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「あんたの足臭いわよ」と気楽に伝える方法

会社で一日デスクワークをしていると、足が浮腫んでくる。そんな時はトイレの個室に入り、靴を脱いで足を動かしたり指をグーパーさせる。肩はバキバキ、腰もガビガビ、足はパンパン。会議も外出もない日は意外とこういった辛さがある。

後ろの席の上司に話しかけられた。背筋がピンとして品のある女性だ。私は机の下でこっそり靴を脱ぎ足首をグルグルと回していたので、慌てて靴を履いて後ろを振り返った。お互いに座ったまま会話を始めた。

しばらくすると、上司が喋りながら鞄からゴソゴソと何かを取り出そうとし始め、スプレー缶を私に手渡してきた。上司は引き続き喋っているが、スプレーについては何の説明もない。喋る口とスプレーを渡す手が全く連動していない。

私は混乱した。このスプレーは一体…?ぱっと見制汗剤のようだ。もしかして汗臭い?話を聞きながらさりげなく自分の臭いを嗅ごうと試みた。
ハッとした。わかった。きっと靴を脱いでいたからに違いない。
上司は恐らく「足が臭いからスプレーしなさい。」と暗に言っているのだ。
そう思い、私も話に「はい、はい」と相槌を打ちながら靴を脱ぎ、足にスプレーを吹きかけた。喋る口とスプレーの連動性のなさよ。

ようやくここで上司が叫んだ。
「違う違う!!!!」

「エレガードよ!」と言われた。私はこの日までエレガードというアイテムの存在を知らなかった。「エ、エレガード…?」
聞けば、静電気対策のスプレーだという。女性は特にロングスカートを履くと静電気でスカートがおかしな形になってしまっていることが多々ある。本来Aラインに広がるはずのスカートがタイツを履いた足にベッタリとくっ付いてしまい、気球のような形になってしまったり。

この日、私はロングスカートを履いていた。上司はスカートが足に全吸収されているのが気になり、スプレーを手渡したらしい。

隣にいた同僚はそのやり取りを見て爆笑していた。恥はかいたが、とにかく自分の足が臭くなくてよかった。
ある意味有効な手かもしれない。近くの同僚が臭いと感じたら、話しながら制汗剤を手渡す。口が臭かったらミンティアを手渡す。手渡したものと全く別のマシンガントークを繰り広げるのだ。
「口臭いよ」と言ってミンティアを渡されるよりも、はたまた黙って渡されるよりも気楽なのではなかろうか。

ちなみに私はこの日以来エレガードを手放せなくなった。スカートが足に吸い込まれている女を見かけてはエレガードを勧めている。今やすっかりエレガードの伝導者である。

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