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易占道具との不思議なご縁

私も一応、占い師、というか易者の端くれなので、イベントや研究会などの際には筮竹類を持ち歩いていますが、皆さま、私の易占道具を見ると、とても驚かれるのです。特に1尺5寸のとても長く大きな筮竹と、古めかしい筮筒をご覧になられた方から

「おじいさまか何方かも易者さんだったのですか?」

「年季が入って味わい深いですね!いつ頃から使っていらっしゃるの?」

と、訊ねられることも多く、矢張り私には分不相応な道具なのかしらと、若かりし頃は恥ずかしい思いも致しました。

易占道具との出会いは、実は、某大学を中退後、逃げるように東京へ向かい、友人を頼りつつ一人暮らしを始めた21歳の頃だったのです。

その頃、師匠と出会い、易のお勉強をスタートし始めたのですが、殆ど身ひとつで東京に辿りつきました私は、とりあえずお金を稼がなければと、ブラジルから帰国したばかりでしたので英字新聞の求人広告を探し、ポルトガル大使館の秘書として、仕事に励みました。

大使館が良かったのは、仕事が始まる時間が10時で、4時くらいから片づけが始まり、5時にはキッチリ帰してくださったことと(勿論土日はお休みで、ポルトガルと日本の祝祭日もお休みでした)、サマータイムは仕事がお昼迄で終了したというところなのです。

占いの勉強もしたかったのでお教室に毎週通い、また、師匠にとても気に入られましたお陰で電話での指導も受けることができ(あなたには何故か、どうしても真剣に教えなければならない、と思うです、とのことで、贔屓していただきました)充実した日々を送っていました。

兎に角生きて行く為お金を節約し、また、家電日用品を少しでも安価に手に入れる為、お金がなかった私はしょっちゅう質屋へ出入りしていました。

ある日の事、質屋にバッグを買い取ってもらおうと、出かけた時のことでした。

同じく、ある還暦前後くらいの男性が、大きな段ボール箱を抱えて質屋に入ってきました。
お父様がお亡くなりになって、形見分けする人もいなく、かといって捨てるのも忍びなく、遺品を質にということでした。
大きな段ボール箱を3つくらい運び入れていたでしょうか。

中から珍しい骨董品のようなものをひとつひとつ出している際、あるものがカラカラっと落ちたのです。
私はそれを拾ってその男性に手渡そうとして、ふと見ると、何とそれは八面サイコロでした。

「あ、これって易占いの・・・」

と、驚くと、その男性は

「良くご存知ですね。 父は易者でしたから。」

と、笑って仰いました。

「そうなのですか😊 実は私、最近易のお勉強を本格的に始めまして・・・ 漢文ですから難し過ぎて、いつまで続くかわからないのですけどね。(笑)こんな立派なサイコロではないですが、同じ八面サイコロ、持ってるんです。私のは練習用で、1~8まで数字が書いてあるだけのプラスチックの安物ですが・・・こちらは大きくて立派ですね!象牙か何かかしら?」

と、まじまじとサイコロを眺めていますと、その男性はダンボール箱の中から古い麻の袋を取り出し、

「だったらこれ、貰ってやってください。その方が父も喜ぶと思いますから。質屋さんだって易占道具持ってこられても困るだろうしね。」

と、私に手渡すのです。

中を見ると、何と、男性向けのとても長い筮竹や筮筒、方位磁石や色々入っているのです!!!

「こんな立派なものを勿体無いです! 何処の何方かも存じ上げない方に貴重なお品を頂くだなんて!!」

と、恐縮してましたら、

「こういう道具って、使ってこそ生きると思うんです。あなたなら使ってくれそうだから。遠慮なくどうぞ。そして、勉強頑張ってくださいね。父が応援してくれると思います。易者としては大変評判がよく勤勉な人でしたから。今日あなたに出会えたのはきっと、父からあなたへ、という事かもしれません。あなたはきっと、将来父のような易者さんになると思いますよ。」

とのことでした。

その易占道具がこちらなんです。↓

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大きく長いお数珠まで入っていましたが、きっと、易を立てる前精神統一する為に、使っていらしたのではと想像しています。

こういう念が深く入ったものはちょっと恐い感じもしますが、この易占道具には恐いですとか怪しいという気配が全く感じられなかったのですよね。

この道具で一体何人の方たちを占ってこられたのかしら・・・と、眺めているだけで畏敬の念を抱きます。

とても勝手な想像ですが、これも何かのお導き、ご縁のように思いましたし、譲ってくださった方が仰るように、この易占道具を持っていた名も知らぬ易者さんが、私を応援してくださっているようにも感じてならないのです。

品物の価値を決めるのは、値段でも目利きの評価でもないと思います。大切なのは、その品物が新しい持ち主に受け継がれてゆくとき、それまで使い続けた人の想いも、一緒に伝えられてゆくかどうか・・・ということだと思います。

「私も大切にしよう。」

自然にそう思えた時、気持ちの引継ぎができた時、それは時を超えた良い品になるのだと思います。 

一生使える貴重なお品を受け継ぐことは、心の中に素晴らしい贅沢を持つことと思います。

この易占道具は私が死んだ後も、何方かに引き継いでもらえたなら、それ以上幸せなことはありませんし、道具も喜ぶと想っています。

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30年前、カラカラっと偶然足元に落ちた八面サイコロ・・・このサイコロが、私と道具を結びつけるキューピッド役になってくれたのです☆

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