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amazarashi Live Tour 2019 未来になれなかった全ての夜に(大阪東京新潟青森仙台まとめ)

【amazarashi Live Tour 2019 未来になれなかった全ての夜に】が4月29日大阪を皮切りにスタートした。初上陸の松山や熊本を経て2年ぶりに故郷青森へ凱旋。あいみょん対バンを経て初上陸の京都で本公演ファイナルを迎えた。待ち望んでいたツアーのスタートがつい先日のように思えるが、あっという間に2ヶ月が過ぎ、東名阪での追加公演を残すばかりだ。

今回はamazarashiとして初めてレコ発ではないツアーである。武道館を経てこれまでのありがとうとこれからの一歩を繋ぐ2時間。受け止め方で序盤は意見や感想が割れていたように思う。自分自身も一部賛とは言い難い感想を持ち(構成や演出という意味で)消化不良を起こした。しかし不思議とツアーが進む程にその感覚は薄くなっていく。「慣れや折り合いがついたから」「ラストの楽曲を繰り返し聴く事で秋田ひろむの描く夜に納得できたから」「今のamazarashiが輝きを放ちそこにいたから」理由は様々だ。

また徐々に修正更新される演出、ライヴメンバーが抜けるトラブルを乗り越え、NHKホールでは成熟した完成度の高い姿を見せた。手探り感のあった2ヶ月前を思えば、アレンジも変化し余裕や遊びが生まれ、楽しさが伝わる。一日一日の積み重ねがその美しさを手繰り寄せたのだろう。そして地方と都市部、機材影響のせいか演出面での違いもあるが、観客も演者も会場を纏う空気も違う。東北や北陸は肩の力の抜けた温かさがあり、東京は張り詰めた緊張感と強い期待感が漂う。大阪は府民性か観客のノリがよく、熱量の高さから荒ぶりやすい。セットリストは同一でもこの温度差を味わうために何度も足を運びたくなるのだ。それぞれの土地で一瞬の瞬きを味わうために。

ライヴレポは3本予定していて、これが1本目。まずは映像演出を含めツアー全体の感想と各地の所感、MCのまとめ。2本目はNHKホール。3本目は追加ファイナルまで終わってから振り返りで書きたい。

まずは1本目。今回は楽曲毎ではなく各テーマにそって感想を書いていく。前口上が多く本公演はセトリ変更なしのため、楽曲を含めた詳細レポはNHK編で行う。演出やセトリについてネタバレあり。長いため息抜きに各地の写真を唐突に挟んである。笑。

①予想以上に新曲で固められたセットリスト

ツアータイトルから初中期の曲が多く入る構成を期待した人も多いのではないだろうか。しかし半分はシングルで構成され現在のベストともいえるセットリストを展開。初上陸の場所やアニメどろろのED.さよならごっこをリリースしたこともあり、初見の方に知ってもらうには名刺のような、今のamazarashiが詰まったとても入りやすい構成になっている。

“未来になれなかった夜”そのものはごくわずか。言いたい事は楽曲で伝えてきた。その視点に立つならば、今の楽曲はかつての未来になれなかった全ての夜と地続きであり、その先に立っている。数知れぬ夜達を時折振り返っては、終わりと始まりを紡ぎながら進んでいく。過去の夜にはどれだけ道を歩んでも決して切り離せないものがあり、そのきっかけやスタートラインが夜として散りばめられている。秋田ひろむが届けようとするのは、そんな夜を越えてあるいは携えてここまで来た、今の想いだ。故郷青森へ持って帰るための、過去の自分を労うようなセットリスト。この“青森感”に初日の自分の感想は辛めだった。

