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車に乗ってどこまでも

マニュアルで運転免許を取ったが、ペーパードライバーである。マニュアル免許の取得は順調だった。実技の授業第一回目、シュミレーション機械で車の運転をするのだが、女性教官が私の隣の男性に、あんた今からでもいいからオートマに変えたら?と半ば怒りながら教えていたのが忘れられない。この段階で言われているのだから、相当なものであろう。教官に怒られるのではないかという恐怖もあってなのか、私はまずまずの出来で、いやむしろセンスがあるとさえ言われたが、今となってはもしかしたら、あの男性の方が上手に運転出来るかもしれない。

自分で運転するのはおっかなく、やはり運転上手な人の車に優雅に乗っていたい。大学時代、毎日車を使う千葉在住の友人の車で白浜へと行った。朝早く駅で集合してから目的地へと出発することに。彼女の車に乗った途端、マウントレーニア買ったから、とカフェオレを頂いた。私は彼女の気遣いに心打たれた。と同時に、車を運転するべき人であると瞬時に悟ったのである。言わずもがな、快適なドライブだった。私とあと他の2人の友人は、楽しんだだけであった。

父の運転で久しぶりに家族でドライブ、久しぶりの高速道路からの眺め。小さい時はよくいろんな所へ連れて行ってもらったなぁ、と懐かしむ寸前、結局今でもどこか連れてってもらっている。いつまでもおんぶに抱っこである。

免許がせっかくあるんだから運転はした方がいいと思うが、家族は父以外、すぐヒステリーを起こすのでやはり辞めた方が良い。いや、もしかしたら運転をすることで大らかになるのかしら。ああ、そう言えば、あの人もあの人も、大らかで優しい人だなぁ。それを皮切りに、私はまた別のことを考え始めてしまった。

窓から見えるのは、移り変わりの激しい手前の景色と、ゆっくり変わりゆく遠くの景色。何を思うともなく見ているこの時間、狭い車の中で大切な人たちと一緒にいること、実はとてつもなく尊いものだと思った。

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