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飯田泰之先生と投資入門④ーマクロ経済と株価ー

とうとう第4回はシリーズ最終回!アップするのが遅くなってしまいましたが、株だけではなく経済のこと、色々教えていただきました!


経済教育について。経済との関わり方について。

いがらし:投資入門第4回目になりました!よろしくお願いします〜

前回までで、投資とか株を軸にしていろんな用語などを教えていただいてきましたが、シリーズ最後はマクロ経済と株価ということで経済の全体的なお話を教えていただけたらと思っています。
実は私個人的には第4回目、ここが一番聞きたいところでした。
私大学は出てるんですが、文系の学部卒で、そこに入るための受験勉強とかはしてたんですけど、政治経済の授業って大学では特に受けてないし、中学高校であったとは思うんですが正直あんまり覚えてなくて(笑)
社会人になって知っておきべきことも、なんとなくニュースで聞くこととか仕事で必要だからという程度の知識しかなくて、経済の仕組みと、経済活動の景気に与える影響なんかをあまり理解していないまま大人になってしまったんです。
だから実際株をやっていても、その辺りと株価がどう関連しているのかがまだあまりピンときていないんですよ。。。
そのあたりを詳しく聞かせてください!

飯田先生:ほんとねー高校の政治経済、とくに経済の教育って正直何を目指してるのかわからないんですよね。って私の高校の政経公民の検定教科書を書いているんであんまり言っちゃいけないかもしれませんが、こんなこと教えて意味あるのかなっていう内容が結構多いですよ。

僕はどっちかというと経済教育で重要なのは、賃金に関して、例えば将来働くとしたら、またはお父さんお母さんはなんで月々お金を持って帰って来られるのか、そいうことをちゃんと真面目に教えるべきだし、稼いだお金をどう使えばいいのかとかね。税金いくら取られるのか社会保険料がなんなのか、もっと教えようよって思いますね。


いがらし:そうなんですよ!働き始めて、気づいたら「アレ?言われてた給料安いけど?」ってなって、あ〜税金が取れるんだと。笑

飯田先生:厚生年金とかも結構すごい額持ってかれますしね〜

いがらし:手取りって単語は聞いたことあったけど、実際働くようになってようやくそれがわかって、それまでってあんまり税金とか年金とか、私が経済学部じゃなかったから知らなかったのかも?と思ってたけど、教育自体あまりそういうことを知る機会がないんですねー。

飯田先生:あともう一つ、「せっかく投資入門なのにこんなこと言うなよ」ではあるんですけど、フリーランスで働いてる人とか、副収入がある方とか、サラリーマンの方ももちろん、税金の勉強をするのは手だと思います。あとは税金の勉強を自分でする以外に、税金について税理士さんでもいいし、あとは税務そのものは受託できないけどFP(ファイナンシャル・プランナー)さんとか、専門家の知識を買うっていう習慣を日本人はもっと使うべきだと思うんですよね。みなさんが寝ずに1ヶ月間勉強しても到底税理士さんの知識には敵うはずがないですから。

いがらし:しかも税制って結構こまめに細かいところ変わってますもんね。

飯田先生:だからFPさん税理士さんに金を払って話を聞くっていう習慣も重要になってくると思うんです。


マクロ経済と株価

飯田先生:さて、本題ですが、マクロ経済と株価の関係ってきいて、思いつく関係とかありますか?

いがらし:そうですね〜、、、全体的に景気がいいって言われている時は株が高いのかどうなのか、とか、あとはアメリカ経済がいいから日本の経済もいいのか、そういうことでしょうか。

飯田先生:結構景気と株価の関係って微妙ではあるんですよ。今いがらしさんが言ってた、アメリカの景気が良いから日本の株価が上がるっていうのは、前回話した内容でいうと、アメリカの景気がいいと日本の各企業、特に輸出型大企業の業績がよくなる、または大企業だったらアメリカ子会社の利益が増える、ということは1株当たり利益(EPS)が上がるので株価も上がるという経路ですよね。

株価が上がるもう一つの要因として景気がいい、なんとなくみんな調子いいと感じたとき株価が上がる。これはみんなが「リスクを取ろう」(リスクオン)という状態になって、リスクオンになると株価収益率がそんなに高くなくても株を買おうって思い始めるようになる。
例えば前回PERから株の利回りの話をしました。今は大体4.3%くらい。リスクオンになってくると、3%台後半まで突っ込むことが結構あります。

