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ゴッドファーザー

私の家は古い家だ。夜遅くに帰った時、パッと居間の電気を点けたら、なんとネズミのしっぽがチラリと見えて、夜中に絶句したことがあった。母が夕飯を用意してくれていたのだが、大好きな枝豆がテーブルに散らばっており、ネズミに食べられていた。あろうことか、奴らは人間と同じように皮は残す。それがまた何とも憎たらしくて腹立たしい。こちとら仕事で疲れてお腹も空かせて帰ってきたというのに、なんという仕打ち。

朝起きて、父にその話をしたら、なんだよ、ビールでも出してやれよ、あはは!と笑われた。たしかにそうだな、と思った。

父はそういう諦めにも似た悟りというか、私が細かいことでグチグチ言っていると、ひとしきり話を聞いて、ま、もう終わったことだし!と言った具合で、明るく締める。それを聞くと私はいつも、そうだな、と納得する。

納得する、というのは人生において最も、と言っても過言ではないほどに、大切な気持ちの整理だと思う。それを自分の中だけで処理することが私にはとても難しいので、心の内を親しい友人や家族に話して、気持ちの落としどころを見つける。

その中でもとりわけ父は、人の話を聞いてるのか聞いてないのか、いい加減な返答のような的を射ているような、そういう深刻じゃない感じが私としても気が楽。

私は何か宗教を信仰しているわけではないが、もしかしたら彼を神として崇めているのかもしれない。

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