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映画:「ひまわり I girasoli 」シネマレビュー②12日間の幸せ

1970年作品

制作:イタリア、ロシア
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
主演:ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ

東京でタクシー乗務員をしております、みやび と申します。🚕💨

前回に引き続き、『ひまわり』のレビューです。

仕事で、イタリアから来た若者達をお乗せしました。こんな話を彼らに…

long time ago, my uncle lived in Italy. (昔、私の伯父はイタリアに住んでいましてね)」

Where did your uncle live in Italy? (あなたの叔父さんは、イタリアのどこに住んでいたの?)」

He lived in Naples. (ナポリです)」

すると後部座席の男性が身を乗り出し、自分もナポリ出身だと言うんです。

ナポリとは、イタリア共和国の中にあるローマ・ミラノに次ぐ都市。南に位置し、ローマからは200kmちょっと離れています。

ここからネタバレに入ります。読みたくない方は、こちらで終わりにしてくださいませ、ね?👋

映画『ひまわり』は、ナポリ女とミラノ男が恋に堕ちるところから始まります。

ナポリ女・ジョバンナ = ソフィア・ローレン
ミラノ男・アントニオ = マルチェロ・マストロヤンニ

時代背景は、1939〜1941年頃ですかね。

入隊中のアントニオは休暇でナポリへ遊びにきて、ジョバンナと知り合います。

若い男女は、ちょっとしたことで笑い合える関係。イタリアの町の、何気ない恋人達の光景です🇮🇹✨

日本に置き換えてみると、京都か大阪の男が名古屋に遊びに行き、結婚に至るって感じ?🤔 それとも福岡かなぁ、ナポリは南の街だから。⛵️

主演女優のソフィア・ローレンは、実際の出身もナポリであるため、芯の通った気骨あるナポリ娘の気質がよく現れています。

結婚ともなれば、夫婦の家と家の結び付きが出来る訳で、違う町からの嫁入りともなると直ぐには認められない様子。アントニオの母親は、盛り上がる若い2人のスピード婚にしかめ面。

イタリアのコメディタッチと言えば しっくりきますかね。家族を交えたシーンすら、笑いに変えてしまう
ユーモラスさ。イタリアの新婚カップルの日常シーンとして、若さと明るさが演出されています。

そんな主人公の2人ですが、時代が悪かった😔😰😢

新婚休暇を終え、戦争時代真っ只中の現実社会に引き戻されます。🍂💣 イヤッ 離れたくない!

死の危険が伴う軍隊など除隊してしまおうと考えた2人は共謀し、アントニオには精神疾患があると見せかけます。

しかし詐称がバレて、戦争へと駆り出されてしまうアントニオ… 🛫

お姑さんとの微妙な関係も、残された女達という息子や夫を待つ身の立場に変わると、支え合い励まし合うようになります。🤝

待てども待てども、夫は帰らない。他の兵士は戦地から帰ってくるのに、夫だけが帰らない。

でも… あの人は生きているかもしれない!

そんな僅かな望みをかけて、ジョバンナは国境を越える決心を固めます。

映画の中でハッキリ明かされているのは、ロシア大統領のスターリンの死後、ジョバンナがロシアへ向かったということ。

1945年に戦争が終わり、1953年にスターリンが亡くなっていますから、待ちの歳月は8年以上ですかね?

いやもし、戦地に赴いたのが1941年ならば、ジョバンナは12年以上も夫アントニオを待ち続けていた。そんな計算になるのです。

たった12日間だけ、一緒に過ごした相手。
ジョバンナとアントニオは、そんな夫婦だったかもしれません。

しかし、人にとっての大切な時間は、長さでなく想い出の美しさなんじゃないかと、私は思うのですよ…

他の映画で恐縮ですが、『マディソン郡の橋』なんてたったの4日間。その短い4日間に、自分の人生の美しい想い出と大切な愛を詰め込んでいる。

あの映画を観て「4日間の恋なんて信じられない」と思う人がいれば、恋を知ってくださいとしか言えませんよね。😘❤️

戦争と青春…

大正生まれの私の祖母の話で恐縮ですが、戦争が引き裂いた、もう1組の若い夫婦の話を書かせてください。

それは私の祖母です。彼女は再婚して私の祖父と一緒になりました。

私の祖父には、それなりの財産と地位もありましたので、再婚とはいえ人が羨む妻の座に思えますよね。

けど、祖母にとっては初めての結婚こそが愛でした。戦争中たった1週間ほど一緒に過ごした夫との想い出の方が大切で、、生前こんな言葉を呟いていました。

「もし、あの人との間に子どもでも授かっていれば、お祖母ちゃんの人生はもっと違うものになっていたね」

… お祖母ちゃんは、この宮本家の正夫人であるより、シングルマザーの苦労を背負って生きたかったと思うの?

祖母は、戦争も、戦後の食糧難も経験しています。苦労を知らないはずはありません。

父母の離婚によって、宮本の人間から外れた人生を送った、私の苦労。

そしてシングルマザーにもなりましたから、祖父に守られて生きた祖母の甘さが、私には憎らしかった。

祖母のように、それほど美しい想い出が私には無いからかもしれませんけどね… 寂しいことに。

戦争というのは、何もジョバンナ・アントニオだけではなく、祖母と祖母の夫、ありとあらゆる人の愛をも、引き裂いたのかもしれません。

誰もが、ひまわりの悲しみを強いられてしまった。🌻

序盤に書いた、イタリアのお客さまとの話の内容に移りましょう。

long time ago, my uncle lived in Italy.

私の伯父の1人は、イタリアで職に就き、イタリア人女性と1度目の結婚をしました。

私がまだ幼児の頃は、外国人は外国人で、国という概念が無かったものですから。

外国人(アメリカイギリス)を強く憎む祖母が、外国人(イタリア人)との結婚をよく許したなぁ… そう思っていました。

そのことを尋ねてみると「三国同盟のイタリアは味方だから」と、祖母は返します。もちろん幼児の私には分かりません。笑

それも今となればよく分かるし、祖母は戦争を憎む気持ちがとにかく強く、またその頃のまま時を置いてきてしまったかのように見えましたよね。

愛し合う2人、2人を引き裂く戦争、美しい想い出と人生。

『ひまわり』は戦争が起きる限り、繰り返される悲劇。

今もどこかで誰かの愛も引き裂かれ、幸せが失われているのかと思うと、やり切れないです。

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