ツアータイトルから期待しただけに、もう少し過去や夜をテーマにした曲が入ってもよかった。だがファンが増えていく中、日本武道館はあえて新言語秩序というコンセプトのもとで行われた。それ故今回は共に楽しめるセットリストを組んだと秋田ひろむは語る。恐らくは彼の捉える夜と私の想像する夜、そしてベクトルが違っていたのだ。秋田の言葉を借りるなら、0の夜、1から10になる頃と10から100になる頃の違い。私は線で0から100を思い描き、秋田は全てを地続きと捉えた上で100に立ち0までの夜を散りばめた。一抹の寂しさが胸をかすめるが、その分ラストに夜の美しさが集約され光を放つ様に胸が震える。amazarashiが奏でる音は、その世界へと人を誘い過去を振り返っては今を慈しむ。悲しみや苦しみから目を背けるでも押し付けるでもなく、ただそのままを受け止め肯定する。温かさと同時に痛みや残酷さをも伴う。それがamazarashi最大の魅力だ。心の奥底へと沁みるように響き渡る言葉は、日々を生き抜く糧に変わる。

これまでのamazarashiよりも、一体感や楽しさ、ここまで来たという誇らしさや喜びが伝わるツアー。ロックバンドとしての成長を強く感じる。もうステージに立つのが怖くて逃走経路を探していた秋田ひろむはいない。フロントマンとしてバンドを力強く引っ張り、それを見守る豊川さんの笑顔が眩しい。

夜が明けていく。

僕らは雨曝しだがそれでもと歌ってきた。
今や雨は上がった。
夜の縁から手を伸ばし希望を描いてきた。
その希望が自身を照らしやがて人々を照らしていく。
amazarashiが新たなスタートラインに立つ。
夜を終わらせるために。

これは決してレクイエムではない。昔を振り返りながら今を描くストーリーであり、これから待つ未来への始まりの一歩だ。

②紗幕がLEDスクリーンに変化

ステージを挟み表と奥の紗幕2枚でライヴを行ってきたamazarashi。今回は表1枚(今までより薄い印象)に、奥はLEDスクリーンに変化。一部楽曲においては奥にだけ映像を流し前面の紗幕を透過、ステージ上がほぼまる見えでライヴが展開する。初日は2階席だったため、細かく見えず前面の紗幕が取り払われたのかと思った程だ。前方の人はamazarashiメンバーの表情や機材が今までにないほどよく見えるだろう。Zepp DiverCity Tokyoが一番透過曲が多かった気がする。

LEDがゆえにスクリーンは色鮮やか(後方から見た方が映える)、光がかなり強いのが特徴だ。初日大阪と東京ではその眩しさから倒れる人や体調不良者が出たからか機材影響か、他の場所では紗幕2枚に戻された。光、再考の真っ白に発光するシーンでは黒を入れたりノイズをかけて緩和されたが、NHKではLEDが復活。序盤よりは強くはないもののそれでもやはり眩しい。演者が見えるのは純粋に嬉しいが、amazarashiには紗幕投影スタイルを貫いて欲しいというのも正直な所。奥の幕が上がったり下がったりするのを見るのが私は好きなのだが、今後どうなるのだろうか。

③秋田ひろむのシルエット映像と照明

言葉に重きを置くコンセプトから映像はリリック中心だが、秋田のシルエットがあちこちで多用され、少々変化が乏しい印象に。そんな反応を知ってか知らずか、青森からは主要曲を除きシルエットを削除。また、この秋田のシルエットは本人の動きとリアルタイムで連動するシステム(Kinect)が一部導入されている。削除されたのはこれと連動しないシーンだ。Kinectは装置が足元に置かれ合計3曲に導入されているが、秋田の動きが少々制限されるのかなという印象を受けた。解放されるとやったぜと言わんばかりに元気になる。笑。季節は次々死んでいくでは暴風のように文字が吹き荒ぶのが特徴的だが、秋田が文字に乗ってみょーんと飛んでいく。秋田さん飛ばしていいですか?とか言って制作したんだろうか。笑。

ライティングは特にステージ内が美しいので注目したい。照射する量、色、当て方が緻密に計算され、華やかでありながら楽曲に合わせて一筋の光や温もり、血、涙までもが表現される。特にピンクや白の照明がクロスして秋田ひろむを突き刺す様はとても美しい。amazarashiの世界に観客を一層引き込む、重要な役割を担っている。

そして今回初めてスモークが登場しさよならごっこは幻想的な雰囲気に。一度入れると雲海のように美しいが数曲残るため足元のエフェクター等が見づらかったのだろう。初日大阪のみで他ではやらなかったが、NHKで復活。量は大阪よりも控えめだった。

