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『RISOrt Week Test 1』中間報告

 『RISOrt Week Test 1』中間報告、と堅く書いてみたけれど、まぁ、そんな硬い話じゃない。というか、日々、とても楽しい。なんだろ、この楽しさは。ずっとイベントってのを打っていなかったからなのか、それとも人と会えるから、なのか。もしくは、自分が関わってきたことをとりあえずひとまとめできたことへの喜びなのか?

 急に書いても分からないので、少し説明。先週の木曜日(8/20)から今週の日曜日(8/30)まで、約10日間にわたって、京都は出町柳のトランスポップギャラリーにて、自分がこの1年、いや、東京のころから含めて数年関わってきたり印刷を手掛けた作品の数々を展示・販売している。「個展」というのは少し違う。だって、自分が作ったり書いたりしたわけじゃない。だけど、やっぱり、この数年、リソグラフという機械と向き合って、自分がやってきたとりあえずの報告書、のようなもの、と思っていただければこれ幸いです。

 この展示を企画・協力してくれたのは、もう20年来の友人でもあり、信頼できるコラボレーターでもあるトランスポップ山田さん。自分が『map』という雑誌を福田教雄と共に始めたころ、カクテルズやデイム・ダーシーといったアーテイストを仲介してくれたのが、山田さんと峯岸さんのプレスポップというチームだった。歳は僕よりも少し下になるのか、ただ、お互いに「なんとなくインディペンデントな立ち位置で、インディペンデントな音楽やアートを取り扱う」ということで、この20年、ずっと付かず離れず、つながり続け、ずっと信頼し続けていた人たちでもある。そして、昨年8月、自分が京都に戻ってきて「リソグラフスタジオを始めるんですよー」と最初に伝えに行ったら、ちょうど同じタイミングで、決して広いとは言えないギャラリーの奥にVANDERCOOKの500キロはある活版印刷機をちょうど入れていて、「お互いアホやなぁ」と笑いあったもの。アラフィフを迎えつつ、ずっと好きなことやりたいことができている、そんな幸せをお互いにたたえつつ。

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 「ま、近いうちにリソグラフの展示、やりましょうよ!」と山田さんが云ってくれたのは、もちろんお互いに「印刷」、それもアンチコマーシャルな立ち位置で続けていることへの共鳴もある。そしてそれ以上に、京都という場所に久々に戻ってきた自分を少しでも山田さんの人脈につなげていこうとしてくれた結果だと思っています。ホントにありがと。

 これまで自分は、音楽イベントや作品のリリースパーティみたいなものはいくつか手掛けてきたものの、よくよく考えてみれば「個展」というような類のものは一度もしたことがない。何を準備すればいいのか? 何をすべきなのか? いつまでにやらなくちゃならないのか? そんなこと自体も分からぬまま、ときはどんどん過ぎていく。と、いう以前に、やることが本当に決まったのは、一月前を切ったころだったので、もう突貫作業。元々、物事の準備をしたり整理をしたりすることができない自分だけに加え、溜まりに溜まった仕事があったわけで、本当にできるんか、と思ったわけですが、古くからの友人たちに協力、後押しをしてもらって、なんとか開催にこぎつけられたのでした。ホント、ありがと。多謝!

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 そんなこんなでスタートしたRISOrt Week、内容的に、ぱっと見では、「いろんな作品が飾ってるなー」って風に思われるだけかもしれないです。でも、質問していただければ、ひとつひとつ、どのように印刷しているか、それぞれに工夫があり、新たな「技術的進化」があったりします。リソグラフ印刷をはじめて5年、ようやく自分にとって思うように印刷する術と限界と、それを越える可能性が見えてきたような気がします。ひとつだけ云ってしまえば、「ただ刷るだけでは、魂が入らない」っていうのがわかりました。仕事としてやるにはそれでも十分。でも、「作品」として仕上げるためには、こんなデジタル機器でも「刷り師」としての技術とノウハウがちゃんとあるんだな、と思うのです。

 そんな技術的ノウハウやティップスを自家薬籠中のものとするのは簡単、でも、それをこの先はオープンソースにしていきたいと思っております。あまり言いたくないのですが、この国全体の特徴として、いつも「技術」を必要以上にスゲーもののように奉って、それを「秘術」であるかのように隠すことで、利益を得ようとするのが本当に嫌い。まず、門戸は広くすることで、技術もレベルもどんどん上がっていくのに、と何度思ったことか。例えば、自分がベジ料理をしているときも、マクロビオティックのテクニックや調理法を大したもんであるかのように扱う、あの感じが本当に気持ち悪かったのです。そんな基本的なものなど誰だってできる。で、その誰だってできる上で、オリジナルを追求したり、それぞれのやり方を見つけて切磋琢磨するほうが、どれだけ裾野が広がるのか、とずっと思ってきました。その先の「簡単に真似できない修練の技術」で戦えばいいのに、と。

 そして、リソグラフを使う上でも、リソグラフのリペアマンの方も含めて、テクニックや情報をオープンソースにすることはなかなかにない。何よりも細かな変更を行うテストモードに入ることすら本来は許していない。ただ、自分は分解し、壊し(実際致命的なことを本体2回、ドラム2回やってます)、その反省も含めて、ようやく使いこなすことができるようになったと思っています。でも、結局、保守管理、メンテナンスを商売とすること(それは決して悪くはない)が前提となってる以上、メーカーは分解や改造を良しとはしないのは当たり前だし、多くの方たちは分解したり、調整を自分でやったりはしない。でも、それでは、たぶん何も面白いことができないんです。この画像をもう少しピッタリと合わせたい、この厚みの紙を通したい(ここだけの話、最近またメーカーが保障しているよりも分厚い紙を通すことに成功・笑)、インクドラムのカラーを自分たちで入れ替えたい……そんな調整ができなくちゃ楽しくないのです! もちろん機械自体をいじらなくとも、使い方次第でかなり印刷精度をあげることもできる。ただ、そんな情報、だーれも教えてくれない。トランスポップの山田さんとも話すのだけれど、「誰も教えてくれないことを自分たちで探し、見つける」ことももちろん楽しい。でも、やっぱり時間がかかる。そこにたどり着くまでの過程は重要だけれど、僕らは目的のためにもやってる。だから……誰か、教えて下さい(笑)! そんなノウハウをちゃんとまとめて、この先書籍(いや、zineになるのか?)として出版しようと思っております。乞うご期待ください。

 この数日だけでも、伊勢で、横浜で、滋賀で、和歌山で。沖縄で……リソグラフスタジオをやってみたい、という方々から連絡を受けております。もしかして、自分がやってることに少しでも興味をもって、楽しいんじゃないかと思ってくれた方がいることが、とても嬉しいのです。で、ひとつだけお伝えします。

 これ、めっちゃオモロイですよ!

 あと、印刷はもちろん、コミュニケーション・ツールとしてのリソグラフ、という機械が(これに関しては、ココでもお話していますが、また追って詳しく)。

 ちなみに、この展示のタイトル「RISOrt Week Test 1」ですが、これ、「Test1」って書いているのは、実は、この先もやっていく予定ですので、その第一弾、ということ。この企画の巡回はもちろん、日本中どこかでリソグラフをかついで印刷しながら展示というのもやりたいと思っております。もしご興味がある方は、ぜひご連絡くださいませ。

 と、いう感じであと3日、楽しんでまいりまーす。お時間あれば、ぜひぜひお立ち寄りください。昼の12時から夜の6時まで、です。何卒!

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