見出し画像

どこがGet Wildやねん

一人カラオケに行ってきた。昔から何かしら楽器をやってきた人間だが、ついに楽器を持つのがめんどくさくなってカラオケという趣味にたどり着いた。最悪カラオケに行かなくても歌自体は楽しめる。ダンスと歌はコスパ最強の趣味だ。

カラオケに行くと、曲の合間に隣の部屋の歌が聞こえることが多々ある。他人の選曲は面白いし、歌が上手いと「おっ」と思う。
その日は、隣の部屋から男性の歌声が聴こえた。
自分が下手なのを完全に棚に上げて言うが、彼の声はか細くて不安定で、聴こえるたびにソワソワした。勢いというものが何も無かった。

それなのに、よりによって歌っているのが『Get Wild』で私は思わずズッコけた。
「げわいえんたぁ〜 ひと〜りぃでわぁ」

違う。あれは本来
「ゲッ‼︎ワイ‼︎エン‼︎ターフ‼︎‼︎ひとーりぃではぁ」
になるはずなのだ。

その後彼が他に歌っていたラインナップはORANGE RANGEやガッチャマンの歌など、自分の声質に相反する曲ばかりだった。
彼が歌うと全ての曲がひらがなに変換される。

「きりきりまーいきりきりまーい」

だんだん、お隣さんの歌声に勝手に愛着がわいてきた。きっと穏やか系の人なのだろう。飲み会ではアルコールは飲まないけど、ワイワイするのはお好きなタイプ。
ストレス発散でイカつい曲を歌うのではなく、単純に楽しいから歌うのだ。きっと彼がいる宴会の席は和むだろうな。

と、勝手に想像する気色悪い女が隣の部屋にいるなんて、向こうは思わなかったに違いない。

可能なら本人に伝えたかった。
そんなに裏声使うならゲスの極み乙女の『私以外私じゃないの』にしなさい。

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?