Jリーグの一大派閥・流通経済大学

 昨今のJリーグクラブにはチーム力底上げの為に非常に重要な要素がある。それは大卒選手の活躍。
 フィジカル的にも戦術的にもレベルの上がっているJリーグでは、高卒の選手が即戦力として起用されるのは中々難しくなってきており、新人の中で大卒選手が機能すれば、それがそのまま総合力の向上に繋がるという訳だ。

 東京五輪世代では、川崎フロンターレの三苫薫(筑波大)、旗手玲央(順天堂大学)、サガン鳥栖の林大地(大阪体育大学)、鹿島アントラーズの上田綺世(法政大中退)らが、大学からプロ入り後即結果を出し、世界の舞台へと羽ばたいていった。

 このように大学サッカーが重要なスカウトの場となっている近年のJリーグにおいて、猛威を奮っているある勢力がある。


 流通経済大学だ。


 流通経済大学は1965年の創部以来県リーグで低迷を続けていたが、1998年中野雄二監督の就任をきっかけに関東リーグの常連校となり、現在では多数のJリーガーを生み出す関東屈指の強豪となった。
 2020年の春からは現・京都サンガFCの曺貴裁監督がコーチに就任し、戦術面の細かい指導にも当たった。

 では、ここ10年で流通経済大学からプロ入りした主な選手を挙げよう。

2014年卒 江坂任(蔚山現代FC)
2015年卒 湯澤聖人(アビスパ福岡)
      山岸祐也(アビスパ福岡)
2016年卒 塚川孝輝(FC東京)
2017年卒 守田英正(スポルティングCP/ポルトガル)
      今津佑太(V・ファーレン長崎)
      ジャーメイン良(ジュビロ磐田)
2018年卒 小池裕太(横浜F・マリノス)
2019年卒 オビ・パウエル・オビンナ(横浜F・マリノス)
2020年卒 アピアタウィア久(京都サンガFC)
      伊藤敦樹(浦和レッズ)
2021年卒 満田誠(サンフレッチェ広島)
     佐々木旭(川崎フロンターレ)
     佐藤響(京都サンガFC)
     安居海渡(浦和レッズ)
     菊地泰智(サガン鳥栖)
     仙波大志(ファジアーノ岡山)
     宮本優太(KMSKダインゼ)


 Jリーグのトップレベルもしくは海外クラブでこれだけの選手が活躍しているだけでも凄い事なのだが、特筆すべきは2021年。この年はここに記した選手を併せて同学年から実に12人のJリーガーを輩出するという脅威的な数字を残した。

 今回はそんな流通経済大学OBのプレイヤーの中から、現在のJ1クラブで大きな存在感を放つ選手を紹介したい。



伊藤敦樹 浦和レッズ MF

 大学時代は1年時よりU-19全日本大学選抜に選出されチームの中心を担っていた。日本人MFとしては大型な185cm78kgの体躯を持ちながら、ボックストゥボックスで走り切る運動量も併せ持つ逸材。豪快な攻め上がりからのフィニッシュ、体格を活かした強度の高いタックルはどちらも迫力満点で、イメージで言うと”和製ベリンガム”の様な選手。ボランチとしては日本人的ではないダイナミックさに将来の期待が高まる。
 浦和レッズのアジア制覇に大きく貢献した事もあり、欧州クラブへのステップアップは間近かもしれない。


佐藤響 京都サンガFC DF/MF

 大学時代にも教えを請けた曺貴裁監督に才能を見い出され、MF登録ながら左サイドバックのポジションで存在感を発揮している。小柄だからこその機動力と、絶え間なく左サイドを上下する運動量はもちろん、攻撃時には積極的にスペースに飛び込み自らもシュートを放つ。京都サンガらしいガツガツと前に出ていけるサイドバックだ。
 一対一の守備でもスピードに裏打ちされた粘り強さがある。ここからDFとして総合的な”強さ”を身に付ければ、世代交代が求められている日本代表左サイドバックの座に立候補する権利は十分。


佐々木旭 川崎フロンターレ DF

 2021年卒組の目玉選手は佐々木旭だった。4年時の関東大学リーグ1部のMVPを獲得し、大学No1サイドバックとして鳴り物入りで前年王者・川崎フロンターレに入団した。初年度となった2022年は21試合に出場し、高い技術とサッカーIQを求められるチームで出番を得たが、今季は登里享平にポジションを奪い返される形になっている。ディフェンスラインの負傷者の多さにより川崎らしい後ろからの繋ぎに陰りが見え、ビルドアップで違いを作れる登里に出番が戻ってきたのだろう。 
 しかし守備の強度の部分、攻撃の推進力では昨年を上回る姿を見せており、攻守に渡って強度ではJ1レベルには至っている印象。ライバルが登里・車屋というハイレベルなポジション争いの為出場機会を得られてはいないが、彼が世代No1のサイドバックであるのは間違いない。前キャプテンから背番号5を引き継いだ今年、川崎のディフェンスリーダーに成長する姿が期待される。

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