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カナダ当局、穀物メジャーの買収計画に「重大な懸念」

カナダ競争局は4月23日、米国の大手穀物商社ブンゲによるオランダの穀物商社バイテラの買収計画について、「重大な競争上の懸念がある」との見解を発表しました。両社はもともとカナダで大きなシェアを占めているため、買収によってさらに巨大化すれば、穀物の調達や菜種油の販売で競争を阻害することになりかねないと指摘しました。買収が実現すれば、穀物メジャーによる寡占化が一段と進むことになりますが、一部資産の切り離しなどを迫られる可能性が出てきました。
 
ブンゲは2023年6月、82億ドル(約1.2兆円)でバイテラを買収すると発表しました。農業分野の合併・買収(M&A)では過去最大級の規模と報じられています。ロイター通信によると、買収後の企業価値は債務を含め340億ドルとなり、ライバルの米アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)や米カーギルに匹敵する規模になります。穀物メジャーは、ADMとブンゲ、カーギルにフランスのルイ・ドレフュスを加えた4社の頭文字から「ABCD」として知られます。
 
現地からの報道によると、ブンゲは40カ国以上、バイテラは38カ国で事業展開しており、特にカナダでは重複する事業が多いということです。カナダのほか、米国や南米、欧州連合(EU)、中国など計13の競争当局が買収の審査手続きを進めていますが、今のところカナダ以外から懸念は表明されていません。
 
カナダ競争局は、運輸省に提出した報告書の中で、今回の買収計画について「カナダ国内の農業市場で実質的な反競争的効果をもたらし、ブンゲとバイテラの競合関係が著しく失われる可能性が高い」と結論付けました。具体的には、「カナダ西部の穀物調達市場とカナダ東部のカノーラ油販売市場の競争を阻害する可能性が高い」と指摘しています。
 
報告書を受け取ったカナダ運輸省は6月2日までに、買収計画に関する評価手続きを完了させることになっています。その結果を踏まえ、買収の是非をカナダ政府が最終的に判断するということです。ブンゲは、2024年半ばまでに買収手続きを終えたい考えを示してきました。
 
ブンゲは、カナダ競争局の発表を受けて声明を出し、「見当外れだ」と反論しています。「ブンゲとバイテラは、多くの競争相手が存在する市場で補完的な事業を営んでいる」と指摘した上で、「買収によってカナダに多大な利益をもたらすと確信している」と強調しました。
具体的には、「不安定な世界市場でのサプライチェーン(供給網)の強化」や「農業・食料分野での投資能力の強化によるカナダのリーダーシップ維持」、「数千人のカナダ人の雇用」を挙げました。
 
一方で、「カナダ当局と協力して、多くの情報を提供していく」として、早期の買収認可に期待を表明しました。「規制当局の承認が得られれば、手続きは2024年半ばに終了する見通しだ」と従来のスケジュールを維持しています。ただ、当局から資産の売却などを迫られれば、スケジュールを後ろ倒しにするなど、見直しを迫られる可能性があります。
 
 

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