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箱の中はなに?(テーマ:箱)

エッセイ講座に通っています。
このエッセイは、今月のテーマ「箱」で書いてみました。
「箱の中に入っていたものは?」
想像しながら読んでくだされば、うれしいです💛

 ピンポーン! 黒猫マークのトラックが一つの箱を届けてくれた。何だろう? 結構重い。片手では持てないくらいの重さ。最近ネットショッピングした覚えはないし、「荷物送るからね」という電話を受けた覚えもない。はて、この箱には何が入っているのだろう。

「あー、やっと来た! 嬉しいなぁー」
 声の主は、夫。在宅勤務中なのに、自室から飛び出してきた。

「今日の昼ご飯はこれでいいからね」
 箱を開けてみると、レトルト食品が12個入っていた。1つが1食分のようだ。これはなに? 箱から1つ取り出してみる。

 真っ黒い液体の中に大根、卵、こんにゃく、ちくわ、牛すじが浮いている。おでんのようだが、それだったら出し汁が黒すぎる。
「この黒い出し汁がおいしいんだよ。ダシコ付いてるよね?」
 ダシコは「出し粉」と書く。鰹節を粉状にして、青のりと混ぜたもの。小さな透明の袋に入って、ご丁寧に1食分ずつ付いている。これをつけて食べないと味が半減するという。

 待ちに待った昼時、袋ごと熱湯で温める。
「うー、うまい! この味、懐かしいなぁ」
 子供の頃、鍋を持って駄菓子屋へ買いに行ったと嬉しそうに話す。どこの駄菓子屋にも置いてあって、子供たちの軽食でもあった。

 さて、ご相伴にあずかるとするか。濃い味かと思いきや、意外にもあっさりしている。

「この『黒はんぺん』、静岡だけなんだ」
 静岡の郷土食。鰯や鯖で作った練り物。黒というより灰色だ。私はこの日初めて食べた。

「残った出し汁は捨てないで! 冷凍して」
 黒はんぺんは東京では買えないが、それ以外の具材を入れて再度味わうつもりか。そんなに郷土愛が強かった? 恐るべし、夫。

 まだ10個残っている。あと5回は食事の支度から解放される。「静岡おでん」、様様だ。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました m(__)m あなたの大切な時間を私の記事を読むために使ってくださったこと、本当に嬉しく有難く思っています。 また読んでいただけるように書き続けたいと思います。