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推しへの想いをしたためる

 11月23日。勤労感謝の日の深夜、呪術廻戦アニメ42話「理非」が放送されました。
 この回にて、筆者の推し・七海建人殿の散り際が描かれました。

一度社会人を経験した者ならではの「労働はクソ」という名言?を発した七海さんの最期が勤労感謝の日に放送されるとは、なんという皮肉でしょう。
 もしかして制作者様、計算されていましたか?

 しばらく、オタクによる七海建人語りにお付き合い下さい。

「呪術廻戦」との出逢い

 私が呪術廻戦という作品に出会ったきっかけは、大学の友人の勧めでした。アニメ2期の放送に合わせて、今年の夏休みに1期から怒濤の勢いで見直しました。
本当は1期を放送当時に見るべきでしたが、ちょうど大学受験とかぶっていたり、新生活開始直後でアニメを見る余裕がなかったり(そもそもそこまで興味がなかった)で、かなり遅れての履修でした。

結果、想像以上にはまりました。そのきっかけは、言わずもがな七海さんの存在が大きかった。
 他にも好きなキャラは多いです。虎杖の同級生・伏黒恵、最強先生・五条悟、運命にあらがおうとする禪院真希あたりも好きです。何なら最初は五条推しでした。

七海建人のここが好き!


 七海建人というキャラはスルメみたいなキャラです。
初登場では主人公であり呪術高専生の虎杖に対して「君を呪術師として認めていない」と突き放したり、「脱サラ呪術師の七海建人君で〜す」と紹介した五条悟に対して「その言い方やめてください」とぴしゃっと切り捨てたりと「お堅い」印象が強い。

 スーツにサングラスというビジュアルも相まって、最初の印象は「厳しそう」「冷徹」と思う人が多いと思います。私もそうでした。
 しかし、回数が進むほどその善性が浮き彫りになっていきます。

画像引用元: https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1648692012

 虎杖との任務の時は「私は大人で君は子供。私には、君を優先する義務がある」と言い切り、実際にさっと前に出て戦うのです。

 とにかく責任感が強く、情に厚い。これは、呪術高専時代にただ一人の同期だった灰原を、高専の上層部(大人)のミスで喪ったことが多分に影響しているのでしょう。

 五条悟にも当てはまりますが、「大人は、子供(若者)の未来や希望を奪ってはならない。むしろ、それを守るために存在する」という信念を持って生きているのではないかと思います。

 任務を通して改造人間をあやめることになり、罪の意識にさいなまれる虎杖に対して
「これからも君を必要とする人が大勢現われる。虎杖君はもう、呪術師なんですから」
と言葉をかけるのです。虎杖はきっと救われたことでしょう。

 ところで、七海はこの虎杖とのエピソードにおいて、呪術廻戦のメタ的に見て重要な役割を果たしています。

 バトル漫画あるあるですが、技の名前や戦闘方法がわかりづらく、「今どうなってる?」となることが多いと思います。

 呪術廻戦という作品のすごいところは、「技を相手に教える」という「縛り」によって威力が向上するという設定を作ったことです。
これで一気にわかりやすくなるし、「バラして大丈夫なの?」という疑問も消えます。

 そして、この「術式開示」を虎杖に身をもって伝授するのが七海なのです。
 教師の素質がありますよね!このシーンによって、呪術廻戦という作品は難解ながらも少し仕組みが明快になったのではないでしょうか?

 さて、話を戻しましょう。
七海という人はこの「年少者を守る」という信念を今際の際まで貫き続けるのです。
 アニメ2期で描かれている渋谷事変。

高専の後輩でもある補助監督・伊地知が呪詛師によって重傷を負っているのを見て芯から怒りを覚え、その呪詛師をボッコボコにします。

 ちなみに虎杖・伏黒の同級生だった釘崎野薔薇がこの呪詛師に苦戦していて、脳震盪を起こして釘崎がふらふらになってしまって絶体絶命…

というときにガラスを蹴破り、釘崎と、一緒にいた補助監督・新田を助けに来てくれるのです(ちなみになんで場所が分かったかというと、この呪詛師が残した残穢を追ってきたからでした)。

「仲間の数と配置は?」
画像引用元: https://times.abema.tv/articles/-/10099842


 これが片付いた後に、釘崎たちに状況説明をするのですが、この二人をベンチに座らせて、自分はひざまずくという紳士的過ぎることをサラッとしています。けしからん。

 この後特級呪霊・ダゴン(変換できませんでした)と遭遇した際に、その場にいたメンバーの中で唯一の学生・禪院真希が前に出ようとしたのをさりげなく止めて、「ここは私が」とファーストペンギンを買って出ます。

 ダゴンが領域展開(自分の技を必中にできる空間を作り出すこと)をして多数の式神が向かってきて窮地に陥った時も、呪力が弱くまだ学生である真希を心配して対処法を助言していました。

 この式神の群れに食いつかれて1分間耐え抜き、片目を失い両肩に傷を負っていますが、逆に言うとその程度で済んでいるフィジカルおばけ。普通はもっとボロボロになるよ…というか、生きているのがすごい。

伏黒へのセリフ。本当にかっこいい。
引用元: https://moneytalk.tokyo/manga/jujutsukaisen/12624

 領域内に入り込んだ伏黒恵(領域展開可能な数少ない術師。しかも学生)に式神が迫ったとき、上記の状態ながらも式神を一刀両断。あまりにも格好いい。
 そう、彼は冷静かつ聡明でありながら、しっかりとゴリラなのです。
ギャップにやられるが良い。