一方でみんなが「不安だ」「先行きどうなるんだ」となると、5%くらいまで株の利回りが上がる。株の利回りが上がるっていいことに聞こえるかもしれないんですが、そうではなくて国債や預金よりも5%も収益予想が高くないとわざわざ株を買わない。みんなが本当に買わない状態なんです。

いがらし:なるほど。

飯田先生:このように、みんな全体的に景気がいいのでリスクが取れる状態、だから株価が上がるという理由ももちろんあるわけなんです。


景気動向指数とその見方

飯田先生:ただ、ちょっと注意しなければいけないのは、そもそも景気って何なのかと考えた時に、一般的に景気を表す指標は景気動向指数という数値を使いいます。
この景気動向指数というのは、いわゆる典型的な経済の状態表すであろう指標を集めて、そのうちいくつが上がってる、下がってるというふうにして指数化するディフュージョン・インデックスっていう方法と、景気のボリューム感そのものを表すコンポジットインデックスという方法の2つがあります。
景気動向指数そのももの説明については、この動画を貼ってあるnoteの中で紹介してあるのでリンク貼っておきます。景気動向を表す指標の代表例が、特に先行指標の代表例が株価指数なんですね。

景気がいいから株価が上がってるんじゃなくて、株価が上がっているから景気がいいと言っている側面もあるので、なかなか難しいところです。
国内の景気動向から株価を占うというのは不可能に近いと思います。

いがらし:不可能なんですか?!

飯田先生:うーん、正面からみたら不可能かなと。なぜかというと景気動向指数には次の3つがあるのですが、

先行指数:実際の景気よりも早く動く指数

一致指数:景気そのものを表す指数、企業の業績とかですね。

遅行指数:実際の景気の盛り上がりよりちょっと遅れて良くなっていく指数。
これは流行遅れの人みたいなもので(笑)、こいつが盛り上がり始めたらもうそろそろその流行は終わりかなっていうグループ。これは雇用が典型です。

先行/一致/遅行と3つ系列がある中で、代表的な先行指数、景気よりも先に動くのが株価なんですね。
なので景気動向指数が良くなったから株を買うっていう時には、すでに株価が上がりきってる状態であることが多い。

いがらし:先行指数には、株価以外にはどんなものがあるんですか?

飯田先生:機械受注、将来の設備拡充に向けてちょっと考えてみようかなという指数です。 機械受注なんかは典型ですけれども、それ以外だと中小企業の売上見通しD.Iですね。簡単にいうと中小企業へのアンケート調査です。
あとわりと僕が好きなのは、在庫ですね。

いがらし:在庫をどうみればいいですか?

飯田先生:在庫が減ってる時、もうここまで減りきっちゃったらあとはそろそろ生産活動を活発にしないといけない、とか。または在庫が急に出るって事はこれは予想よりも売り上げが伸びてるってことですよね

いがらし:たしかに。

飯田先生: そうなると、ちょっと先行きがいいのかなと考えられますよね。ただし、現代では在庫管理技術が向上していますし、サービス業には文字通りの在庫はないので伝統的な在庫循環の意味合いは薄れています。

あとはいがらしさんの関係する業界だと住宅着工。
(※いがらしはインテリア・コーディネーターを生業にしております)

飯田先生: なんでかって言うと住宅の新規着工があったってことは、その後内装したりインテリアを買ったりするってことなので、これも先行指数ですね。

いがらし:今教えていただいたいくつかの指数の中でも、やっぱりわかりやすいのは株価ですかね?

飯田先生:そうですねー株価ですかねー。東証株価指数(TOPIX)の方が指標としては使われるんですけど、 やっぱり動き早いですよね。

一方で景気動向指数を参考に株価を考える人っていうのは、見ているデータが2つあります。
一つは遅行(指数)です。
景気に対して遅れて来る指標、その遅行指数ですら腰折れし始めるって事は、景気のアップ&ダウンが一回終わるってことなんですね。
そうすると再拡大、もう1回今度上がる時に一番最初に動くのは株価なので、景気のサイクルが終わったから次また盛り上がりがあるだろうというように、ある意味この景気動向指数を裏側から見るという方も結構います。
あともう一つ重要なのが、先ほども少し触れましたが在庫統計です。
僕は実は研究者としては在庫統計がデビュー作なんですけれども、 正直今在庫なんて抱えない店の方が多いんですよ。サービス業って在庫なんてないじゃないですか。
だからGDP に占める割合なんか0.01ないくらいなんですが、 ただ、在庫の動向というのは企業がどのぐらい見込みを間違えてるか、または間違えたか、を表しています。
在庫が積み上がるって事は企業の予想よりも実態の経済が弱かったということですよね。

