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悪夢と手のひらにいのち


インコを飼い始めた。
生活が変わった。

鳥籠を一番良い場所におくために模様替えをする。温度と湿度管理に気を配る。

朝は早起きするようになった。
朝起きてインコの様子を見て、鳥籠の掃除をし、水と餌を新しいものにする。
ついでに部屋全体に掃除機をかけ、空気の交換もする。

いつでもどこでもうんちをするから床をカーペットからビニール製のござにした。拭き掃除で清潔に保てる。荷物を置かなくなった。うんちをするインコは悪くない。物を置いている人間が悪い。

ひと通りの家事が終わったら、インコを抱きながらストレッチをする。

寂しがり屋らしいのでできる限り一緒にいる。
頭の上がお気に入りだったけど、すったもんだの攻防の末、襟足がお気に入りスポットとなった。わたしは襟足にインコを乗せ、勉強している。インコはだいたいうたた寝をしているか、羽繕いをしている。

18:00には鳥籠に戻して、眠る準備をする。
暗くしてケージに布をかけると鳴くのをやめる(インコはみんなそういうわけじゃないと思うけど)。

人間も22:00には消灯する。
明日インコに会えるのを楽しみにして寝る。



夜にみる夢は9割悪夢をみる。毎日、3本くらいみる。9割が悪夢なので3本とも悪夢だ。運が良くて1つくらい良い夢をみる。


夢を夢だと気づくことができないので、夢の中のわたしはいつも絶望している。夢と夢の間で目が覚めたときに、現実と夢がごちゃまぜになって悲しい気持ちになる。この先どうしたら良いのだろうと落ち込んでいる間に、だんだんと目が覚めてきてさっきのは夢だということに気がつく。夢でよかったと思うけど、現実も悪夢みたいなものかもしれない。


悪夢をみた、と言っても、よくある話題の一つであり、他人は重要視しない。
「夢」で起こったことは「現実」ではないからだ。

しかし、悪夢の絶望は現実のわたしが体験した絶望と同じように感じる。感覚に違いはない。

わたしは過去に味わった感情を、夢でも反芻し続けているのだろうか。忘れないように?


悲しい過去も、夢のように夢と割り切って、過去は過去だと忘れたり、割り切れたりすれば良いのか。そうすればいい加減に、悪夢を見るのをやめられるのだろうか。
そもそも、わたしを悩ませるわたしの過去はただの悪夢の一つにしか過ぎないのだろうか。



インコを飼い始めたら悪夢を見なくなるかもしれないと一瞬思ったが、変わらずに悪夢はみる。

悪夢を見ることに変わりはないが、朝インコに会うのを楽しみにして眠るようになった。

夜中何度も悪夢の途中で目を覚ますことに変わりはないけど、朝になったら真っ黄色の生き物に会えることが嬉しい。

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