毎日のように通学で使った地元の駅。
今日も朝から、会社に行く人、学校に行く人、他のどこかへお出かけする人で溢れている。

ほとんどの人にとっての日常がここにあって、今日は、ほとんどの人にとっては何気ない普通の日。

だけど、私にとって今日は、特別な日。

嫁ぐ日。

30年近くいた実家を離れ、
新幹線に乗って、
遠く離れた新居へと、今、向かっている。

誰が気付くだろうか。
私が今、新しい生活の始まりに胸を躍らせると同時に、両親と離れる寂しさと必死に戦っていることを。

母が作ってくれた、
大好きな牛肉の甘辛く煮たおかず。
それを、旅立ち日のお弁当に入れてくれた。

運動会のたびに作ってくれてたな。
やっぱり好きだなぁ。
父が運動会に来れなくても
母は絶対来てくれたなぁ。

父は今どんな気持ちかな。
結婚式のあと、心にぽっかり穴があいたと呟いてた父。いつその穴は埋まるのかなぁ。
そういえば嫁ぐまでの1週間、
毎日早く帰ってきてくれたなぁ。
何も言わないのも父らしいなぁ。

家族の思い出と思いやりに想いを馳せて、
今、新幹線に乗っている。

新生活がワクワクするこの気持ちも、
両親が揃えてくれたまっさらで、可愛い、
お気に入りの家具家電が揃った新居に行けるから。

寂しさまでも、両親が紛らわしてくれている。

最後の最後まで、
両親の愛に包まれて。

今、

新しい生活を、始めようとしている。