いがらし:このぐらい売れると思って作ったのに売れなかった、っていう状況だってことですもんね。

飯田先生: ということは、これはみんなが思ってるほど景気良くないぞ、または企業業績の先行きよくないぞという指標になり得ます。

または、在庫がフッと減ったときは企業が思うよりも世の中強気なんじゃない?と考えるきっかけになる。

個別銘柄にとっては在庫見ることってほとんど意味ないです。なぜかというと、会社の営業方針によって、これからちょっと在庫なし体制に切り替えるぞとか、売上関係なく在庫を減らしてるケースもあるからです。

そうじゃなく経済全体で在庫を見る、マクロの在庫状況を見ると、すると平均的に企業が思ってる現在の状況と、本当の経済状況のギャップを知ることができるわけですね。

このギャップが大きいと景気がぐるっと反転する可能性があります。
それがどっちかはわかりませんが、底打ちしたり天井つついたりというサインになるので、在庫を持ってない業界についてもマクロの在庫状況というのは重要です。つまりどのくらい企業が勘違いしていたかを表す指標だから、というのが僕の意見です。

いがらし:それは私なんかでもどこかで確認することができるんですか?

飯田先生: そうですね。一番典型的なのは、鉱工業生産指数というところに在庫率指数というのがあります。この在庫率指数あたりだとグラフになってたりしてみやすい。そんなにしょっちゅう見る機会はないと思いますが、急激に良くなって在庫が減ったり、急激に在庫が増えてるのを見て取れたら、どうも一般的な企業が思ってるのと違うことが生じてるんだなと考えられますね。

もう一つ、住宅着工床面積指数は、これは投資じゃなくて本業の方の数ヶ月後、半年後ぐらいのモノの動きを表してくれると思います。
建物が建つと、内装とインテリア関連も動くので、ぜひこのあたりをぼんやりとでも、たまに見てみるといいと思います。これまたいいのは月に1回しか発表されない数字なんですよ。

いがらし:毎日毎日チェックしなくてもいいってことですね(笑)

飯田先生:そうそう(笑)
このシリーズのテーマである、あんまり投資に時間をかけないというのの一つですね。

いがらし: 他の指数で、ニュースなんかで景気がいいとか悪いとかっていう話の時によく出てくるのが、GDP とか失業率とか、あとちょっと違うかもしれないけど最低賃金とか企業のボーナス平均が上がった下がったとか、その辺りは株をやるにあたって参考にした方がいいですか?

飯田先生: おそらくは多くの人が思ってるのとは逆の意味なんですね。アメリカ雇用統計っていうのは極めてみんな注目してます。 世界で一番注目されてるかと思います。
なぜ注目されるかというと、雇用って景気に対して遅れてくるんですよ。

いがらし: さっきのお話でいうと「遅行指数」の1つですか?

飯田先生:そうです、遅行系列の指数です。
雇用統計の数字を見ていよいよ雇用まで頭打ちになってくると完全に景気が終わったなっていうサインになる。

そしてもう1つ、よく言われる話で「不況の株高」というのがあります。
これで雇用が悪くなるってことは、不況の一番底に向かってるっていう事ですよね。
そうすると投資家はふたつ考えます。
ひとつは「ここまで落ちたんだから、そろそろ反転するだろう」。 だから遅行を見ることで次の先行の動きを予想する。

もうひとつは、 今はそっちに近いと思うんですけど、「これだけ景気が悪かったら必ず経済政策があるはずだ」と。
日銀、 FRB 、ヨーロピアン・セントラル・バンクは株を買うはずだ、公共事業の積み増しでゼネコンの収益が改善するはずだ、というふうに、むしろ不況の深刻化で、新しい成長もあるけれども、それ以上にここまで来たら何か政府が手を打つだろうと。
それをいち早く読み込んで、世界的な株価動向がここのところ力強いんだと思います。
理由としてはやはり、これはもう絶対今年2021年も経済政策やるよね、という予想があるからだと思います。

