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米国農家が190万戸に減少 平均年齢は58歳に上昇

米農務省(USDA)は2月13日、2022年の農業センサスを公表しました。農家数は190万0487戸と、2017年の前回調査に比べ6.9%減る一方、1農家当たりの農地面積は5.0%増の463エーカー(1エーカー=約0.4ヘクタール)となりました。農家の平均年齢は58.1歳と、5年間で0.6歳上昇しました。農家の減少と規模拡大、高齢化は、日本を含め多くの国で共通しています。米国の農業関係者からは、農家の減少に対する懸念が多く表明されています。
 
ビルサック農務長官は声明で「貿易戦争やパンデミック、大規模化しなければ退出を促すといった政策により、今世紀の農業センサスで最も多くの人々がこの5年間で農業から退場した」と指摘しました。その上で、「米国、特に農村社会は、大規模化して農家が減ることを容認できない」と強調しています。
 
さらに、ビルサック長官は「この報告書は、農業政策に携わったり、米国の農村社会の維持に関心を持っていたりする全ての人々にとって警鐘を鳴らすものだ」と危機感を表明しました。その上で、「現状を維持して農業部門をさらに縮小させるか、より多くの農家により多くのチャンスをもたらす新たなモデルを選ぶか、重要な時期に来ている」と訴えています。農家への支援を強化して、農家を増やすことによって米国の農業を強化すべきだということのようです。
 
農業センサスは日本と同様、5年ごとに行われています。1840年に始まり、180年以上の歴史があります。当初は10年ごとでしたが、1920年から5年ごとに行われて、2022年の調査は30回目となりました。1974年以降、農家(farm)は、「年1000ドル以上の農産物を生産したり販売したりしている場所」と定義されています。
 
米国の農家数は、2007年に直近のピークである220万戸に増えた後、右肩下がりで減り続けています。米メディアによると、2022年の190万戸という水準は、1850年以来、172年ぶりの低い水準となります。農地面積も右肩下がりで減少しており、2022年は5年前に比べ2.2%減の8億8010万0848エーカーとなりました。

2022年の農家の人数は337万人で、このうち男性が215万人、女性が122万人となりました。1農家の平均は約1.8人となります。全農家の40%に相当する76.7万戸は1人で経営しており、2人の農家が89.7万戸、3人が13.2万戸、4人が7.1万戸、5人以上が3.4万戸となっています。農場の平均面積は約185ヘクタールと広大ですが、ほとんどが1~2人という少ない人数で運営しており、大半が家族農家であることが分かります。

米国でも農家の高齢化が進んでおり、平均年齢は2002年の53,2歳から2022年は58.1歳と、20年間でほぼ5歳上昇しました。一方で、35歳以下の若者が経営する農家は22万1233戸で、全体の12%弱に過ぎません。しかし、1農家当たりの平均生産額は36万3592ドルと、全体平均の28万5762ドルを27%も上回りました。若者は生産性の高い農業を実行しているようです。

農業生産額を州別に見ると、トップは野菜や果物が多いカリフォルニア(590億ドル)、2位は穀倉地帯コーンベルトのアイオワ(439億ドル)、3位が肉牛が多いテキサス(322億ドル)となりました。品目別では、穀物・油実はアイオワが最も多く、豚もアイオワ、果物はカリフォルニア、野菜もカリフォルニア、乳製品もカリフォルニア、綿花はテキサス、牛もテキサス、鶏肉・鶏卵はノースカロライナ、馬はケンタッキー、養殖はワシントンなどとなっています。 

米国最大の農業団体ファーム・ビューロは、農業センサスの結果を受け、「農家の戸数と農地面積がともに大幅に減少していることを懸念する」と表明しました。「われわれが何年も警告してきたことがはっきりした」とした上で、「規制強化や供給コストの上昇、労働力不足、異常気象により、多くの農家が経済的に持続可能でないほど圧迫されている」として、政府や議会がこうした課題にきちんと対処してこなかったことにより、多くの農家が廃業に追い込まれたとの認識を示しています。 

ファーム・ビューロは「このような課題に対処する新農業法案を成立することが、新規就農者を惹きつけ、次世代に農業を引き継ぐ環境作りを支援する最善の方法だ」と強調し、難航している農業法案の審議を急ぐよう求めています。

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