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旅するアサギマダラ

先月のこと、庭の手入れをしていたら、お向かいさんが突然わたしを声を出さずに手招きして呼びました。

『はよはよはよ!こっち来て!!』

何事?
事件?

なになになに?目を丸くして無言で近寄っていったら

小声で

「ほら、蝶々!」

自分の広い庭の一点を指さして言うのです。

目の悪いわたしはよく見えず、ちょっと待ってと一旦メガネを取ってくると言って、急いで玄関先に置いておいたメガネをかけて再びお向かいのお庭を見ると、ひらひらと羽を広げてピンク色の花の周りを飛んでいる一羽の蝶々がいました。

普段このあたりでは見かけない蝶々です。

あ、、、

あのチョウ見たことがある。

アゲハチョウにも似ているけど、飛び方が少し違う。
アゲハよりも軽やかにひらひらと飛ぶ白いチョウ。

あの蝶々はアサギマダラ。

わたしが
「あれはもしかしてアサギマダラですか?」

というと

そう!!

と、とても嬉しそうでした。
アサギマダラに来てもらうために、アサギマダラが好きなフジバカマという花を育てたのだそうです。

アサギマダラは春から夏は日本の南から北へ、夏が終われば冬に向けて北から南へ旅をする蝶々なんだそうです。

美しい白い羽根をひろでてひらひら舞う美しい姿を見ると、何とも神聖な気持ちになります。


わたしが一度この蝶々を見たことがあったのは、冬の沖縄の中城村(なかぐすくそん)でした。
病気で入院していた兄の看病のためにしばらくいた沖縄で、石蕗の花にとまって蜜を吸っていました。

17年前の中城村
携帯カメラで撮ったアサギマダラ


兄の病状が思わしくなく、ずっと悲しい気持ちでいた沖縄の地で見かけたこの見たこともないチョウはとても美しく、わたしの悲しみを束の間忘れさせてくれたのでした。

日本を縦断して旅をするアサギマダラ。

フジバカマを見つけては蜜を吸って羽根を休めて南へ飛んでいくなんて、とても不思議。

たくさんある植物の中でどうやってフジバカマを見つけるんだろう?

匂いがするのか
色が見えるのか
何かアンテナを持っているのか

本土を東北から九州へ渡り、沖縄まで旅する不思議なチョウ、アサギマダラ。

兄はあの時沖縄の地で天に昇っていったのだけど、今年の8月にとても久しぶりにわたしの夢に出てきました。
兄はこれから長い旅に出るんだと、キャリーケースを持っていました。
最後に中華料理を一緒に食べたいとわたしに言ったのだけど、わたしはお店を探し出せず、コップに水を一杯だけあげて兄が水を飲んだところで目が覚めました。

アサギマダラを見て、沖縄の空と兄を思い出し、生命の不思議と繋がりを感じたのでした。

今朝、お向かいの庭を見たら、花の終わったフジバカマは綺麗に切り戻しされていました。

また来年、花の咲く頃アサギマダラが食事に来てくれるかな?

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