少し不安材料としては、現在アメリカは200兆円規模の、さらに12月に可決されたものを加えると300兆円規模の景気対策やります。
そうするともしかしたらアメリカではインフレになるかもしれない。 インフレになると、もうすでにちょっと上がってますが、さらに国債の利回りが上がるかもしれない。 前回お話したように国債利回りと株の利回りの差が一定以上株の方が上じゃないと経済がもたないんですね。株を買うっていう人がいなくなっちゃう。

いがらし:国債買えばいいじゃんってなりますね。

飯田先生:そうそう、だって結構いい利回りなんだから。
そうなってしまうと現在の高株価がどこまで維持できるのか不安視されてるので、 今はそのせめぎ合いだと思います。

「噂で買って事実で売る」って聞いたことありますか?
財政政策があるっぽい、しかも大規模っぽいぞっていう予想・噂の時が重要という。実際に政策が決定したり発動されちゃうと、もうそれを理由にした買いはないんですよね。もう上がりきっちゃってるので。

いがらし:今は不況だけど株価が高い状況?

飯田先生:そうですね。去年からはどうしても政策相場だと思います。 逆に返せば、政策相場で良くないというようなことをマスコミは言いますけど、株式投資家としては国策だろうとなんだろうと利回りが重要です。
ただ、アメリカについてはインフレになって長期金利が上がると株価が足元が崩れる可能性はあります。
日本については今のところ株価収益率4%台なのでそこまでじゃないですが、これ以上アメリカの株価に引きずられて株価利回りが下がってくるようだとちょっと過熱感が出始めるのかなーと。

飯田先生:正しいとかではなくて僕自身の投資スタンスがどちらかと言うとインデックスよりなので、どちらかというとインデックスをやるのに役立つ情報中心にお話ししてきました。
実際に相場を本当に予想できたらそもそもこんな仕事しないで株式投資家として暮らしてるわけで。。。

いがらし:ほんとですよね(笑)

飯田先生:「 投資は自己判断で」っていうことなんですが、過去の色んな経験則からみておくべき数字の話なのかをシリーズでお話しさせていただきました。

いがらし:
ありがとうございました!
3ヶ月間だいぶ自己流でとりあえずやってみるという感じだったので、結果全然よくわかってないんだなってことがわかったところでした(苦笑)
でもようやく今回のシリーズでクリアになってきた感じがします!
ありがとうございます!

飯田先生:実際小口投資家で個別をやると、大体みんな途中で飽きてやめちゃうんですよ。こんな色々調べてるのに利益1万2万じゃないか、ってなってしまって。
それだったら、いっそのことインデックス、もし個別をやるんであれば上げ下げじゃなくて株主優待を中心にポートフォリオを組み直すというのもいいと思います。また個別株を買う場合もむしろ株価なんて気にせず、ほしい株主優待がある株を保有するとか。そのぐらいのテンションでやりながら、だんだんと資産残高が増えた時には、また個別株にシフトしていく必要があるのかなと思います。
僕は最近個別株全然手をつけてないので偉そうなこと言ってる場合じゃないんですけれども、また相場の話、経済全般の話などお話する機会があればと思います。

いがらし:はい!どうもありがとうございました!

飯田先生:ありがとうございました。


株・投資にかかわらず、お金(特に税金)に関する知識をFP(ファイナンシャルプランナー)や税理士などの専門家に相談してみる。
基本的には景気がいいと株価が上がる。ただし、株価が上がっているので景気がいいという判断もできる。
景気動向指数、なかでも在庫指数で経済全体の動きを読み取ってみる。
現在は政策相場。各国の金融政策を注視したい。


このシリーズを最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。

話の流れから余談として話したいただいた内容も非常に興味深かったので、あえて会話の流れのまま文章にしてみました。
私自身、文字にしながらも一度では理解できない部分もありました。でも何度も読んで直していくうちにだんだんと理解を深めることができました。
会話形式で一回ではわかりづらいところもあるかと思いますが、よかったら何度か読み直していただけたらと思います。


株をやる方にもそうじゃない方にも、大人の教養として知っておきたい経済の話。また飯田先生にも、機会があれば他の専門家の方にもお話を伺ってみたいと思います。



いつも読んでくれてありがとうございます! これからも頑張っていきますのでもしよかったらサポートもお願いします♪ サポートいただいた金額はもちろん投資させていただきます!