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フィリピン裁判所がゴールデンライスの増殖禁じる 推進派に打撃

フィリピンの控訴裁判所は4月17日、遺伝子組み換え(GM)によって通常のコメよりベータカロテンの含有量を増やした「ゴールデンライス」について、健康や環境への懸念があるとして、商業増殖を禁じる決定を下しました。フィリピン当局は安全性に問題はないとして世界で初めて商業栽培を認可しましたが、反対派が禁止を求めて提訴していました。GM食品をめぐる対立が改めて浮き彫りとなり、推進派にとっては大きな打撃となります。 (写真はグリーンピースのウェブサイトより)

ゴールデンライスは、フィリピンをはじめ途上国で問題となっているビタミンA欠乏症(VAD)対策として、国際稲研究所(IRRI)とフィリピン農務省コメ研究所(PhilRice)が共同開発したGMコメです。 ビタミンAが不足すると、夜にものがよく見えない夜盲症になり、世界で約1億9000万人の子供がこの病気に苦しんでいるということです。

ベータカロテンは体内に摂取するとビタミンAに変わるため、ゴールデンライスを食べればVADを予防できるということです。 2021年7月にフィリピン当局が商業栽培を認め、2022年に生産が始まっていました。これに対し、グリーンピースなどは「安全性の評価が不十分だ」として、当局の決定を取り消すよう求め、提訴していました。 

フィリピンの控訴裁判所は、「ゴールデンライスのリスクや効果に対する科学的見解の対立や不確実性により、人々の福祉や環境にとって深刻な脅威となる可能性がある」と指摘しました。その上で、安全性やすべての法的要件を順守している証拠を政府機関が提出するまで、商業増殖は認められないとの判断を示しました。

 ゴールデンライスのメリットやデメリットについてまだ論争が続いているだけに、白黒をはっきりさせる証拠を政府は出せということのようです。予防原則を適用し、GM作物に対して慎重な判断を示したと言えます。 

PhilRiceは声明で、商業増殖の認可が取り消されたと説明した上で、「控訴裁判所の決定の内容を精査し、対応を検討する」と表明しました。同時に、「フィリピンのほか、オーストラリアやニュージーランド、カナダ、米国でも食品安全性の承認を得ている」として、安全性を改めて強調しています。

 一方、グリーンピースも声明を出し、「何十年もGM作物に反対してきたフィリピンの農家や国民にとって、記念すべき勝利だ」とアピールしました。その上で、「重要なことは、裁判所の決定が予防原則を支持し、安全性に関する立証責任を被告側に負わせたことだ。フィリピンの人々や環境、農業にとってGM作物が最善だということを、関係企業や関係機関はまだ示していない」と指摘しました。

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