またポエトリーで走りがちなボーカルと流れるリリックのタイミングのズレが、今回も序盤は継続。新潟から気にならなくなった。スタッフさんが頑張ってくれたのだと思う。

このように演出面では挑戦と修正を繰り返し、試行錯誤な姿勢が多く見られた。追加ではセトリも変えてくるはず。更にどう変わるのか楽しみだ。

④各地かなり違いのあった音

昨今の楽曲の傾向やまこっちゃん(井手上誠氏)がギタリストとして入った事もあり、ライヴのアレンジは激しさが増している。時には爆音で体を劈かれるような瞬間さえある。ファンの間では幾度もライヴ用耳栓の重要性の会話が飛び交った。そんな音の洪水の中で秋田ひろむの言葉を埋もれさせず響かせ、演奏音のバランスを保ち音を届けなくてはならない。ツアー前半と後半では聴こえ方がかなり違ったのは、PAさんの頑張りだろう。

初日大阪は秋田ひろむのマイクが大振りなものに新しくなったようだったが(次からは従来型へ戻された)機材トラブルか声が埋もれ聴こえない場面や、演奏音のバランスが各所乱れて聴こえた。Zepp Osaka Baysideは音響が良く、昨年のメメモリでは好印象だったが、今回はかなり苦戦している様子だった。秋田ひろむがほぼ弾き語りになるとよく響くが、激しくなると演奏音に埋もれて歪むを繰り返す。後半にかけては大分状況が緩和したように思う。

続く東京はかなり改善。まだツアー序盤らしい手探り感は残しつつも、ライヴ自体は非常に素晴らしかった。新潟はホールらしい音の返り方で、少々音像がクリアに感じにくく座席によっては厳しい意見もあった。新潟は毎回音量大きめなのは何故なんだろう。スピーカー前は耳が死ぬと思う。続く石川は同じホールでもかなりよかったようで、青森仙台も音量こそ大きいものの声が埋もれ聴きにくい状況は減少していった。仙台は秋田のメンタルが心配になる声の出し方ではあったが…。そしてNHK。N響を抱えるホールだけに音響は抜群(クラシックを得意とするホールだけにライブハウスのような抜け感は弱め)バンド演奏とボーカルのバランスが最高の状態で届いた。

amazarashiは歌唱力、演奏技術共にトップクラスのアーティスト。ホールやライヴハウスで音の返り方は様々だろうが、彼らの魅力が最大限に伝わる空間創りをこれからも期待したい。

⑤タケさん(ベース中村武文氏)のお休み

新潟は熱量が高くいいライヴだったが、全体的にメンバーの余裕のなさを強く感じた。いつもは気遣うように飛び交うメンバー間のアイコンタクトが少ない。表情も険しい。アウトロで大きな盛り上がりを魅せる場面でも手数が少なく全体的にかなりあっさり締める。ラストは力強かったものの真さんの体調を心配してしまった。しかし、タケさんを配慮してのアレンジだったようだ。続く石川では椅子に座っていたという話があったが感想は絶賛の嵐。だが終演後の真さんの写真にタケさんはいない。結局公式にアナウンスはないまま、青森、仙台はお休み。別の方がステージに立った。他のメンバーが抜けてもタケさんだけは秋田ひろむと共にステージへ立ち続けた(これで全員一度は抜けたことになる)そのタケさんが抜けての青森はプレッシャーと残念な思いもあっただろう。次こそフルメンバーで見られる事を願いつつ、あいみょん対バンでは復活。NHKでも楽しそうに大きく横に揺れながら弾いていた。彼のベースラインは爽快で心地よく響く。

バンドを長くやれば様々な事があると思うが、amazarashiのリズム隊は橋谷田真(Dr)、中村武文(Ba)二人で音を紡いで欲しい。出来ればこれから先もずっと。

⑥秋田ひろむの歌声

音源とライヴは別物だ。初めてライヴを見た時口から音源!と思ったものだが彼の歌声にはそれ以上の情報量がある。内に秘めた熱を爆発させ荒ぶったかと思えば、感情を吐露し切々と語るようにどこまでも優しい。その声を全身に浴びて満たされていく時間はこの上なく幸せだ。特に最近は歌声、ポエトリー、口上、曲間のありがとう、MC、その一つ一つの言葉に表情を感じる。

