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かなり前に見た夢の話

私は薄暗い建物の中にいた。
私がそこにいるのを見た青年が、慌てた様子で駆け寄ってきて腕を掴んだ。

「どうしてここにいるんだ」
そう尋ねられたが、知らないと答えるしかなかった。
「まだ早いって言ったはずだったのに」
青年はそう言った。

確かに、その夢を見た時よりもうんと前に、こんな夢を見ていた。
その薄暗い建物に入ろうとした私を、「ここから先は君にはまだ早い」と言って止めた人がいた。
結局その時は入るのを諦めていたのだが。

建物の中にいた私の腕を掴んだまま、青年は歩き出した。
その先にいたのは、五人くらいのお爺さん。
やたら酒を飲むのが好きなお爺さんが二人、気難しそうなお爺さんが二人。
その奥にいたのが、黙ったまま私達を見るお爺さんだった。

酒を飲むのが好きなお爺さんが、私を呼んで「これは美味しいから食べてみなさい」と言った。
気難しそうなお爺さんが、「それは生きている人間に食べさせていいものではない」と言った。
それでも酒を飲むのが好きなお爺さんは、「これを食べさせてやらないと本当に死んでしまうだろう」と言っていた。
その言葉を聞いていた奥にいたお爺さんが、頷いた。
それが合図となったようで、私はその食べ物を口にする事になった。

食べ物の名前は「マナ」だった。
聖書に出てくるのと同じ名前だなぁと思いながら、やたら美味しいそのお菓子っぽい物を食べていた。
白くてふわふわした、例えるならハイハインを分厚くしたような感じ。
オフホワイト色の麩菓子を食べているような。

それを食べた後、私はお爺さん達から励まされた。
「辛い事があったならまたここへ来なさい」とも言われた。
青年は複雑そうだったけれど。

その青年に手を引かれて、建物の外へ出た。
建物から出ると、そこは職場のある最寄駅の近くだった。
建物は……消えていた。


という夢を随分前に見ていた。
何故かこれに関連する夢だけは、どれも覚えている。
他にも沢山あるけれど、印象的だったのはこれだ。

何となく聖書を読んでいた時の事。
出エジプト記に、マナが出てきた。
そこには白っぽい色、そしてウエハースのようなものだったと書かれていた。
「え?」と思って画像検索で調べてみたら、私があの夢の中で食べた物そのものだった。

あの夢を見た後も、何度かそれを食べる(食べさせられる)夢を見た。
あの夢以降はお爺さん達は出ていないけれど、青年は夢に出てくる。

私が不思議な世界に迷い込む夢を見た時も、その青年は駆け寄ってきて、私の手を引いて元の場所へ戻してくれた。
「その道を歩いたら死ぬ」と言いながら。

一度や二度なら夢占いサイトでも見て「ふーん、そうなんだ」と言えそうだけど、あまりにも多い回数、これ絡みの夢を見ている。
これ絡みの夢を見る度に、青年から「何でここにいるんだ」と言われたり、「やっぱりここにいた」と言われたりする。
そして元の場所へ戻される度に、「もう来るなよ」と言われる。
それを言われたと思ったら、スッと目が覚める。

あの夢の中で食べた物は、「マナ」とも聞かされたけれど、その前に「空の上の食べ物」と説明されていた。
それで食べ物の名前を聞いたらマナと返ってきただけ。

……ちなみにあの夢、最初はアクセサリーを見ていたのだけれど、買おうとしたタイミングで青年が駆け寄ってきて、「触るな!」と言って腕を掴んできたんだよな。
「触ったら戻れなくなるぞ!」と言ってめちゃくちゃ怒ってきた。

私は夢の中でパラレルワールドにでも行っているのだろうか。

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