世界のアグリフード

世界の農業や食料問題の動きをまとめています

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最近の記事

米国がバイオエタノールの混合率を一時的に15%に拡大 恒久化が焦点に

米環境保護局(EPA)は4月19日、トウモロコシを原料とするバイオエタノールのガソリンへの混合率について、夏季に限った一時的な措置として、本来の10%から15%に拡大すると発表しました。トウモロコシの需要拡大策として農業界が要望していたことに対応しました。農業界では、一時的でなく恒久化への期待が強まっており、実現するかどうかが次の焦点となります。 米国では、バイオエタノールは主にトウモロコシを原料に製造されます。バイオエタノールを10%含んだガソリンは「E10」、15%含

    • EU加盟国が環境規制緩和を支持 環境団体は批判

      欧州連合(EU)の加盟国は3月26日、農業・漁業理事会に先立って開かれた農業特別委員会で、欧州委員会が提案していた農業に対する環境規制緩和案への支持を表明しました①②。農家の不満が高まり、域内各地でデモが相次いでいることを受け、共通農業政策(CAP)に基づく直接支払い条件を見直すという内容です。農業団体は「前向きなシグナル」と歓迎する一方、環境団体は批判しており、論議はまだ続きそうです。 ベルギーのダヴィッド・クラランバル副首相兼農業相は声明で「われわれは農家の声に耳を傾け

      • バイエル、旧モンサントの分離を先送り 4つの課題の対応を優先

        ドイツ・バイエルのビル・アンダーソン最高経営責任者(CEO)は3月5日の決算発表会で、旧米モンサントの分離を含む組織改革について、「答えは今ではない」と述べ、結論を2年以上先送りする考えを表明しました①②。緊急に対応しなければならない4課題として、①医薬品開発の強化②米国のラウンドアップ訴訟への対応③負債の削減④官僚主義の打破ーを挙げ、まずはこれらの対策を優先させるということです。一方で、組織改革について「決して行わないというわけではなく、誤解しないでほしい」とも強調し、将来

        • WTO閣僚会議、成果なく終了 漁業補助金や農業では文書採択されず

          世界貿易機関(WTO)の第13回閣僚会議が2月26日~3月2日にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開かれ、ほとんど成果がないまま終了しました①。優先順位が高かった漁業補助金や農業分野では、何の合意も得られず、成果文書すら採択されないという惨憺たる結果となりました。全世界から約4000人が集まり、多くのコストが投入されただけに、世界的な税金の無駄遣いとの批判が強まりそうです。 閣僚会議はWTOの最高意思決定機関で、ほぼ2年に1回開かれます。米国からはタイ通商代表部(US

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          オーストラリアとニュージーランドがGMバナナを世界で初承認 パナマ病に抵抗性

          オーストラリア・ニュージーランド食品規制機関(FSANZ)は2月16日、「パナマ病」への抵抗性を高めた遺伝子組み換え(GM)バナナについて、「既存のバナナと同等の安全性と栄養価がある」として、食品としての流通を承認したと両国政府に通知しました①。GMバナナの承認は世界で初めてです。 パナマ病は、世界中のバナナ生産に深刻な被害を及ぼしているとされ、このGMバナナへの期待が高まりそうです。ただ、開発した豪州のクイーンズランド工科大学(QUT)は「現時点では商業化の計画はない」

          オーストラリアとニュージーランドがGMバナナを世界で初承認 パナマ病に抵抗性

          米国農家が190万戸に減少 平均年齢は58歳に上昇

          米農務省(USDA)は2月13日、2022年の農業センサスを公表しました①②③。農家数は190万0487戸と、2017年の前回調査に比べ6.9%減る一方、1農家当たりの農地面積は5.0%増の463エーカー(1エーカー=約0.4ヘクタール)となりました。農家の平均年齢は58.1歳と、5年間で0.6歳上昇しました。農家の減少と規模拡大、高齢化は、日本を含め多くの国で共通しています。米国の農業関係者からは、農家の減少に対する懸念が多く表明されています。 ビルサック農務長官は声明

          米国農家が190万戸に減少 平均年齢は58歳に上昇

          世界の有機農業面積は26%増の9638万ヘクタール 日本は92位に後退

          スイスの有機農業研究機関FiBLとドイツのIFOAMが2月13日に発表した年次報告書によると、2022年の世界の有機農業栽培面積は前年比26.6%増の9637万6196ヘクタールとなり、過去最高を更新しました。オセアニアや欧州、南米、北米、アジア、アフリカの全ての大陸で増えており、有機農業が世界的に拡大し続けていることが示されました。日本は27.7%増の1万5319ヘクタールと大きく伸びましたが、ネパールやモロッコなどに抜かれ、前年の89位から92位に後退しました。 首位オ

          世界の有機農業面積は26%増の9638万ヘクタール 日本は92位に後退

          米裁判所が除草剤ジカンバの認可取り消し バイエルにまた打撃

          米アリゾナ州の連邦地裁は2月6日、旧米モンサント(現ドイツ・バイエル)などが販売する除草剤ジカンバについて、米環境保護局(EPA)が承認したのは違法だとして、取り消す決定を下しました①②③④。この除草剤は危険だとする非営利組織(NPO)の主張を認めました。グリホサート問題で揺れるバイエルにとっては、新たな打撃となりました。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「バイエルにとって新たな不安材料」と報じています。 裁判所の決定を受け、取り消しを求めていたNPOの食品

