初恋

 みなさんの初恋はいつだろうか?

 幼稚園の頃に保育園の先生を好きになったり、小学校の頃に幼馴染を好きになったり様々だろう。

 僕にとっては高校三年生の時。それまでも恋心を抱いたことはあった様な気がするが、胸が痛くなるような、その子の事を常に考えてしまうような、そういうのは、この時が初めてだ。

 その女性は別のクラスだったが、ずっと気になる存在だった。細身で、女子高生にしては少し奇抜な服装の、ショートカットの女性。

 高校三年生に入り、女友達を介してメールアドレスを手に入れ、メールのやり取りを始めた。
 毎晩、絵文字ひとつひとつに頭を抱えながら返信していた。

 部活引退後の秋、一度ダブルデートで映画を観に行ってから、二人きりで会うことになった。どういった流れだったか覚えていないが、なんと彼女を家に招くことになった。

 両親が働きに出ている夕方、駅までその子を迎えに行く。家から10分の道のりだが、最大限のお洒落をした。ベロアのジャケットに細身のデニム。頭にはハット。それが当時の僕の一軍だ。

 駅に着き改札から彼女が出てきた。彼女もまた、とっておきの服を着ていた。もちろん確認はしていないが、僕はそう感じた。

 正直、緊張で何を話したか、何をして遊んだか全く覚えていない。どうやら自分の部屋に好きな女性がいる高校生は、意識が朦朧とするらしい。

 帰りも最寄り駅まで送る。彼女が改札を通った後もう少し見ていたかったが、格好つけてすぐに踵を返した。

 その後もメールのやり取りはしていたが、受験勉強もあり学校以外で彼女と会うことはなくなっていった。もちろん、学校の中では話すことなんて当時の僕には出来ない。

 それから少し時は経ち、大学生になってすぐにデートの約束を取り付けた。我ながらなアグレッシブ。ファミレスで食事をし、ゆっくりとできる場所を探した結果、近く漫画喫茶に入った。
 今思うと、付き合う前の男女が行く場所ではない。でもそんな事すら分かっていない。

 他愛もない会話をし。
 漫画を読み。
 一度手を握った。

 手汗が出ないか気になって、感触なんてあったもんじゃない。

 その帰り道、ドキドキしながらも、確信を持って、告白をした。手まで握ったのだから当然の流れだと思っていた。

 すると彼女はこう答えた。

「地元のだんじりの先輩と付き合っている。」と。

これが、僕の、初恋の話だ。

#創作大賞2023
#エッセイ部門

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