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第42話:「逆転裁判」開発秘話?

 カプコンという老舗のゲームメーカーのソフトの中に「逆転裁判」というタイトルがあるのをご存知でしょうか? アニメ化もされたし、映画化もされたし、コミカライズもされたかなり有名なタイトルなので知っている人がほとんどだと思いますが、一応、知らない人のために補足すると、逆転裁判は、自分が弁護士となり、犯人の証言の矛盾をつき「真実」を導き出し、依頼人の無実を証明する。みたいなゲームです。

 で、今日はこの逆転裁判の話をするのですが、みなさまは、このゲーム、入社5 年目以内の若手がたった半年で作り上げたゲームだってこと、知っ
ていましたか? 今日は、そんな逆転裁判の開発秘話について話していきますね。

 逆転裁判のプランナーは巧舟氏なのですが、その巧舟氏がいくつかのタイトルの開発を経験した5年目のある日のこと。会社から『半年の時間を自由に使って好きなゲームをつくっていい』と言われます。

 じつはこれ、ゲームをやるのは若手なのだから、若手が作った方がいいという安直な発想で生まれた、カプコンが仕掛けた若手を育成するためのプロジェクトの一つだったのです。大手の老舗メーカーとかだとちょっと考えられない企画ですよね?

 ということで、そんな巧舟氏が、入社5 年目以内の若手による7 名だけのチームで始動させたタイトルが初代「逆転裁判」のプロジェクトでした。ちなみにその時のメンバー、豪華なんですよ?

 キャラクターデザインを担当したスエカネクミコ氏は、その後カプコンを退社して漫画家としてメジャーデビューしていますし、 稲葉敦志氏は、その後ベヨネッタ2等のプロデューサーとして活躍しています。また岩元辰郎氏はその後、日本屈指のイラストレータになりました。なんというか、若い時代における1つの成功体験は、その後の人の未来の成功を約束するパスポートという言葉を信じたくなる事実ですよね?

 てことで話を逆転裁判に戻して、といってもあまりゲーム性の話をしてもゲームが分からない人を置いてきぼりにしてしまうので、一般的な話だけw

  プランナーの巧舟氏は、チームが「小人数」であることと「経験不足で
ある」ということを知っていました。だから、できるだけ「既存」のシステムを流用することを考えていました。 そして、そこに「他のゲームにはない」味付けをすることによって「独自色」を出すことを考えていたのです。

 そして出来上がったのが、従来のアドベンチャーゲーム形式(テキスト主体で、謎を解いていくゲーム形式)に、「嘘を指摘して暴くシステム」を盛り込むシステムでした。 この着想を基に巧舟氏は、ゲームの舞台、ストーリーの背景などを突き詰め、原案である探偵ゲームを、法廷が舞台の裁判ゲームに昇華させたというわけです。そうやって産まれたのが「逆転裁判」なのです。

 さて、アイディアは決まったものの「逆転裁判」が世にでるまでには、「様々」なハードルが待っていました。逆転裁判は当初、ひとつの事件・審理の中から証言の矛盾点を見つけ出しつつ、ゲームを進めていくことを想定していました。 しかしその結果、推理すべき対象範囲が膨大になり、ミステリーや推理ものに慣れたプレイヤーでもクリア不可能と思われる難易度になってしまったのです。 難解すぎるミステリー小説が売れないのと同様に、難しすぎるゲームは売れないのです。

 しかし、カプコンは若手の力を信じていました。 「試作版の段階で、これじゃあゲームとして成立しないぞ」と指摘しただけで、「どう解決するか?」をすべてこのプロジェクトチームに任せたのです。

 そこで巧舟氏は、ひとつの事件の審理を細かくパート分けし、その時々のシーンですべきこと、できることを明確にするなど試行錯誤を繰り返しました。 いわゆるアジャイル開発的な手法で、細かく分け、テーマを明確化し、小人数、少時間で一気に作り上げたのです。その 結果、「逆転裁判」はカプコン内のセレクションに生き残り、販売までこぎつけたのでした。

 しかしプランナーの巧舟氏は「逆転裁判」出来に相当不安だったらしく、インタビューでこんな言葉を残しています。

「シナリオやシステムをつくり込んでいくことは生半可ではありませんでした。 なにしろ裁判ゲームなんてジャンル、それまで前例がありませんでしたからね」と

 当然このようなことは、カプコンは理解をしていました。しかし「若手の感性」を「あえて」信じて販売することにしたのです。そして、その後どうなったかについては言うに及ばず。「逆転裁判」はカプコンの看板ゲームに成長し、今でも続編が期待されるメジャータイトルになったのです。

 先ほども書きましたが、若い時の1 つの成功は、未来への成功のパスポートです。 私はもう手遅れですが、若い人には是非色々なことに挑戦して欲しいと思っています。そして、その小さな成功をテコに大きな成功を掴んで欲しいと心から思っています。

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