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「虎に翼」2週目感想

伊藤沙莉さん主演の朝ドラ「虎に翼」2週目が終わりました。
今週も良かった!感想を記していきたいと思います。


①着物を取り返したい!

 今週のハイライトは、なんといっても「母の形見の留袖を取り返したい」と願う奥さんが起こした裁判でしょう。

 この裁判を傍聴した寅子(よねの後をつけていたら裁判所につき、気のいいおっちゃんのおかげで傍聴できた)は、「どうしても着物は取り返せないのだろうか」と穂高教授に質問し、それを聞いた穂高は「皆でこの裁判の判決がどうなるか考えてみよう」と実践学習を提案します。

 それをきっかけに、寅子、よね(男装している女性)、涼子(令嬢)たちは一生懸命考え始めます。

「夫による暴力の賠償金として着物を引き渡すようにするのは」と提案する寅子。
「暴力が夫からによるものだという証拠がない」と指摘する、よね。

 今の時代は動画を撮ったり録音したりと、DVやモラハラに対する証拠集めの手段がまあまああります。
 しかし100年前には、レコーダーもスマホもカメラもありません。
証拠を集めるのが至難の業です…(怪我の痕を見せても、それが夫の仕業なのかは断定できない)


この裁判の弁護士コンビが、シソンヌのお二人でちょっと面白かったです(じろうさんが奥さん側)。

着物くらい返しても良いのではないか?と現代人は思ってしまいますが、実は旧民法下においては、「婚姻中の妻の財産は、夫が管理する(801条)」という規定がありました。

この夫婦の場合、離婚訴訟は第一審で妻が勝利しているものの、夫が控訴したため離婚は成立していない状態。
つまり法的に見れば、妻は着物を取り返せないということになります。

しかし寅子は、一つの希望を見出します。
それは、「裁判官は、法律を踏まえ『自由な心証』によって判断する」というところ。

この規定は現在にも受け継がれています。

民事訴訟法247条および刑事訴訟法318条、
「裁判所が証拠に基づいて事実を認定するにあたり、証拠の選択および証拠の証明力の評価に関して、裁判官の自由な判断に委ねる」

という、自由心証主義と呼ばれるものです。
(参考:http://www.tklo.jp/topics/topic_no62.html#:~:text=%E8%87%AA%E7%94%B1%E5%BF%83%E8%A8%BC%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%A8%E3%81%AF,%E5%88%91%E4%BA%8B%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E6%B3%95%EF%BC%93%EF%BC%91%EF%BC%98%E6%9D%A1%EF%BC%89%E3%80%82)

限界法学部生の筆者が思うに、これは「法律の穴」のようなものを塞ぐためにある記述だと思います。

何でもかんでも法律でガチガチに縛ったとしても、人というのは一人一人性格も善悪の指針も異なります。

「法律でこうなっているから」だけでは救えない人も出てきてしまう。
法律の網からこぼれ落ちるような人を救うために、「裁判官の自由な心証」という柔軟なもので可能な限り網目を塞いでいるのではないでしょうか。


もちろん法律は遵守しなくてはならないものの、その解釈は法律に反しない範囲内で裁判官個人に委ねられているのではないか、ということ。

そして運命の、判決当日。
寅子たち明律大学法学部の女子部の人々も見に行きます。
結果は…妻の勝訴!
着物を取り返すことができました。よかった!

驚くべきは、この判決が実話だということ。
おそらくモデルになったのは

https://x.com/nippyo_law/status/1778589060107473300?s=46

↑この判例かと思われます(日本評論社 法律編集部のポストより引用)

ドラマの展開に合わせたご都合判決ではなく、実際にあんな進歩的な判決を下した裁判官がいたとは!感動ですね。 

妻は勝訴したものの、納得いかない夫から暴力を振るわれそうになります。
寅子は居ても立っても居られず、奥さんの前に立ち塞がって守ります。
奥さんは、寅子の顔を覚えていました。
「あなたが傍聴席にいてくれたおかげで心強かった」と話しかけられます。

「法律は弱いものが戦うための武器」と解釈しているよねと、「法律は弱い人を守るための盾や毛布のようなもの」と解釈している寅子。
どちらが正しいという話ではないし、「よねさんのこと、結構好きよ!」と笑顔を見せる寅子。

 異色のヒロインのようで、王道ヒロインの良い点をしっかり受け継いでいると思いました!

②寅子は恵まれている

 女子部に入るにあたって、寅子は母親をいかに説得するかに悩み、楽天家すぎる父親(母さんは父さんが説得する!とフラグを立てまくっていた)に呆れていました。

しかし最終的に、母こそが寅子の優秀さを誰よりも認めており、その幸せを願っていたのだと知り和解。女子部進学を認めてもらい、六法全書さえ買ってもらっています。

 例えば、男装しているよねはいかがわしいカフェでボーイをしています(この時代、「カフェ」はキャバクラのようなものでした)。
 もしかしたら、よねが男装しているのは、いかがわしい仕事をさせられないよう自分なりの防御策なのかもしれません。

 また、令嬢の涼子も、お母さんがラスボスっぽい予感。「日焼けしたのでは?自分の価値を下げてはいけません」というような人で…。

 お見合いを勧めてくるくらいは序の口。まだ本人は気づいていませんが、寅子はかなり恵まれています。
 次週以降は寅子の学友たちのバックグラウンドも掘り下げられそうですね。

今回のポイント
婚姻中の財産管理について

旧民法では、「婚姻中、妻の財産は夫が管理する」という驚愕の規定がされていました。
では現代ではどうなのか?

答えは、
「婚姻中の財産は原則として夫婦が共同で管理する。しかし、個人名義で築いた財産や婚姻前に設けた財産は、当人に帰属する」
です。

共同管理する財産を「共有財産」といい、個人に帰属する財産を「特有財産」といいます。
ちなみに、婚姻中に相続によって得た不動産も特有財産に分類されます。

そして今回の事案のような、嫁入り道具も特有財産です。
従って、現民法で裁いた場合、文句なしに着物は妻のもとに帰ってきます。
(参考:https://sumitas.jp/sell/guide/1242/)

離婚する際に財産分与の対象となるのは前者、つまり共有財産です。

財産分与の割合は基本的に1:1ですが、事情によって(一方が浪費していたり、財産を築くことに配偶者がかなり貢献していたときなど)で比率が変わる場合もあります。

「法律」というとどこかいかめしい印象を受けますが、「知っておくと得」ということが多いのでぜひ触れてみてくださいね!

今週も楽しみです






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