レッチェ_レビュー_ヘッダー

セリエA第8節 ミラン対レッチェのマッチレビュー


はじめに

代表ウィーク中にジャンパオロが解任の憂き目にあい、代わってピオーリがミランの監督に就任した。イタリアでは就任前から #PioliOut がツイッターでトレンド入りするなど、前途多難な出だしとなったが、チームの雰囲気の良さなど良いニュースも漏れ聞こえていた。昇格チーム相手の試合で、勝って良いスタートを切りたいところであったが。

スタメン

両チームのスタメン

ミラン

・ピオーリ初陣
・ピョンテクに代わりレオンがCFとしてスタートから
・ケシエとパケタが左右の入れ替わり
・出場停止のカラブリアに代わりコンティがスタメン

レッチェ

・.....何も書くことがない。


ミランの基本布陣

要約

攻撃
・アンティーク(?)な3-2-2-3フォメ(表記上は4-3-3)
・テオを左サイドの高い位置で活用する
・ピョンテク・レビッチ投入後は4-3-3へ
・チャルハノールの日!!

守備

・基本は4-1-4-1のブロック
・散発的に前からプレス



ミラン攻撃の基本布陣

この試合のミランの攻撃布陣は3-2-2-3であった。ガゼッタ的に言うと。

3-2-2-3加工

・テオが実質的に左WGとしてプレー
・左WGのチャルハノールが基本的にIH的に動き、さらに左中央右でかなり自由にプレー
・ビリアとケシエも攻撃に参加することもしばしばあるが、後方からの支援が主な役割
・レッチェが無抵抗なので3-2-5に見えることも多い


ミラン守備の基本布陣

守備の基本形は、4-1-4-1

4141守備陣形

・守備の基本形は最終ラインはCBとSB4枚で構成され、その前にビリアを置き、IHとWGでまたラインを構成するカタチである


レッチェの基本布陣

レッチェ攻撃の基本形

レッチェビルドアップ加工

・表記上のフォメは4-3-1-2
・ビルドアップ時は2-3-2-3
・一応ショートパスで組み立てようとしているようだがパス精度が悪くガンガンボールロストしている

レッチェ守備の基本形

レッチェ守備433加工

・一応4-3-3の布陣
・テオやチャルハノール始めイレギュラーにポジションを取っているのでレッチェの守備陣形も大きく変わる
・そもそも守備が異様に弱い。サイドでも中盤でもいとも簡単にアタッキングサードまで侵入される


ざっくりとした試合展開

前半

キックオフ直後からミランのペースで試合が進む。1分が経過する前にいきなりレオンの決定機もあった。前半を通してのキーの1つはテオの実質的なWGとしてのプレーである。逆サイドにボールがあるときなどは、4-3-3で守るレッチェの右の1番前に位置していた10番のFalcoが一応見てはいたがほとんどノーマーク状態であることが多く、テオにボールが渡るとフリーでその攻撃力を存分に発揮していた。

スペース


もう1つ着目すべき点として、チャルハノールがかなり左右中央で自由にプレーしていたことが挙げられる。表記上は左WGであったが左IH的にプレーすることが多く、右サイドまで顔を出すこともしばしばであり、先制弾は右に流れたチャルハノールにビリアから長いボールが入り、それを叩き込んだことでゴールが生まれた。

チャルハノール_ゴールシーン

この場面、はじめ中央にチャルハノールがいた際は右IHのMajerがマークしていたのだが、右に流れCBへの受け渡しが悪くチャルハノールがシュートを打つ際うまくプレッシャーをかけれていなかった。

得点後も、左サイドの高い位置に張るテオや自由にポジションをとるチャルハノール、また、中央または左に流れてポストワークをこなすレオンをレッチェはほとんど捕まえることができずに、前半を終える。ミランとしては、ハーフタイムに対応される前に追加点をあげておきたいところであった。

後半

後半、レッチェはさすがにテオへの対応をしてくる。SBながらWGとして動いていたテオは前半どフリーな状態で前線にいることが多かったが、レッチェ右SB16番Meccarielloもしくは、IHの37番Majerが必ずチェックするになった。それでもまだテオは止まらなかったせいか、64分にMajerから4番Petriccioneに交代。これでこのあとは、テオが無双する時間はミラン側の選手交代の影響もあってかだいぶ減った。

試合では、64分コンティがクロス対応を誤りハンドでPKを与えてしまう。PKではドンナルンンマが一度ストップするもののこぼれ玉をババカルに押し込まれ結局失点してしまった。

