見出し画像

J1リーグ まん太郎アウォーズ 2023

2023年明治安田生命J1リーグはヴィッセル神戸の初優勝で幕を閉じた。
毎年、そしてJリーグに限らずシーズン後に思うのは、優勝チームからは勝ち点差以上の強さを感じるということ。最近では昨年の横浜F・マリノス(2位川崎フロンターレと勝ち点差2)、21-22シーズンのマンチェスター・シティ(2位リヴァプールと勝ち点差1)など。

ビハインドの試合ではあっという間に追いつき、リードしている試合ではなかなか点を取らせない。そんな強さ。1点の差を争うフットボールという競技において、これこそが『強いチーム』と言えるのだろう。

今年のヴィッセル神戸もそういうチームだった。横浜FMに猛追されながらもラスト5試合を無敗で纏め上げた勝負強さはチャンピオンに成るべくして成るチームの証明。且つ、シーズンを通して連敗が0。つまり、負けられない試合に負けないという集中力の勝利だ。それを生んだ選手のメンタリティと、それを導いた指揮官の手腕には感服する。

「良い選手が多いから強いんでしょ」なんていう言葉で片付けてはいけない。だったら、昨年13位だった説明が付かない。

一方、今年も魅力的なフットボールを魅せてくれた横浜F・マリノスも限りなく連覇に肉薄した。第30節~第31節は怪我人を多く出し、ACLとの兼ね合いもある苦しいチーム状況ながらも圧巻の3連勝。地力の高さと、優勝争いへの慣れを感じさせた。

そんな激闘のシーズンからMVP・ベストイレブンを選出。あくまでも予想では無いので、個人的な主観が入りまくっているのは悪しからず。
選んだタイミングも、本家に合わせて第33節終了時点です。


MVP

大迫勇也(ヴィッセル神戸)


2023年J1リーグ マイベストイレブン


GK 西川周作(浦和レッズ)

経験に裏付けされたパフォーマンスで鉄壁の守備陣を形成。西川がトッププレイヤーである所以は、とにかくミスが少ない事。代名詞でもある足元のボール扱いはさることながら、パンチングやセービングでどこに弾くのかも滅多に間違えない。守備者は”いかに水を溢さないか”と言われるが、今季の西川はまさに守備者としての矜持を体現していた。今季リーグ最少失点の守護神は成長を止めない。

DF 佐々木翔(サンフレッチェ広島)

あれよあれよと今年も上位に付けたサンフレッチェ広島。その原動力は浦和に次ぎリーグ2位の失点の少なさを記録したディフェンス陣だ。その中でもキャプテンとして最終ラインを守り抜いた佐々木の存在は大きい。速く、強く、鋭い守備で地上戦・空中戦共に相手に自由を与えず、闘志むき出しにその熱を伝播させた。両足からのフィードも正確で、特に縦へ差し込むパスでチームの推進力を高めた。身体能力に堅実さも加わった34歳は衰えを知らない。

DF 本多勇喜(ヴィッセル神戸)

菊池流帆、マテウス・トゥーレル、山川哲史とセンターバックにトラブルが続出した神戸においてシーズンを通してフル稼働し最終ラインを守り抜いた。持ち前の身体能力を活かした対人守備は見事で、ボックス内の粘り強い守備でJ屈指のアタッカー陣を完封。身長の低さを感じさせない熱い守備は何度もチームを救った。左足からのフィードも正確で攻撃陣に良質なボールを供給。試合に出場しながら徐々に安定感を上げて絶対的なポジションを確立し、優勝の影の立役者となった。

DF 毎熊晟也(セレッソ大阪)

J1挑戦2年目の今季、国内No1右サイドバックの座に正式に就いたと表現して差支えないだろう。サイドバックにとって必須項目の身体能力は去ることながら、どのポジションを取っても技術的に高水準のプレーを見せる彼のスタイルは国内レベルでは際立っていた。今シーズンは得点やアシストで特別な数字を残した訳では無いが、スタジアムで感じるその存在感は一層大きくなっている。日本代表にも定着した大器を、Jの舞台で観られたのは今年が最後だったかもしれない。

DF 酒井高徳(ヴィッセル神戸)

彼の経験、そして能力が遺憾なく発揮されたシーズンだった。前述の通り、今季の神戸には中心選手の離脱が多く、決して順風満帆のシーズンとはいえなかった。そんな中、左右のサイドバックはもちろん、センターバック、終盤ではボランチとフレキシブル且つハイクオリティのパフォーマンスで決壊の恐れのあるチーム状況を支えた。本職のサイドバックでの運動量と強度も近年では最高レベルで、年齢を感じさせないエネルギーでチームに力を与えてくれた。

MF 喜田拓也(横浜F・マリノス)

Jリーグ屈指の中盤のスカッドを誇る横浜FMの中では、比較的地味な印象だった主将だが、今年の存在感は絶大なものだった。今季の横浜FMはディフェンス陣に怪我人が続出。昨年MVPの岩田智輝が欧州移籍した事も影響し、肝とも言える後方からの支配力が昨年に比べて鳴りを潜めた。そんな中キャプテンとして中盤の底で常に気を吐き、汚いプレーも厭わずにチームを盛り立てた。最終盤では角田や永戸の怪我により、センターバック・サイドバックとしてもピッチに立ち、不安定な状況を瀬戸際で持ち直した。

MF 山口蛍(ヴィッセル神戸)