 伏黒が、「領域に穴を開け、皆で脱出する」と打開策を打ち出したときも、

「君だけ残るなんてことは無しですよ?」

と、伏黒の身の安全を第一に考えています(さらにこの少し前、伏黒に、虎杖と猪野(後輩術師)の現状を聞いています。本当に後輩想い)。

 そして、どうにかこの難局を乗り越えた直後、漏瑚という別の特級呪霊に襲われ、半身に大やけどを負ってしまうのです。意識朦朧としながら渋谷駅をさまよいます。

 ダゴン戦の後、駅の外に吹っ飛ばされた伏黒を助けるためです。
彼は、戦うことをやめませんでした。

引用元: https://meigenmeikan.com/mareeshia-soudana-mareeshia-kuantangaii/


そして脳裏に浮かぶ、南の海の幻想。 
「マレーシア…クアンタンがいい」」とひとりごちます。

「何でもない海辺に家を建てよう。買うだけ買って手を付けていない本がたくさんある。今までの時間を取り戻すようにページをめくるんだ」と想いを馳せるのです。


 このモノローグ、大好きなんです。虎杖だけでなくあらゆる学生に「完璧で究極の大人」「呪術師」としての背中を見せ続けた七海も、一人間としての悔いや心残りを持っていることがうかがえるから。

 しかし現実は、目の前にあるのは青い海ではなく、改造人間の群れ。
夢か現かの状態でも、七海はやはり驚異的なフィジカルを発揮し、苦しみながらもそれらをすべて打ち倒します。

 アニメでは、この戦うシーンで南の海で羽を伸ばす七海の幻想がオーバーラップしていてキツかった…

 こちらが真実であれと願いたいところですが、七海建人という人はいついかなる時も学生のために命を張る人間なので、ここで逃げてしまうとキャラがブレてしまうんです…避けられない未来。

 改造人間全てを祓った後に真人という、触れることで人の魂の形を歪め、体を改造する術式をもつ呪霊に捕まってしまいました。

 後ろに現れたのが弟子である虎杖。
虎杖に気づいた七海の目の前に、懐かしい人の幻が。
 その人こそ、彼にとって唯一の高専同期(故人)の灰原でした。
 灰原は七海を見据えて、虎杖の方へ指を差します。

 七海は、灰原の意図を汲み取ったのでしょう。
「灰原、それは駄目だ。言ってはいけない。彼にとって呪いの言葉になる」と拒みます。

 しかし、葛藤の末に最期の言葉を絞り出しました。 

画像引用元: https://mangaanimeblog.com/jujutsu-kaisen-kento-nanami-death/

 「後は頼みます。」

 ともに任務をこなした弟子へ、こう伝えた直後に、上半身が吹き飛んで最期となりました。

 七海はこの言葉を「呪い」と言っていましたが、私は必ずしもそうではないだろうと言いたい。

 というのもこの直前、虎杖の体は呪いの王である両面宿儺に乗っ取られて渋谷を更地にし、多数の人の命を奪ってしまいました。

 凄惨な光景を目の当たりにした虎杖は「死ね……死ねよ……今!!」と強い自責の念に駆られます。

 その直後に、死の間際の七海が発したこの言葉は、虎杖に生きる望みを与えるものだったのではないでしょうか。
 呪いが人を生かすこともあるのです…。

 「私も君を呪術師として認めていない」からスタートした師弟関係でしたが、共に任務をこなす中で互いに信頼し合うようになり、「後は頼みます」で終わるという…なんという美しい物語でしょうか。

 七海推しとして、嬉しかったことがもう一つ。
渋谷事変にて五条悟が封印されたことを、虎杖が最初に伝えた相手が七海だったことです。
 おそらく、虎杖が最も実力・人柄両方を信頼していだ年長者が七海なのだと思います。  

 七海を信頼している後輩は、虎杖だけではありません。二級術師の猪野琢真です。
猪野は、「迷った時には、七海さんならどうするかと考える」「七海さんの推薦でなくては一級になる意味がない」
と断言するほど心酔しています。

 絡みこそ多くありませんが、五条悟にはどこか呆れている様子の伏黒恵や、禪院真希も七海建人については「七海さん」と呼び、敬意を払っているようにも思えます。

 それもわかる気がします。
七海は、実力と人格を高いレベルで両立できているほぼ唯一の呪術師だから。

 呪術師は命懸けの仕事であるため、命を守るために自己中心的にならざるを得ない面があります。強くなればなるほど人柄に欠点がある傾向に…(例:五条悟)。

 友人の死や、先輩の闇堕ちという修羅場を経験して、一度は呪術界を離れた七海。
「やりがいなんていう曖昧な理由(本人談)」で呪術師に復帰した七海。

「やりがい」のために命懸けの仕事に戻ってくるところも、それを「曖昧な理由」と謙遜してしまうところも、本当に彼らしい。

 初登場時からずっと、後輩を、弟子を、学生を最優先に行動し続けた七海。結果としてこの高潔な人柄が彼の命を縮めることになってしまいました。

 しかし、この真っ直ぐでどこか頑ななところが、「燃えよ剣」の土方歳三(私の「初恋の人」)とどこか相通ずるものがあるように思うのです。

 七海建人が私に教えてくれたことは三つあります。
・クールに見えて実は人情家、というギャップ持ちこそ正義ということ。
・信念を貫いて戦い抜く人は凄絶で美しいということ。
・人として揺るがない軸を持つべし。

 ネタバレを踏んだ時から、いつかお別れが来ると覚悟していましたが、いざアニメを見るとダメージが大きいですね…

 しかし、ここに気持ちをまとめたことで少し楽になった気がします。成文化することで気持ちの整理がつきました。

 改めて七海建人殿、お仕事お疲れ様でした。

 そしてオタクによる4500字超えの長文を読んでくださり、感謝申し上げます。

執筆者:水無瀬紫













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