失点直後の66分、レオンに代えてピョンテク、パケタに代わりクルニッチが投入される。パケタに比べるとクルニッチはシンプルにプレーすることが多いので、攻撃におけるボールのまわりはより潤滑になった印象を受けた。

実際、81分のピョンテクのゴールもクルニッチがチャルハノールとワンツーを決めた流れで生まれている。

ピョンテクゴール

この2点目の起点も1点目に同じくビリア。ビリアが少し下がりながらボールを受けに来たチャルハノールに縦パスを通すところから始まる。パスを受け前を向いたチャルハノールがクルニッチにボールを渡すとクルニッチは少しタメをつくりチャルハノールに戻す。チャルハノールが鮮やかなタッチを披露しながら相手守備ラインを突破し中に折り返したボールにピョンテクが合わせて勝ち越し弾をあげる。

このままミランの勝利で試合を終えるかと思われたが、ビリアのベテランとは思えないボールロストやスソの体たらくな守備、相手の素晴らしいシュートといった複数条件が重なり、アディショナルタイムにまさかの同点弾を喫してしまう。

攻守にお粗末さを発揮し続けたレッチェ相手によもやのドロー決着はまさしく恥以外のなにものでもない。新体制で好スタートし雰囲気を一新することもできずに、ここから数節の厳しい戦いが本当に不安になる試合の終わり方となった。


試合詳解

3-2-2-3システム

この試合の特徴的なポイントの1つとして左SBのテオ・エルナンデスがWG的に振舞っていたことが挙げられる。

画像8

ガゼッタ紙はこれを3-2-2-3と表した。確かにこの日のフォーメーションは3-2-2-3と表記するのが最も適当かもしれない。しかし、チャルハノールとパケタが前線に張り付き3-2-5的に見えたシーンや、両者の片方が前線に張り付き、もう一方のみが少し低い位置をとる3-2-1-4的に見えるシーンもそれなりの回数あった。

画像15

画像16

加えて、低い位置からのビルドアップ時には2-4-2-2(or4)的であったし、また、前半はコンティがオーバーラップする回数も一定数あり、必ずしも後ろを3枚にし、常に3バック的に堅実に守っていたわけでもなかった。

また、クルニッチとピョンテクの投入とレビッチの豆乳によって試合終盤には4-3-3のカタチへと変化していった。それぞれ説明していく。

典型的な3-2-2-3の場面

3-2-2-3加工

・最終ラインは左からロマニョーリ-ムサッキオ-コンティ
・前から3列目、左からケシエ-ビリア
・前から2列目、左からチャルハノール-パケタ
・最前列は左から、テオ-レオン-スソ

基本的に最前線のスソとレオンはワイドに貼って幅を取っている。後ろの3枚は、基本的に守備の役割が主であるが、前半のコンティはなんどもオーバーラップしデコイで走ったりと攻撃に厚みを加えていた。最終ラインの前に位置するケシエとビリアは主には、彼らの前にいる5人にボールを供給する役割が主であったが、前線が停滞している時には位置を上げ、攻撃を活性化していた。また、左にケシエが配置された理由には常に高い位置を取るテオのカバーをする役割もあるだろう。

ケシエカバー

ネガトラの場面で、守備時には最終ラインの左に入るテオの位置をケシエがカバーするシーンは何度か見られた。

低い位置からのビルドアップ時には2-4-2-2

低い位置からのビルドアップ2

(レオンはボールを受けようと下がってきていたので低い位置にいるが基本形は2-4-2-2)

低い位置からビルドアップを試みる場合には、

・2CBが中央
・両SBを一列上げ4枚でパスコースを作り
・その前の中央にIH2枚を並べ、ワイド目にレオンとスソを配置

といったパターンでの、ビルドアップもあった。ただ、レッチェの守備がETC状態なのでテオ(もしくは逆サイドのコンティ)にCBからボールが出ると、そのまま持ち上がってアタッキングサードまで侵入といったパターンはよく見られた。

低い位置からのビルドアップ

CBから一列上でサイドで開くSBにボールが出た後、レオンはボールを受けにワイドに開きパスコースをつくり、チェルハノールともに前へのパスコースを作り、ケシエとCBも後ろへのパスコースを確保するといったところだろうか。今節は、サイドに出た時点でノープレッシャーだったため、これがどう機能するのか深くはわからなかったが、今後数節の相手はそうはいかないと思うので、注意して見てみたいポイントの1つである。

4-3-3への変化

ミラン433

ピョンテク投入を皮切りにシステムは徐々に4-3-3的なものに変化していく。実際には、2-3-2-3といったカタチになるのだが、各ポジションに当てはめた選手がそのポジション通りの役割をこなすようになる。ピョンテクのCFにスソ・レビッチの両翼。クルニッチとチャルハノールが中盤に位置取り、ビリアから攻撃が始まるというオーソドックスな4-3-3での攻撃といったところだ。