大躍進のヴィッセル神戸の強さの秘訣は連動した前線からの守備である。それ故に中盤の選手のコンディション維持はとても重要で、中盤の核を担っていた齋藤未月の夏の離脱は大きな影を落とした。そんな中、神戸の中盤を支えたのは間違いなく山口蛍だった。圧倒的な運動量で常に正確な立ち位置を取りながら、第1節~第30節までフル出場という鉄人ぶり。絢爛豪華なアタッカー陣を活かすため黒子役として躍動した。アンドレス・イニエスタからキャプテンマークを受け継いだ彼の涙は、今シーズンのベストモーメント。

MF 紺野和也(アビスパ福岡)

堅守のイメージを脱却し、今シーズン躍進を遂げたアビスパ福岡のゲームチェンジャー。今シーズンから加入すると新システムのシャドーでブレイク。元々得意としていたカットインからの左足シュートはもちろん、裏抜けで深さを取ってのチャンスメイク、前線からの積極的なプレスと、アジリティとスピードを活かして相手守備陣を苦しめ続けた。個人の特徴とチームのカラーが完全にマッチし、過去最高順位・初タイトルの象徴的な選手となった。

FW アンデルソン・ロペス(横浜F・マリノス)

チームとしては悔しいシーズンとなったが、彼をこのリストから外す訳にはいかない。浅いエリアでの献身的なポストプレーからボックスに顔を出し、多少不格好でもゴールネットを揺らす『”9番”のお手本』。第9節神戸戦や第28節鹿島戦のように、自らの複数得点でゲームを決める活躍でライバルチームに悪夢を見せた。Jリーグではもはや希少種となった得点に特化したフォワードで、PK以外での得点数ではリーグ1位という結果がその圧倒的な決定力を物語っている。

FW 武藤嘉紀(ヴィッセル神戸)

ヴィッセル神戸の優勝により、Jリーグのこれからのトレンドにもなり得るアグレッシブなハードワーク。それを最も表現したプレーヤーは彼だろう。全試合出場を記録しながら、右に左に中央、どのポジションでも異次元の運動量とスプリント数を記録してチームのエネルギー源に。驚くことにシーズン中に肺炎を患いながら試合に出場していたらしい圧倒的タフネス。献身的かつ数字もしっかり残しているのが見事で、リーグで唯一、得点・アシスト共に二桁をマークした。”相棒の10番”を除けば、彼がMVPだった。

FW 大迫勇也(ヴィッセル神戸)

100人に聞けば100人が大迫勇也をベストイレブン・MVPに選出する、それ程に今季のJ1リーグは彼が中心のシーズンだった。日本サッカー史上最も優れたポストワークで常にチームの攻撃の起点となり、ボックス内での七色のフィニッシュワークで得点王に輝くなど、その活躍はさながらハリー・ケインやアーリング・ハーランドのそれ。近年のJリーグでは長く欧州やW杯で活躍した選手たちが凱旋する例が増えてきたが、その中でも頭一つ抜けた存在感でJリーグの未来をも創ってくれたといえる。大迫勇也がJリーグに深い足跡を残してくれた事は日本人サッカーファンとして喜ばしい限りだ。



やはり今季はヴィッセル神戸の選手が多くなりますね。
最終節を残した時点の2位との勝ち点差は4なのですが、それ以上に各プレイヤーの存在感が際立っていました。戦術的に、コンビネーションよりも各個人の強度に比重が置かれたチームだったというのも、その原因の一端かもしれません。

選んだ選手の中でも、大迫、武藤、A・ロペス、山口、酒井高、毎熊は本家でも確定なのではないかと思っています。
その他の選手は、最終的に順位を上げ上位を守ったサンフレッチェ広島、今季No1のダークホースであり台風の目だったアビスパ福岡から最低1人は選びたかったので佐々木、紺野を。
ゴールキーパーは「派手さ3:堅実さ7」くらいのバランスが理想という持論があるので西川を。
横浜FMは強いけれどもスカッドが揃わずヤキモキするような時期が多く、その期間を心身ともに支えた姿が印象的な喜田を。
小柄ながら激しい守備が南米のディフェンダーの様で個人的に好みだった本多を選ばせてもらいました。

他に候補として思い浮かぶのは、前川黛也、山川哲史、初瀬亮(神戸)、エドゥアルド、エウベル(横浜FM)、大迫敬介(広島)、A・ショルツ、M・ホイブラーテン(浦和)、K・ユンカー(名古屋)、山岸祐也(福岡)、脇坂泰人(川崎)辺りでしょうか。

しかまあ、今季はベテラン勢がそのメンタリティを礎に最高のパフォーマンスを見せてくれました。世代的には1つ前のワールドカップの世代。
神戸の大迫勇也、武藤嘉紀、酒井高徳、山口蛍、広島の佐々木翔、浦和の西川周作、C大阪の香川真司、FC東京の長友佑都、湘南の阿部浩之、そして怪我を乗り越えた横浜FMの宮市亮。海外トップリーグで培った技術、長年Jリーグのトップを走り続けた経験、それらがハイレベルに競演しました。

特に、海外で長年成功を収めた選手がキャリアの最後に国内に戻りタイトルを争う姿というのはこの先のJリーグの未来といえます。現役日本代表のほとんどが海外でプレーするようになった現状において、実力、集客、人気その全ての要素において目指さなければいけないリーグの姿だと私は思います。

それくらい今年のヴィッセル神戸の戦いは魅力的だった。スター選手をスタジアムで観る事以上の喜びは無いですから。

という事で、今年も熱いシーズンをありがとうございました。

ヴィッセル神戸、初優勝おめでとうございます!

サポートをしてくれたら、そのお金で僕はビールを沢山飲みます!