を開発する。主要な戦略的目標には、経済活動と投資活動の強化、国間の非石油産業貿易の拡大、王国の穏和で世俗的なイメージの促進が含まれる。また、軍事、製造装置、弾薬への政府支出の増加も含まれる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B32030

このプロジェクトの一環の「スポーツウォッシング(スポーツにより国の悪いイメージを払拭する)」のため、国民的スポーツであるサッカーの国内リーグの発展、そしてその先にあるFIFAワールドカップ誘致に向けて、欧州のスター選手を続々とサウジアラビアに呼び寄せた。
PIF(サウジアラビア公共投資基金)という政府系ファンドが所有する4クラブが異次元の補強を行ったのだが、その内3クラブが今年のACLに参戦する。


●アル・イテハド【サウジ・プロフェッショナルリーグ優勝】
主な選手
カリム・ベンゼマ(←レアル・マドリード/フランス代表)
エンゴロ・カンテ(←チェルシー/フランス代表)
ファビーニョ(←リヴァプール/ブラジル代表)
ルイス・フェリペ(←レアル・ベティス/イタリア)
ジョタ(←セルティックFC/ポルトガル)

何といってもベンゼマだろう。昨年のバロンドーラーがアジアの舞台に参戦したのだ。ACLのボックス内を簡単に蹂躙してしまう姿は想像に難くない。しかし、昨年のリーグを制した完成されたチームに、ベンゼマ、カンテ、ファビーニョと本家チャンピオンズリーグのタイトルホルダーが3人加入したといえ、他の2クラブに比べて必要最低限の補強に留めている。チームバランスはサウジ勢随一だ。


●アル・ナスルFC【サウジ・プロフェッショナルリーグ2位】
主な選手
クリスティアーノ・ロナウド(←マンチェスター・ユナイテッド/ポルトガル代表)
サディオ・マネ(←FCバイエルン・ミュンヘン/セネガル代表)
アレックス・テレス(←セビージャ/ブラジル代表)
オタヴィオ(←FCポルト/ポルトガル代表)
アイメリク・ラポルテ(←マンチェスター・シティ/スペイン代表)
マルセロ・ブロゾヴィッチ(←インテル/クロアチア代表)
ダビド・オスピナ(←SSCナポリ/コロンビア代表)

昨年、クリスティアーノ・ロナウドの加入で世界的に名を挙げたアル・ナスル。この夏にもマネやブロゾヴィッチと現役のワールドクラスを次々と獲得。あのレアル・マドリードの『BBC』の3分の2がアジアの舞台で激突するとは誰が想像していただろうか。首都リヤドのライバルであるアル・ヒラルを出し抜き、初の戴冠を目指す。


●アル・ヒラル・サウジFC【サウジ・プロフェッショナルリーグ3位】
主な選手
ネイマール(←パリ・サンジェルマン/ブラジル代表)
カリドゥ・クリバリ(←チェルシーFC/セネガル代表)
ルベン・ネヴェス(←ウルヴァー・ハンプトン・ワンダラーズ/ポルトガル代表)
アレクサンドル・ミトロヴィッチ(←フルハムFC/セルビア代表)
セルゲイ・ミリンコビッチ サヴィッチ(←SSラツィオ/セルビア代表)
ヤシン・ブヌ(←セビージャ/モロッコ代表)
マウコム(←FCゼニト・サンクトペテルブルク/ブラジル代表)


アジア選手権からの通算では最多4回の優勝回数を誇るアル・ヒラル。W杯アルゼンチン戦でゴールを決めたサレー・アル=シェフリ、サーレム・アッ=ドーサリーらサウジアラビア代表の中心メンバーも最も多く所属しており、大きな補強をしなくとも実力は十分。そんな中、ルベン・ネヴェスやミリンコビッチサヴィッチら、ビッグクラブへのステップアップを予想されていた選手の獲得で世界を驚かせたが、最後の仕上げにネイマール。実績・布陣だけを見れば優勝候補筆頭。

ここに、ハサン・アル=ハイドゥース、アクラム・アフィーフなどカタール代表メンバーがスカッドのほとんどを占めるアル・サッドSC(カタール)、JリーグMVP経験もあるマイケル・オルンガ擁するアル・ドゥハイルSC(カタール)、UAEの絶対王者アル・アイン(UAE)らがファイナリストの座を争う。

外国人枠も拡大して『AFC圏外5人+AFC圏内1人』となり、スタープレイヤー達が5人同時にピッチに立つこととなる。正直に言って、西アジア地区の競争力は別次元に突入した。


今大会”こそ”Jクラブの優勝を

西アジア地区からどのクラブが決勝に上がってくるかは分からないが、願わくばサウジリーグのプレミア化元年の今年、その相手はJリーグクラブになって欲しい。それにより日本国内でのACLへの注目度が急騰する可能性があるからだ。

そして大会の位置付けとしても、AFCアジアチャンピオンズリーグは今回からサウジアラビアの強豪に勝ち世界にその存在を知らしめる為のショーケースに変態した。

アジアを制する価値が生まれた今こそ、Jリーグクラブの優勝を果たして、世界にJリーグの名を轟かせてほしい。


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