見出し画像

音、香り、風味、すべてが未知の体験―成清海苔店の「秋芽一番摘み」。稀人マルシェ2023

全流通量のたった4%しかない「秋芽一番摘み」って知ってる?


雑誌『旅の手帖』で取材に伺った時、「秋芽一番摘みのうま味は、ほかとまったく違います」と教えてくれたのが、福岡県柳川市で営業する成清海苔店の2代目、成清忠さん。秋芽一番摘みはその年に流通する国産海苔60億~70億枚のうちわずか4%なんだけど、海苔の名産地、有明海で採れたこの稀少な海苔だけを扱っているのが、成清海苔店なのだ。

秋芽一番摘みについて、説明しよう。海苔は、毎年11月頃から翌春にかけて収穫が行われれる。秋芽一番摘みは「新海苔」とも言われ、最初の5日間ほどで収穫された海苔を指す。一番摘みはうま味成分が多く、柔らかくて口溶けもいいから、高級品として扱われている。

成清さんが秋芽一番摘みに絞るのは、理由がある。有明海を共有する福岡県と佐賀県では、「一番摘み」の後に海苔の病害予防の酸処理を行う。酸処理自体が身体に悪いわけではないんだけど、成清さんは「一番摘み」の海苔が最も自然に近く、海苔本来の味がすると捉えているのだ。

海苔の名産地、有明海。撮影:川内イオ

ちなみに、海苔の生産は分業制で、海苔漁師は収穫した海苔を地元の組合に収め、そこで等級が決まる。成清さんのような海苔業者はその等級を参考に入札し、高値をつけたところが買い取る。その海苔を自社で焼いたり(焼き海苔)、味付けをしたり(味付け海苔)した後に、販売する。海苔の味を活かすも殺すも、海苔業者の腕次第というわけ。

「漁師から託された海苔に命を吹き込む仕事」と考えている成清さんは、海苔の微妙な風味、香りの違いを感じられるように、海苔をたくさん食べて味覚を鍛えた。入札の前には約70種類の見本を取り寄せ、生で食べ、焼いて食べ、ひとりで採点する。そうして手に入れた海苔に「命を吹き込む」ために、「火入れ」や「味付け」などの作業を丁寧に、緻密に行ってきた。

火入れの作業は0.1秒単位で管理する。撮影:川内イオ

「日本一」を目指す皿垣開漁協の実力

今回、稀人マルシェで仕入れさせてもらったのは、12月9日に入札が終わったばかりの「秋芽一番摘み」。しかも!成清さんが全幅の信頼を寄せる、皿垣開(さらかきびらき)漁協で採れた海苔なのだ。

実は、海苔の等級は「見た目」で決まっているんだけど、皿垣開漁協は1995年、日本で初めて食味検査を導入するほど、とことん「味」にこだわってきた。その成果は一番摘みの単価に表れており、ほかの組合の平均単価が1枚16円前後のところ、皿垣開漁協は24円前後と大差がつく。

取材の日、成清さんが皿垣開漁協の漁師さんとの食事会をセッティングしてくれた。その時、ある若手漁師さんに「自分たちの海苔は日本一だと思いますか?」と尋ねたら、「そう思って作ってます」と答えた。その時の、真っ直ぐに僕を見据える視線が印象的だった。

後日、成清海苔店でお土産に購入した皿垣開漁協産の秋芽一番摘みを食べると、バリバリッという聞いたことのない破裂音とともに圧倒的なうま味が爆発し、口のなかを走り抜けて脳天を貫いた。

成清海苔店の海苔は少量生産のうえ、大地を守る会などに直接卸す分量が多く、一般の食品スーパーで見かけることはほぼない。あの音、香り、風味、すべてが皆さんにとって初めての体験になるだろう。

さあ、未知のゾーンへ。
皿垣開漁協産、成清海苔店の秋芽一番摘み、味わってみませんか?

稀人マルシェ2023
12/21:15時~20時
12/22:15時~20時
12/23:12時~20時

ギャラリー山小屋
東京都渋谷区恵比寿1丁目7−6

参加者一覧は「こちら」をクリック!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?