今回のツアーでの歌声は全体的に伸びやかで美しい。少し疲れてきたかなとかあまり調子よくないのかなと思うと次の瞬間には爆発していたりする。化物かな?笑。歌詞が時々抜けるのは文字数を思えばご愛嬌だが、大阪初日のリビングデッドでは今までになく長い抜け方(人生を無為に徘徊してからサビ前まで)をして少し心配になってしまった。また、たらればでは「見てみぬ振りで」を「見てみぬ振りして」とずっと歌っていたため、歌詞を変えたのかと思った(青森で直った)この辺が少し気になった程度で今回は口上も多く沢山の言葉を熱く届けてくれる。早いポエトリーを全然噛まない割に、そこ?て所で噛んだりするからとてもかわいい。

今回特筆すべき点は、九州も北陸も2DAYSは二日目の方が声がよく出ていたという話を強く聞いたことだ。全身全霊、魂を込めて歌うスタイルから二日目は疲れが出たり声を枯らす事が多かったが、うまくコントロールしながらボーカリストとして強くなったのだと実感する。その分ブーストがかかりにくくはなった。ミスやうまくいかない時、それを取り戻そうと暴れた先で起きる奇跡のような瞬間を愛しているだけに少し寂しい。

⑦仙台での秋田ひろむの歌声

2DAYSで行われた青森仙台の東北編。2年振りの気合もあったのか一日目の青森の方が声が出ていた。続く仙台は頭から声に力がない。それは単純に青森で燃え尽きた疲れなのか、タケさんの事があったからなのか、他の理由か分からない。痛みに泣き叫ぶような喪失感や不安といった感情がこぼれ落ちるようで見ていて辛かった。歌うのをやめてしまうのではないかと怖くなった程だ。いつもは縦ノリで楽しいヒーローで号泣する始末。そしてこういう時の命にふさわしいは凄まじい熱量を放つ。振り絞るようなあの声は絶好調ではないからこその輝き。

終演後はよかったという人がほとんどだったので、考えすぎかも知れない。ただ私にはその力の入らない体から振り絞るように歌う姿が命を削るようで、涙が止めどなく溢れた。

⑧豊川さんの素晴らしさ

機材がRD700SX→RD2000へ変化。BDを見た所、武道館からの様子。以前の音源を内蔵して使っているのかは不明だが、音の輪郭が鮮明でいい音だ。笑顔で冷静かつ優しく弾いているイメージだったが、今回は満面の笑みがこぼれ腰が浮く程ノッている会場もあり熱さを魅せてくれている。またハモりでも大活躍。高音の美しさも低音の凛々しさも素晴らしい。NHKホールではいつも以上に集中しつつとても楽しんでいる様子で、MVPを上げたいレベルだった。ピアノとコーラスが素晴らしい。お咳する姿は心配だけどとてもかわいい。マジ女神。

⑨大阪東京新潟青森仙台のMCまとめ

Zepp Osaka Bayside

ありがとうございます。
ようやくツアーが始まりました。すごく楽しみにしてました。来てくれてありがとうございます。武道館をやってまぁ達成感はあったんですけど・・えーとあのライヴはすごいコンセプチュアルなやつだったんで、こう皆と何かここまで来たんだぜっていう共感するライヴがやりたくて今回はこのセットリストにしました。今日はありがとうございます。
昔を振り返るライブですが、今では今まででは歌えなかったことを歌いたいと思っています。今だからこそ歌える歌が・・

Zepp DiverCity Tokyo

ありがとうございまーす。
amazarashiももう何年経ちましたっけ?
9年位やってますか。
こうやってると出会う人もいるけどやっぱり去っていく人もいて、なんか最近になってそういうことが身にしみて悲しいなって思うようになりました。音楽もきっとそうだと思うんですよ。多分、わい、たちと皆さんとの関係みたいに出会って別れてまた再会してとか。何があっても何かそういう悲しみもひきずりつつ頑張っていけたら、何かずっと一生音楽できんのかなって最近は思います。ありがとうございます。
今日は昔を振り返るライブなんですが、昔では言え↑なかったことを・・

