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みずもの

みずもの商売だからねえーって、ピアノの先生を商売としている友達が、ビールを飲みながら言っていた。それで、その言葉を聞いたことがなかったけど、なるほどわかりやすいと思った。その言葉のチョイスが、昭和最後の宿命かもしれない。

私は水を触っているのが好きで、子どもの時、洗面所に水を溜めてただ水を触るっていうことをしていた。意味がわからないが、楽しかったのでよくそれで遊んでた。ビー玉とかも入れてた。とにかく透明なものが好きなんだと思う。暗室が好きなのは、水を触れるからでもある。

2015 / Jesse Ruins

これはジェシールインズという大好きなユニットの最後のEP、eveのジャケット撮影時に撮った傑作である。これは私のキャリアの中でも、最も輝かしいものの一つである。青い液体らしきものは私が作ったのであるが、深夜2時に風呂場で、トイレに起きたばあさんに不審がられながら作った神聖なものである。ばあさんはトイレが近いので、夜中に5回は起きている。さて、青い水が良いということだったのだが、水だと現場が汚れまくるし、ムービーも同時に撮りたいとの要望があったので、定常光というところも譲れなかったのである。だから液体の動きを遅くすることにした。これは本当に苦労したものなのである。けれども大満足だった。

なによりこの青い液体がうまく作れたことに私は一人で感激した。

みずもの商売はやはり性に合っているのでは、と思うこの頃である。とても不安定なものだけど、不安定なものは変幻自在に変わることが出来る。私は水のように変幻自在に、いろんなところに侵入しながら、東京でのサバイバルを、まあ息切れはしているが、なんやかんやで謳歌しているところである。

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