          米裁判所が除草剤ジカンバの認可取り消し バイエルにまた打撃

          EUが農薬半減目標を撤回 農業戦略を見直し

          フォンデアライエン欧州委員長は2月6日、2030年までに農薬使用量を50%減らす目標を撤回すると表明しました。6月の欧州議会選挙を前に、環境規制の強化に対する農家の抗議行動が欧州各地で激化したことを受け、軌道修正を迫られました。これにより、欧州連合(EU)の農業・食料政策を定めた「ファーム・トゥー・フォーク(農場から食卓まで、F2F)戦略」は見直されることになりました。 フォンデアライエン氏は、フランスのストラスブール開かれた欧州議会の本会議で演説し、2030年までに農薬

          EUが農薬半減目標を撤回 農業戦略を見直し

          経済学者らが食料システムの変革を提言 「環境や健康に悪影響多く、持続不可能」

          世界の経済学者らでつくる「食料システム経済委員会」(FSEC)は1月29日、食料システムの変革を求める報告書を発表しました①②。現在の食料システムは、地球環境や人間の健康に多くの悪影響を及ぼしており、このままでは持続不可能だとして、世界全体で年2000億~5000億ドル(1ドル=148円換算で29.6兆~74兆円)を投じて変革に取り組むよう提言しました。この結果、2050年までに食料価格は30%程度上昇するとして、持続可能な食料システムの実現のためには、消費者の負担増加も避け

          経済学者らが食料システムの変革を提言 「環境や健康に悪影響多く、持続不可能」

          EUが環境規制を緩和、ウクライナ農産物の輸入制限も デモ拡大で軌道修正

          欧州連合(EU)の欧州委員会は1月31日、農家に対する環境規制を1年間緩和するとともに、ウクライナ産農産物の輸入制限を行うと発表しました①②③。厳しい環境規制や同国産農産物の輸入急増に対し、農家の不満が募り、域内でデモが拡大しているのを受け、軌道修正を迫られました。 「EU農家の保護」と「環境の保全」、さらには「EU農家の保護」と「ウクライナへの支援」という両立が難しい2つの課題を突き付けられ、苦肉の策として何とかひねり出した格好です。しかし、農業団体からは「不十分」と

          EUが環境規制を緩和、ウクライナ農産物の輸入制限も デモ拡大で軌道修正

          EUが農家との「戦略対話」をスタート 農業戦略の見直しが焦点

          欧州連合(EU)の欧州委員会は1月25日、農業関係者との「戦略対話」をスタートさせました①②③。EU当局による環境規制の強化に対し、農家の反発が増していることを踏まえ、食料・農業システムの将来ビジョンを改めて検討するのが狙いです。2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す「欧州グリーンディール」や、それに基づく「ファーム・トゥー・フォーク(農場から食卓まで、F2F)戦略」の見直しが焦点となります。欧州委は「対話を増やし、分裂を減らさなければならない」と訴えています。

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          ナイジェリアがGMトウモロコシを解禁 干ばつ・害虫対策に期待

          ナイジェリア政府は2024年1月11日、干ばつ耐性や害虫抵抗性を高めた遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ4品種の商業栽培を承認しました①②③。ナイジェリアで解禁されたGM作物は、綿花とササゲに次いで3作物目となります。主要作物であるトウモロコシについては、ケニアが2022年10月にGM作物を解禁しました。気候変動や異常気象による不作や飢餓に悩むサハラ以南のアフリカでは、食料安全保障を強化するための新技術として、GM作物への期待が高まってきました。 アフリカ農業技術財団(

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          2023年の世界食料価格は4年ぶり下落 価格高騰に歯止め

          国連食糧農業機関(FAO)が1月5日発表した世界の食料価格指数(2014~16年=100)は前年比19.7ポイント下落の124.0となりました。前年を下回るのは、2019年以来4年ぶりです。新型コロナウイルスの拡大やロシアのウクライナ侵攻を機に、食料供給の混乱から食料価格は世界的に高騰しましたが、歯止めが掛かりました。ただ、歴史的にはなお高い水準が続いています。 指数を構成する5項目をみると、コメや小麦、トウモロコシといった穀物が23.8ポイント下落の130.9、大豆など植

          2023年の世界食料価格は4年ぶり下落 価格高騰に歯止め

          ドイツ農家が大規模デモ 農業支援の縮小に猛反発

          ドイツの農家が農業支援策の縮小に猛反発し、2023年末から大規模な抗議行動を続けています。2024年1月15日には首都ベルリンのブランデンブルク門で1万人規模のデモを行いました①②。ドイツ政府は発端となった農業支援策の縮小を見直し、譲歩する姿勢を示しましたが、農家は「不十分だ」と主張しています。環境規制の強化や農業資材価格の高騰など、農家を取り巻く状況は厳しくなっており、これまでにたまった不満が一気に爆発した格好です。極右政党がデモをあおっているとの指摘も出ています。 1

          ドイツ農家が大規模デモ 農業支援の縮小に猛反発

          英国が農家支援策を拡充 利用低迷でてこ入れ

          英国のスティーブ・バークレー環境・食料・農村地域相は2024年1月4日、農業支援策「環境土地管理スキーム(ELMS)」を大幅に拡充すると表明しました①②。欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を受け、共通農業政策(CAP)に代わる新たな支援策として2028年に完全移行する計画ですが、農家の評判が良くなく、申請して利用する人が低迷しており、てこ入れを迫られました。補助金の増額や申請手続きの簡素化などを打ち出しました。 バークレー氏は同日のオックスフォード農業会議で講演

          英国が農家支援策を拡充 利用低迷でてこ入れ