新潟テルサ

ありがとうございます。
新潟・・また来ること出来て嬉しいです。あの・・わいも皆さんも人それぞれいい時も悪い時もあると思うんですけど、まぁバンドもそうで・・今日がどう!とかじゃなくてね。今こうやってきた中でいいことも悪いことも色あって。だからこそわいたちはこうやって歌っているのかなあってやりながらずっと思ってました。また遊びに来るんで・・長く・・末永くよろしくお願いします。
今日は昔を振り返るライヴなんですけども、昔では言えなかったことを・・

青森 リンクモア平安閣市民ホール

ありがとうございます。
普通に家を出てすぐ会場についてこうやってライヴ出来るっていうのはすごいなんて言うんでしょう・・・日常だなってすごい思い出させてくれます。今日歌った歌全部・・勿論わいの生活から生まれた音楽なんですけども。
ああそうだなあってそういう音楽だったなあって今日は思いました。
青森、ありがとうございます。
今日は昔を振り返るライヴですが、昔では歌↑えなかったことを・・


仙台GIGS

ありがとうございます。
仙台はしょっちゅう遊びに来てるので勝手にホームのような、青森の続きのような気持ちでやってきました。いつも沢山来ていただいてありがとうございます。また、あのーツアーが終わってから曲作って・・アルバム出して・・また・・戻ってこれたらなと思っています。また・・よろしくお願いします。
今日は昔を振り返るライヴですが、昔では言えなかったことを・・

お分かりいただけただろうか。笑

今日はからは口上で独白に続く。言えなかった事歌えなかった事はランダムな感じ。大阪は初日だけに口上が少し迷走気味だったがそれもよく、東京は突然訛りだし、新潟ではMCでプロポーズ。笑。青森はお家から来ました!でかわいいし、仙台は間が多く少ししんどそうな印象だった。
青森は前回ただいまの言葉にお帰りー!!と歓声が飛んでいたが今回はなし。あくまでも日常の延長でとてもよかった。青森でライヴをする事が特別ではなく、日常の風景になることを願ってやまない。

⑩バンドメンバーの動きから見るamazarashi

今回は前面の紗幕透過が非常に多く、ステージや表情がよく見える。メンバー同士アイコンタクトをして頷き合い、あるいは相手に合わせて頭や体を振って本当に楽しそうだ。音と目線を重ね会話する様は呼吸のような絆を感じる。大好きな漫画のタイトルだが「想い想われ振り振られ」まさにステージ上のアイコンタクトはこんな感じだ。両想いと片想い、片想いと思ったら気づかない所で片想われているのを見るとほっこりが止まらない。笑。

特にまこっちゃんの激しい動きへの反応は様々だ。ある人は楽しそうに合わせ(タケさん)ある人は笑顔を思わずこぼしながらノり(豊川さんや真さん)ある人は見ないようにしつつも一緒に激しくなる(ひろむさん)出羽さんがいないのはとても寂しいけれど、映像演出以上に“amazarashiという生身の人間が音を届けている”という躍動感を強く感じさせてくれるのが今回のツアーだ。

その中でも真さんの役割はとても大きい。
ギターが勢いで前へと走ってもドラムは正確にリズムを刻まなくてはならない。その中で叙情性豊かに物語を描く。楽曲へのリスペクトや愛情を強く感じる彼のドラムは、時に天を仰ぎなら時に笑顔をこぼしながら、激しさと繊細さの中で歌っている。あいみょん対バンの後に真さんに拾って貰えてとても嬉しかったツイート。彼のドラムは本当に素晴らしい。

秋田ひろむもMCや口上、歌っている時と以前よりもずっとメンバーへ積極的に目線を飛ばすようになったし、客席もよく見ている。MCでは「ね?」と語りかけるような言葉が増え、悶える人を増やし続けている。笑。ありがとう1つにも色々な表情があり、言葉を交わさなくてもそこには確かな温度や繋がりがある。ギターを爪弾く右手を振り上げたり、体を仰け反るように熱く弾いたり、膝をつけて座ってしまう程の激しさは最高にかっこいい。なのにミスるとギターに逃げちゃったり帽子やマイクを直してごまかしたり衣装を直したり。歌いながら腕まくりしてみたり。お水沢山飲む後ろ姿はまあるいし、マイクに咳や鼻水すする音筒抜けだし、肩に力が入ってひょこってあがるのとか(まだ書けるけど自重←)・・何あのかわいい生き物。笑。