ダメダメだったレッチェによる影響が大きい可能性もあるが、この日はこのフォメがはまっていた。ピョンテクは組み立てに関わるポストワークがダメダメで、この日もポストでは数回を除いてなんじゃそりゃプレーを連発していたが、ピョンテクの近い位置で低い位置からのボールを受け、サイドに散らしたり落としたりといった役割をクルニッチとチャルハノールもしていた。その結果、攻撃の組み立てで淀むようは場面は減り、潤滑に攻撃できていたし、得点をあげたシーンでは、まさにチャルハノールとくるニッチの連携からピョンテクに決定的なボールを供給し、勝ち越し弾を生むことになる。

ピョンテクは、トリノ戦のロマニョーリのオーバーラップからの決定機を枠外に外すなど調子が悪い印象を受けるが、ことフィニッシュワークに関しては、再三相手キーパーの神セーブにあっているだけで、格別に悪いわけではない。ポストワークを減らし、フィニッシュワークに専念させることでゴールもまた量産し始めるだろう。ただ、器用にポストワークも個人での突破なんかもこなすレオンと序列が入れ替わってしまった雰囲気を感じるので、出場時間が十分に確保できず調子を落としてしまう可能性があるのが個人的には気になるところである。

キーマンだったチャルハノールとテオ・エルナンデス

この試合のキーマンは、テオとチャルハノールで間違いないだろう。テオは相手のゆるすぎる守備の影響もあっただろうが、いい意味で左サイドで孤立しほぼフリーと言えるような状態で、その攻撃力を存分に発揮していた。

攻撃で存在感を発揮していたテオ・エルナンデス

スペース

典型的などフリーな場面

試合中は、テオの左サイドのどフリーは右サイドにオーバーロードを発生させることで意図的に作り出しているのかと思っていたが、何度か試合を見返すうちに、かなり自由に動くチャルハノールが右サイドに寄った結果として生まれた状況という説明もつくように思えてきた。少なくとも、左で貼っていることが多かったので、幅を取るような指示は受けていたと思うが、アイソレーションな状態が生み出されていたのがピオーリの意図によるものなのか、偶発的に生まれた状況なのかの判断はこの試合だけではつけることはできないように思う。

計画的に生まれた優位性かそれが偶発的なものだったかはさておき、結局それが有用な攻撃に繋がっていたことは、この試合でとても大きかった。

自由に動きチャンスクリエイトを続けるチャルハノール

これまで再三書いたが、チャルハノールもこの試合のキーマンであった。主にプレーするのは左IHとしてであったが、時折右サイドまで顔を出しては、レッチェの守備陣の崩しに関わっていた。奇しくも、この日生まれた2得点はチャルハノールが右サイドで自身のゴールとピョンテクへのアシストというカタチで生まれている。

開始早々のレオンへのクサビのパスやスルーパスに代表されるように、随所でチャルハノール自体のプレーのキレの良さも感じられた。

また、以前に比べプレーする位置が高くなり背後にはビリアやケシエがいることで、ヴィオラ戦のようにチャルハノールのボールロストの流れから失点に結びつくようなことはなくなった。この日も後方からのボールを収めれずにロストする場面はあったが特に危なさを感じることはなかった。

蛇足だが、チャルハノールのプレー位置が上がったことと対照的にケシエのプレー位置は下がった。その結果、ケシエの攻撃時における雑さからくるチャンス逸脱の場面もこの日はそんなに見られなかった(とは言っても、すぐ思いつくだけで2つ思い浮かぶが)

レオンの左への流れ

もう1つ個人的に気になった傾向としてレオンが比較的多く左に流れる場面があったことである。1つは、先に説明したように左からビルドアップをする際にテオのパスコースを確保する場面である。

もう1つは、ポジトラの場面である。ボール奪取後にレオンが左サイドに開き、中央にパケタかチャルハノールが走り込み、スソはワイドのままといったシーンが何度か散見された。

レオン左流れ_ポジトラ

気になるプレーの傾向であったので、今後の試合でこの点に関しても注視したいと思う。

おわりに

I probably should write something here.


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試合結果

SerieA 第8節
ACミラン 2-2 レッチェ
サン・シーロ
2019年10月21日 3:45 KO(JST)
< 得点者 >
ミラン:チャルハノール 20' , ピョンテク 81'
インテル : ババカル 62' , カルデローニ 92'
主審 :


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