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【読書】宇江佐真理の「紫陽花」が良い~『吉原花魁』(縄田一男・編)~

*この記事は2019年6月のブログの記事を再掲したものです。


以前ご紹介した吉原遊郭跡の街歩きツアーでは、案内人の方が経営されているカストリ書房さんで使える、500円分のチケットを頂けます。


何にしようか迷ったものの、時代小説のアンソロジー集である『吉原花魁』にしました。街歩きをしたので、背景とかが理解しやすいかと思ったのですが、まさにその通りでした。隆慶一郎の「張りの吉原」という作品から始まるのですが、これを筆頭にどの作品でも、吉原とその周辺に生きる男女の張りが描かれていました。もちろんその張りが、悲劇につながることも多々あるわけですが……。


一番良かったのは、宇江佐真理の「紫陽花」。身請けされ、今は大店の女将になっているヒロインが、遊女時代に親しくしていた梅ヶ枝の死の知らせを受け、彼女の棺を亭主と共に見送りに行く話。しみじみした、良い作品でした。


唯一、なぜこのアンソロジー集に収録されたのか謎だったのは、最後に収録されていた松井今朝子の「恋じまい」。冒頭、一章ごとに登場人物が変わり、どう話がつながるのかが分からず、イライラしました。アンソロジーの宿命で、長いものからの抜粋なため、登場人物を把握しにくいんですよね。特にこれは、シリーズ物からの抜粋だったし。
読み終わってしまえば、作品としてはなかなか面白かったと言えるのですが、吉原との関連があまりに薄いので、違和感があったわけです。脇役で、セリフもあまりなかったような登場人物が、元吉原の遊女というだけのことだったので。もっと吉原との関連の強い作品を、トリに持ってくるべきだったのではないでしょうか。


見出し画像は、ただの街並みの写真のようですが、かつての吉原大門の跡地です。




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