ファンも各地様々。北陸や東北は拍手を曲が終わるギリギリまで待つ傾向があったし(好き)、大阪はせっかちなのかフライング気味、東京はメンバーがステージ入りした時点で歓声が上がったりと反応の違いも興味深い。県民性なのだろうか。大阪では曲間にひろむさん大好きーamazarashi最高!!なんて声が上がり賛否両論だったが、特に反応せずハイハイありがとうさん〜みたいな雰囲気で背を向けてお水を飲む姿がとてもよかった。終演後の秋田ひろむが捌けるスピードは颯爽レベルを越えて一目散にいなくなるが(笑)真さんとまこっちゃんは手を合わせてお辞儀をしたり、手を振ってくれてファンが振り返したりと温かい雰囲気。直立不動で微動だにしない人から、体を揺り動かす人(私)、手を挙げる人(各地パラパラ)、首が心配になるレベルでヘドバンする人(東京)、ジャンプしまくりバラードすら縦ノリな人(仙台)まで色々いて面白かった。皆自由に楽しめるといいなと思う。

⑪未来になれなかったあの夜に

ラストに歌われるのは、とても美しい光と陰と過去と今を照らす壮大なナンバーだ。心の奥深くに届くのは、秋田ひろむの歩いてきた道ゆえの説得力だろう。amazarashiを愛する人へあるいはそこに人生を重ねる人へ、出会うべくして出会ったのだと語りかける。その上で自分の生きてきた道を歌うのだ。夜の向こう側から幾つもの夜を振り返りながら。

人から見れば些細な事でも自分にとっては大きな事だったり、目の前に道があっても絶望していればその道すら見えない。君だけが辛い訳じゃない(だから一緒に頑張ろう)と声を掛けても、自分だけが辛い訳じゃない(他の人はもっと頑張ってるんだ)と追い詰められることもある。

人にとって痛みや苦しみは違う。今が苦しい人、過去にとらわれる人、人一倍辛い訳ではないし楽しいこともある、普通に幸せなはずなのに時折虚しくなってしまう人。端から見たら悩みなんてなさそうで幸せでいいねと言われる人にだって何か抱えるものがあるかもしれない。それでも続くのが人生だ。日常に散りばめられた葛藤、悩み、そんな人達の心に寄り添い、ひと筋の光となり、あと一歩進む心の糧となって響く。それがamazarashiの音楽ではないだろうか。

彼らの音楽を必要としない人も世の中にはいるだろう。けれど、ふと立ち止まってしまった時に思い出して欲しい。

死にたいは生きたいと同じ意味だと歌う人がいる。
陰ははじめから陰なのではない。
光が射した先に出来るもの。
だからこそ、足掻け。

そう歌い続けるamazarashi。

そのライヴは言葉が音と共に立体化された空間となって人の心に突き刺さる。全身でその言葉を浴びた時、不思議な程、生きる力がわいてくる。そしてまた行きたい、生きたいと思うのだ。

彼らの音楽を救いと思う人もきっと多いだろう。けれど縋り神のように崇めた所で何も変わりはしない。だからこそ秋田ひろむは代弁者じゃないと歌った。そして自分のために歌い僕はこう歩んできたと伝えてきたものが、いつしかへと向かう。ラストの口上でも観客のあなたと一対一で言葉が紡がれる。また生きて会おう、と。

amazarashiは、総合芸術のような演出の向こう側で高い熱量を持った生身のロックバンドとして音を奏で続ける。生きてきた轍がそこにあるからこそ人の胸を打つ。絶望や闇、夜の先には希望と光があることを全身で歌い抜く様は力強い。どうか多くの人に届いて欲しいし、体感して欲しい。

死の先にある生命の躍動の美しさがそこにある。
彼らはこれからも命を叫び続ける。

そしてライヴ会場で、あなたを待っている。

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